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モブデバイサー  作者: 今宮僕
第1章 過去からきた少女とある夏の日
7/8

7 テロリスト戦闘


「SWOC! 足底飛行! セット!」


 足底飛行は昔の漫画に出てくるような足底にジェットエンジンのようなものがついたブーツだ。


「SWOC! ステルス光学迷彩! セット!」


 これで俺はテロリストのドローンに視認されない。


「足底飛行! 発進!」


 ブオォォンッ。プシュウゥゥゥンッ。


 俺は教官の指示通りテロリストのドローンを気づかれないように追った。


 ピピピッ。


 理事長から通信が入った。


「はい。こちらブラボー1」


「恋澄。敵の潜伏先を逆探知で特定した。この付近の沖合にある洞窟だ。このまま敵のドローンに付いていけば5分足らずで辿り着く」


「そんな近くに敵はいたんですか」


「おそらく敵集団は実弾武装しているから気をつけろ。それともう一つ……」


「なんですか?」


「協会は今日起こった出来事は全てなかった事になるよう対応する。なので君がこの後どう立ち振る舞えばいいか分かるな」


 テロリストを捕まえるだけでなく、この騒動自体をなかった事にしなくてはならないのか。


「30分以内にカタを付けろ」


「サーイエッサー」


 5分後。テロリストの即席アジトに到着した。


 敵は案の定武装していた。対する俺は大広間の食事会場から持ってきたフォークとナイフのみ。


 俺は洞窟の前に立っている見張りの背後に忍び寄り首を絞め落とした。


「ぐはっ……」


 バタンッ。


「何者だ!」


 見張りが倒れた音でテロリスト達が俺に気づいた。


「学生か! やっちまえ!」


 敵のテロリスト達は手持ちの機関銃をぶっ放した。


 バババババババッ。


「SWOC! シールド展開!」


 ピュンッピュンッピュンッピュンッ。


 俺は銃弾を全て弾いた。


 アンチデバイサー粒子の入っていないただの実弾ならデバイサー粒子の集合体であるシールドを貫通しない。


「くそっ! 手品みたいな真似しやがって!」


「SWOC! 身体運動加速!」


 敵が銃弾を撃ち尽くした隙を狙い俺は素早くナイフを投げた。


 グサッ。グサッ。グサッ。


 その場にいたテロリスト6人全員の腹部に命中した。


「SWOC! シールド拘束」


「ぐはぁっ」


俺はテロリストを無事全員拘束した。


     ○


 シールド拘束したテロリスト達に刺したナイフを抜き、傷の手当てをした。


「なぜ殺さないんだ?」


「俺の目的はお前達を捕まえる事だ。そして食器用ナイフで刺されたくらいで人は死なない」


 俺はシールド拘束を強めた。


「ぐぐぐっ息が苦しい!」


「質問に答えてもらう」


「拷問か!?」


「これは拷問であり俺の怒りだ。なぜあんな真似をした?」


 シールド形状変化で敵の首を絞める。


「分かった。答えるからこれ以上絞めないでくれ」


 俺は首締めを緩めた。


「俺達の目的はアンチデバイサー粒子の存在を知らしめて五大国を混乱に陥れる事だ」


「そんな事をしたらとんでもない事態になるじゃないか」


「俺達は皆、五大国とその属国の枠の外にいる無国籍でアンダーグラウンドの人間だ。五大国の恩恵を受けていない」


「なぜ五大国の人間にならないんだ」


「ならないんじゃない。なれないんだ。俺らみたいなデバイサーの資質のないかつ昔の戦災難民孤児の子供はこの世界ではいない者扱いされている」


「そんな……だから五大国や俺達デバイサーに歯向かおうとしたのか」


 怒りの裏には必ず悲しみが存在する。


「こんな救いようのない俺達にチャンスを与えてくれたのはかつてノホロ機関にいた今村マチ博士だった」


「ノホロ機関の……今村マチ……」


「今村博士はデバイサー粒子を研究している最中、デバイサー粒子を分解する抗体となる粒子、アンチデバイサー粒子を発見した」


「この時からアンチデバイサー粒子は存在したのか!?」


「博士は実験当初、デバイサー粒子を使った武力解体による非武装平和を望んでいた。そのためアンチデバイサー粒子の存在をひた隠しにした」


「ふむふむ」


「しかし、デバイサー粒子は五大国に牛耳られ、血を流さない武力衝突の道具となってしまった。博士はそれが許せなかった」


「確かに。SWOCは戦争の道具でしかない」


「五大国は強大な力を持つSWOCデバイサーの保持する事で実権を握り、属国を従わせ難民を放置した。この実情を潜伏先のアンダーグラウンドで目の当たりにした博士は実際の武力を使った武装蜂起の必要性を我々に説きアンチデバイサー粒子を密造した」


「アンチデバイサー粒子はそんな簡単に作れるのか」


「いや、研究設備投資のないアンダーグラウンドでは少量しか生成できない。だから今回のテロも小規模なものとなった。


 しかし、アンチデバイサー粒子の存在を一般世間に知らしめただけで社会は充分恐怖と混乱に陥る。


 それが我々の目的だ。SWOCデバイサー養成の要である素粒戦専が攻撃を受け実害を与えた事により世間は戦慄するであろう」


「残念ながらそうはいかない。襲撃のネット配信はフェイクニュース扱いになるし、出回った動画は五大国総出で削除される。アンチデバイサー粒子の存在はなかった事になる」


「なんだと」


 俺は再びシールド形状変化で首を絞める。


「ぐぐっ……」


「俺の言う通りにしないと5分毎に1人ずつ殺す」


「止めろ。犠牲者を出すなと今村博士から言われている」


「だったら俺の言う事に従ってもらう」


     ○


 翌日。


 ニュース番組にて。


「昨日午後6時頃、素粒戦専が合宿中の宿泊施設がおもちゃのドローンによって襲撃される事件が発生しました。実行犯達は映像で以下のように述べてます」


「アンチデバイサー粒子はありまぁす!」


 アンチデバイサー粒子の存在はテロリスト達の狂言扱いされ、ネットに出回った軍用機関銃搭載ドローンもおもちゃを改造したものだという事に改竄された。


 しかし、アンチデバイサー粒子は存在するし、今村マチ博士の足取りも掴めなかった。それだけはテロリスト達は口を割らなかったし、おそらく正確な居場所も知らなかった。


 しかし、アンチデバイサー粒子が実際に存在する事が五大国のお偉いさんと、素粒戦専の学生達に知れ渡ってしまった。


 今村博士主導の襲撃はこれだけでは終わらない。


 それだけは確信を持って言える。


 加えて皆可愛を襲った学園内のテロリストもおそらく今村博士の内通者であろう。


 そんな不安要素を抱えたまま、俺達は夏季合宿を終えた。


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