05 荷造り
(持って行くものを、決めないとな……全部を持って行くと、嵩張り過ぎる……)
先ずは最低限、必要なものを考えよう。
テントは間違いなく必須だ。
これが無かったら、毎度木の枝や葉を集めてシェルターを作るか、安全そうな洞窟を探さなければならない。
それに、蚊を避けて寝ることができる。
この世界にも蚊かそれに似たような奴が居るか分からないが、居る前提で考えた方が間違いないと思う。
奴らは例え1匹だったとしても、安眠を妨害する。
寝られない事は体調だけでなく思考にも不調をきたす。
野外で生きていくためには、眠りを軽視してはいけない。
眠りを重要視するのならば、シュラフも必要だ。
今はまだ温かいが、夜になるとどれだけ気温が低下するか分からない。
夜が明けたら凍えて死んでいました……何て洒落にもならない。
暑かったら被るだけでも良いし、何なら無くても良い。
だが、寒い時には代用できるものが無い。
だから、絶対に持って行く。
同様に、コットやインフレータマットなども安眠には必要だろう。
ただ、快適に眠る為に必要であって、生きる為に必要と言う訳ではない。
嵩張ると言う事も考えて、置いて行く。
もし、近場に拠点を構えられたのならば、その時に改めて取りに来れば良いだろう。
次に飲み水を確保しなければいけない。
川があれば水を沸かして湯冷ましを飲めるだろう。
(火と入れ物か……)
ファイヤースターターと麻紐をメスティンの中へと入れる。
これで、川を見つけたら焚き火を熾して飲み水を得ることができるだろう。
本当ならば、ガス缶やバーナーも持って行きたいところだが、ガスが無くなってしまったら無用の長物となってしまう。
しかもメスティンの中に入れられないから、嵩張ってしまう。
使い捨てライターもガスが無くなったら無用の長物となるが、ガス缶やバーナー程には嵩張らないし、メスティンの中へ入れられるので一緒に居れて置く。
ファイヤースターターだって、無限に使えると言う訳ではないのだから……
後は何が必要だ? ナイフは持って行った方が良いだろう。
砥石は無くても良いが、メスティンの中に入るから入れておく。
折り畳みのスコップは、穴を掘る時に必要となるだろうから一応持って行く。
ランタンか……ガソリンのランタンは問題外として、LEDランタンはどうしようか? 明かりを取るだけならば、焚き火で十分だとも言える。
そう言えば、太陽光充電のモバイルバッテリーがあった筈だ。
あれと一緒に持って行けば、使えるだろう。
明るさという点では、焚き火の数倍、明るく照らすことができる。
暗い所で作業をする時に、手元が狂う事が無くなるだろう。
テントを畳み、周りを整理しているとペットボトルがあった。
酒を飲む前に飲み切った清涼飲料水の物だけど、これに飲み水を入れて歩けば便利だろうからこれも持って行く。
絆創膏なんかの医療用品は、セットのまま持って行く。
木や枝を切るのに斧があれば良いのだが、鋸で代用できるだろう。
折り畳み出来る鋸だから、場所も取らないし重くも無い。
後は、残された食料を詰め込む。
「こんなもんだろ……」
手袋を装着してリュックを背にした俺は、どちらへ進めば良いのか分からずにその場で立ち竦んでいた。