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モブデバイサー  作者: 今宮僕
第1章 過去からきた少女とある夏の日
5/8

5 海上模擬戦


 あやかとれいなは海上に立っていた。


 オプションカードの「海上歩行用足底肢体」を履いているからだ。


 しかし、気になるところはそこではない。


「お前らなんでそんな過激な恰好なんだ?」


 あやかは白の極小マイクロビキニ、れいながピンクのスリングショット水着を着ていた。


「布面積が小さい方が動きやすいので!」


「それにしてもこの布面積はバカですのよ!」


 どうやらあやかが用意したらしく、れいなは着させられたらしい。


「こほんっ。そろそろ始めてもよいかな?」


 俺は紳士を装いこのまま模擬戦を開始するよう促した。


 過激な水着は思春期男子にとって眼福である。


 グッジョブあやか!


「まず模擬戦ルールを説明する」


 周りの学生が観客として集まっているので俺はしきり直して周囲に呼びかけるように言った。


「使用していいオプションカードは『海上歩行用足底肢体』『メイン武器』『サブ武器』『簡易シールド』の4枚編成だ。5枚目の『回復系』オプションカードは短期決戦にするため、使用不可とする。どちらかが戦闘不能になった時点で勝敗を決する」


「承知しました!」


「りょーかいです!」


「では模擬戦! 始め!」


「「SWOC海上歩行用足底肢体! セット!」」


 SWOCによって2人の両脚は水上に浮いた。


「ふぅ……」


 早速れいなが溜息をついた。


 海上での戦闘は常にデバイサー粒子を足底に集中させ浮上しつつ戦闘を行わないといけないから体力の消耗が激しい。


 おまけに午前中は散々遠泳と潜水訓練をした直後での戦闘だ。


 ウォームアップは完璧でもコンディションが万全というわけではない。


「はぁ……はぁ……」


 あやかにも足元に若干ふらつきが見られる。


 それでも2人は己のプライドをかけて決闘しているのだ。


「SWOC! ビーム刀剣! セット!」


 ブオォォンッ。


 れいながメイン武器を生成する。


 ビーム刀剣は通常の刀剣より軽く振り回しやすい。


 その代わり大量のデバイサー粒子を剣先に滞留させておく必要があるため高度な技術を要する。


 その分攻撃が当たった際の威力は激しく大きい。


「れいながそうくるなら私も同じのを使うわ。SWOC! ビーム刀剣! セット!」


 ブオォォンッ。


 あやかも負けじと同じ武器を生成した。


----スッ。


 海上で足元のバランスを保ちつつ、互いに徐々にじりじりとすり足で間合いを詰めていく。


 素人目から見ればお互い何もしていないようにしか感じないだろうが、高度な攻防の予測の仕合い、切先の動き読み合いを2人はしている。


 SWOC剣術の成績は2人ともトップクラス。


 観衆達は唾を飲み2人の動きに注目している。


「いやぁぁぁぁぁ!」


 あやかが先手を取り、斬りかかっていく。


「とおっ!」


 バシンッ!


 「ぐっ」


 破壊力の強いあやかの俊敏な斬撃をれいなはつかさず剣で防御しいなす。


 ガシャンッ!


 そして、2人は鍔迫り合いに持ち込む。


 ググググッ。


 お互いに腕の力で身体を押し退け合う。


 シュバッ!


 互いに鍔迫り合いから離れ、滞空する。


 剣術は高いところから打ち込む方が有利だからだろう。


 バヒュンッ!バヒュンッ!バヒュンッ!バヒュンッ!バヒュンッ!


 空中で激しい打撃の攻防が繰り返げられる。


「凄い激しい打ち合いだね。かかり稽古みたい」


「しかし、攻撃の一打一打が計算し尽くされている。AIの動作補正が入っているとはいえあんな華麗でしなやかに舞うように戦えるのは学園であの2人しかいない」


「でもこれだけ互角だと決着つかないんじゃない?」


「りんちゃん! そんなつまらない試合私はしないよ!」


 あやかはりんの素朴な疑問に答えた。


 そしてあやかはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「足底空砲!」


 あやかは省略詠唱でサブ武器を生成し、2メートルほど更に上に飛び上がった。


 ちょうど銅を狙って横に斬りかかっていたれいなは空振りした。


「うおりゃああああっ!」


 あやかは一瞬の隙ができたれいなの頭上めがけて切りかかっていく。


「SWOC海上歩行用足底肢体! 解除!」


 れいなはとっさに海上用装具を離散させ身体を屈め海中に潜り、あやかの斬撃を躱わした。


「くそっ! そうきたか!」


 空振りかつ足場のないあやかがバランスを崩して海面に斬撃をした。


 あやかは空中で身を翻し体勢を立て直そうとする。


「SWOCビーム刀剣! 増量!」


 れいなは刀剣の太さを2倍にして、あやかの落下地点に向け剣先を突き上げる!


 ビーム刀剣はあやかの鳩尾に直撃した。


「ゔぉおおっ……」


 あやかは断末魔を上げ戦意を喪失した。


「勝者! 縁導れいな!」


「うぉおおおおおおっ見事な戦いだったわ!」


 観衆が歓声を上げた。


「ちくしょう。水中から私の落下地点を予測して攻撃してくるなんて補助AIの予測にもなかったぜ」


「SWOCデバイサーは常に3手先を読んで戦うものよ」


「くそー! これで35勝35敗か」


「やっとあやかに追いつけましたわ」


 れいなはあやかに手を差し伸べる。


 しかし、あやかはれいなの手を払いのける。


「情けはいらない! 1人で起き上がれるから」


「なんですって。やっぱりあなたとは分かり合えませんわ!」


 れいなもムキになり怒ってそっぽを向い


 あやかとれいなの70戦目の決闘はこうして幕を閉じた。


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