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新しい日常と転校生と

「ど、どういうこと? 」


 おどおどした表情で、僕はエリーナにこう叫んだ。だって、さっきまでなんか僕を慰めるような表情をしていた彼女が、今度は急に、舌を出して、目を細めて、うれしそうな顔で「ドッキリ大成功」と書かれた看板を持っているんだもん。


 すると、刑事さんが微笑んで僕たちの間に入ってきて……いや、間には入らないで。


「本当はそういう展開にしたかったんだ。実際、エリーナとやらは俺たちの知らない情報をたくさん持っている」


「知らない情報」


「ああ、ここ最近、通称ドラゴンがいろんな場所で、いや、特にこの周辺で目撃されることが多いんだ。それによる事件も多発している」


 うそでしょ、知らなかった。


「だから、こいつにはちょくちょく協力してもらうつもりだが、どうしても、な」


 そう言って、刑事さんはエリーナを見た。


「ゆうきと一緒に生活してもらわなくちゃいやだって、きょうはく……説得したの! 」


「え、今きょうは――」


「ね? 刑事! 」


「……今度、このコスプレ衣装を娘にくれるっていうんでな」


 え? 今着てる服、刑事さんに渡しちゃっていいの? ほかに服持ってんの? 


 というか、刑事さんまたデレデレしてるんですけど!


「もう、そんなことどうでもいいでしょ! 」


 と言って、エリーナが僕に迫って来た。


「今日から一緒に暮らせるね! か~れし~! 」


「……今日、学校あるんですけど」


「ああ、今日はもう休め。学校には連絡しておいたから」


 え? 刑事さん僕の学校知ってるの? どうやって突き止めたの?


「それに、サプライズの準備が必要だ」


「サプライズ? 」


 というと、刑事さんは笑って、、パトカーに戻った。


「ま、楽しみにしてな……」


 

 サプライズって、何だろ……


 そう思ったとき、もうパトカーは出発していて、その場には僕とエリーナだけが残った。


「……でも、結局明日からはまた学校行かなきゃなんだ」



 


 ということで今次の日変わらず普通の学校生活が始まって、僕は制服を着て、カバンを持って、学校に行った。クラスの教室に入ると、相変わらず端っこの、一番後ろにある席にひとり静かに座る。


 何もしないのもあれだから、とりあえず教科書出して、勉強してるふり。でも、実際にやってることは、外の世界のシャットアウト。


 こうしてれば、誰も話しかけてこない。ある人以外は。



「よお、ゆうき! 」


 ああ、来たよ。


 月光丸。


「なんだ? お前、元気ねえじゃねえか? 相談乗ってやろうか? 」


「いいよ、別に」


「冷てえなあ! おいりんご丸! ちょっと元気分け与えてやれよ! 」


 りんご丸……以前はこういわれると彼は僕にひどい嫌がらせをしてきた。


 けど! あの日、森の中で世界の行く末の話を語り合った中なら!


「わかった。おい宮本。手貸せ」


 信じて、僕は彼の言う通りにした。


 すると彼はさっきまでボリボリ食べていたスナック菓子の袋を持って、僕が差し出した両手にそれをひとつ袋からとりだして渡すような仕草をした。けど、その直後に、まさかのとんでもないことが――


「あ、すまない」


――ざー! ――


 なんとりんご丸は袋を逆さにして、そのまま僕の机に全部スナック菓子をこぼしてきた! 


「おい! 何やってんだよりんご丸! かわいそうだろ! 」


「わるいな。もっと食わせてやろうと思ったんだが」


「ああ、そうだな! りんご丸は優しいなあ! 」


 そう言って、月光丸は隣のクラスに聞こえそうなくらいの大きな声で笑った。すると周りにいた人たちも笑い出して、気が付くと、僕はクラスの半数以上の人たちに笑われていた。


 ……あれ? 戻ってる?


