57 普通じゃない者への追及
「それで、どうして小屋作りなんて始めたんですか?」
俺は、アレス達ご一行と向かい合う形で座っている。
いや、座っていると言うより座らされた形だ。
唯一の救いは、正座じゃないって事だろう。
これが正座だったら、間違いなく何か悪いことをしたので追及を受けているとしか見えないだろう。
「話せば長くなるんだけど……」
「問題ありません。
魔王は倒しましたし、後は帰るだけですから」
「そうですね」
「そうだな、夜は長いんだし、暇つぶしには丁度良いと思うぞ」
「普通じゃない遭難者が、普通じゃないことをしようとしていたからな」
「そうっすね、普通じゃないっす」
薄々は感付いていたが、やはり暇つぶしらしい。
他に娯楽の様な物も無いから、会話することでしか暇をつぶすしかないのは理解できる。
ただ、それは俺の話じゃなくても良い筈だ。
「俺としては、俺なんかの話より、アレス達の話を聞きたいんだが……魔王を倒した時の話とか、それまでの道のりの話とかをさ」
どう考えたって、俺が小屋を作ろうとしていた話より、アレス達の冒険の話の方が面白いと思う。
『魔王を倒して帰って来ただけ』かも知れないが、俺の居た世界には魔王も居なければ魔法もありはしない。
そもそも『世界の敵』みたいなのも居ないから、それを倒しに行く話なんて絶対に面白いに違いない。
「別に、面白い事なんて何もありませんよ。
確かに魔王は他の魔物に比べれば強いかも知れませんが、聖剣があれば倒せる敵です。
魔王の居る場所へと行くのは大変ですが、普通の旅と何ら変わる事はありません。
もし、その他にも聞きたいことがありましたら、それは後でお話ししましょう。
それより、今はユウタさんが何故小屋を作ろうと思ったのかの方が気になります」
「そうだな」
「そうっすね」
この言葉を聞いて、先程の考えは別世界から来た俺だけの感覚で、元から此処に居るアレス達にとっては殊更特別な事など何もない事だと気が付いた。
俺が別世界から来たという事は話していないが、アレス達とは違う特徴を持っている。
魔法が使えず、戦う力も殆ど持っていない。
だけど、見た事も無い道具で何とか生き延びていた。
その様な者だから「今度は、何を作り始めたんだ?」という好奇心の目が向けられたのだろう。
早い話が、動物園の動物と同じようなものだ。
この状況をひっくり返す手立ては無いものか? と考えを巡らす。
多数決という概念があるかは分からないが、もし決を採ったとしても1対5で負けるのは目に見えている。
実力行使でと思ったが、全員が手練れであるアレス達に勝てる見込みはない。
ナターシャとの腕相撲なら勝てるかもしれないが、それはそれで俺の矜持が許さない。
見た目はルックス勝負をしたとしても、アレスは勿論の事、レオンはレオンで精悍なイケメンだし、ザガンも渋いイケメンだ。
(くそっ、何一つ勝てる要素が見当たらない……)
頭の中で弾き出した計算では、俺がこの状況をひっくり返す様な手段は何一つないと言う事を弾き出していた。
「分かったよ。
それじゃあ、何故、俺が小屋を建てようと思い至ったのか話していくよ。
でも、それ程おかしな話って訳でもないと思うぞ?」
「それを判断するのは、此方の仕事です。
さぁ、話してください」
「それじゃあ、アレス達が旅立って行った後から話していくぞ」




