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04 転生?(3)

『とは言え、このまま放り出すのは余りにも可哀想じゃから、特別に1つだけ能力を授けよう』


 そう言いながら、手に持っていた杖で俺の頭を軽く叩いた。


「どんな能力を貰えたんだ?」


『この世界の、全ての言語を理解できるようにしておいたのじゃ。

 これで、この世界の人間と出会っても意思疎通できるじゃろう』


「どうせなら、人間の居るところに転移させて欲しかったよ」


『突然、そなたの目の前に見知らぬ何者かが現れたとしよう。

 そなたならば、どうするのじゃ?』


「新たな住民として優しく迎え入れる……訳ないよな……」


 得体の知れない人間が目の前に現れて、何の疑いも無く迎え入れるようならば、その人間は余程奇特な奴か馬鹿者のどちらかだ。

 先ずは拘束して事情を聴くことになるだろう。

 そして、ついさっきまでは俺はこの世界の言葉を知らない。

 何を言っているのか分からず、何を言っても伝わらないだろう。

 拘束されたまま、何をするのでもなく生涯を終える……何てことになるかも知れない。

 神様的にはそれでも良かったのだろうが、多分、情けを掛けてくれたのだろう。


『じゃから、人目のつかぬ場所へ転移させる必要があったのじゃ。

 他に何かあるかの?』


「異世界ってことは、此処は剣と魔法の世界なのか?」


『そなたが何を言っているのか良く分からぬが、魔法はあるぞ』


「だったら、俺も魔法を使えるようにしてくれよ。

 誰にも負けない様に。

 そうすれば、生きていけるだろう」


『そなたは元の世界で魔法が使えたのか? 元から出来ない事を出来るようにすることは罷りならん。

 もし魔法が使いたいのならば、自分で努力して使えるようになることじゃな』


「折角、異世界に転移したんだから、少しでも楽に生きたいんだ。

 その方が、其方としても都合が良いんだろ?」


『ほう、この世界で生かしておくことには飽き足らず、まだこれ以上を望むと言うか? ならば、消滅させ……』


 そう言いながら、杖を持つ手を挙げ始めた。

 多分、あの杖を翳された時に、俺の魂は消滅させられてしまうのだろうか?


「わ~、待ってください。

 ごめんなさい、調子に乗り過ぎました。

 本当にすみませんでした、許してください。

 これで結構です、もう十分にして頂きました。

 本当にありがとうございました」


 神様は、腕を上げるのを途中でやめてゆっくりと降ろした。


『分かれば良いのじゃよ。

 では、もう2度と会う事も無かろう。

 予定外に死ぬことは無いようにな、さらばである』


 この言葉を最後に、脳へと直接響き渡る声はしなくなった。

 そして、テントの上に1枚の紙がひらひらと舞い落ちてきた。


『なお、今この場には結界が張られておる。

 あと元居た世界の時間で、1時間ほど経つとこの結界は消え去るであろう。

 そこは凶暴な野生動物の縄張りの一部であるので、場所を変えた方が良いぞ』


 その紙を見た俺は、心の中で悪態を吐きながら大急ぎで荷造りを始めた。


(神様、どうせなら、もっと安全な所においてくれよ……)


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