 うそでしょ。



 こうして僕がちょっとショックを受けているとき、ふと、一番前の席の真ん中あたりにいる女子と目が合った。なんか、この雰囲気の中で、笑うわけでもなく、興味なさそうに振る舞うこともしないで、彼女は何故か心配するような目で僕を見ていた。


 どうしたんだろう? あの人、たしかいつも残っている人だよね。


 目が合ったら、すぐ帰る人。


 っと思ってたら、彼女は突然席を立って、僕の席まで歩いてきた。


 月光丸はそれを見て、「あれ? どうしたんだ? さなちゃん? 」と言った。


 ああ、そうだ。いつも月光丸がさなちゃん、さなちゃん呼んでる。名前はさな、だった。


 ちなみに、僕の記憶が正しければ月光丸がちゃんづけする女子はこの人だけで、ある程度好意とかはあるのかなって思ってる。


 まあ、大人しくて清楚な女の子って感じだし、全然可愛いし、きれいだから。クラスで何人かの男子はこの子のこと好きかも。


 で、そんな彼女が何しに来たんだろ?


 と思っていると、なんと突然、さなが僕の机の上に散らばったスナック菓子を勢いよく食べ始めた! あの静かな雰囲気からは想像つかないくらいに!


 みんな驚いた顔してた。


「お、おい、さなちゃん? どうしたんだい? 」


「……私、今朝何も食べてないの。だから、勿体ないからこれ食べちゃおうかなって」

 

 さなが、低く冷たい声で言った。月光丸は明らかに動揺して「そんならこんなやつの机に落ちたゲテモノなんて食べる必要ないぜ? 俺のおにぎりちょっと分けてやるから、さ、さ」


 月光丸はわかりやすい態度で、さなを席まで戻した。


 さなは自分の席にエスコートされてる途中、一回だけ僕の顔を振りかえった。……なんなの。



 チャイムが鳴って、朝のホームルームに先生がやってきた。先生はちょっとぽっちゃりした体型で、結構優しいから、特に女子から人気が高い。


 ……恋愛的な目で見てる人は一人もいないと思うけど……


 教壇に立った時、先生は一瞬僕の机を見て、首を傾げた後、「宮本、お前の机なんかよごれてないか? 」と聞いてきた。いや、ちゃんと片づけたのに、しかも一番後ろの席なのにわかるの?


 まあ、僕のこと気にかけてくれてるからだろうけど。


 なんか最近先生を見ていると、僕が嫌がらせを受けていることに気づいている感じがあった。たまに僕の席まで来て、「お前、なにかされてないか? 」と聞いてくる。


 けど、めんどくさいから言わない。


 だって、言ったら言ったでそれはまた大変なことになりそうだし。


 と、いろいろ考えていると、先生がホームルームを始めていて、なんかいろいろ喋っていた。いずれにせよ僕に関係ないことだから別に聞かなくてもいいんだけど。


 


 ああ、また地獄の学校生活の再来って感じがする。昨日はあんなに楽しかったのに!


 エリーナとゲームしたり、一緒に本読んだり、テレビとかyoutubeとかみたり~


 

 

 とか思っていると、突然、先生が大声を出した。


「ああ、いきなりだが。今日はうちのクラスに転校生が来ることになったから。みんな仲良くするようにな」


 そういったとたん、眠そうにしていたみんなが急にぴんとアンテナを張ったように反応して、がやがや会話しだした。「ええ? 誰? 誰? 」みたいに。


「うーん。私の予想ですけど、多分クラスの男子は全員恋に落ちます」


「ほおお」 


 月光丸が「おもしれえじゃねえか」みたいな感じでつぶやいた。


「いいよ、入って」


 そうして、先生が掛け声を上げると、扉が開いて、教室に転校生が入ってくる……




 え?



 入って来た転校生を見て、僕は困惑した。うそでしょ?


 ピンク色の長い髪の毛をツインテールに結んで、青い大きな瞳、はつらつとした雰囲気……



 エリーナ???!!!


「こんにちは! 」




 


 

読んでいただきありがとうございます。

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