03 転生?(2)
「向こうの世界に居られないってことは分かったけど、どうして此方の世界で生きていかなきゃいけないんだ?」
『予定外だと言ったじゃろ。
予定外だったので、死として魂を受け入れる先もなかったのじゃ。
なので、その世界で生かしておくと言う訳じゃよ』
(簡単に言えば、厄介者払いって事か……)
口には出さなかったが、悪態を吐いた。
『そなたが転ばねば、こういう事にはならなかったのじゃよ』
「そう言えば、心の中で思っていても分かるって言っていたっけ……」
俺の言葉をその神とやらは、全く気にしていない様だった。
人間が出来ているという事か? まぁ、あちらさんは人間ではない様だが……
「そうか……此処は別世界なんだな……」
『他にないかの? 無いようならば、我は行くぞ』
「待ってくれ、俺はこの世界で生きていくだけで良いんだよな?」
『そうじゃと言うとろう。
予定外だっただけじゃから、生かしておく以外には何も望まぬ』
「こんな所にいきなり放り捨てられても、生きていけるわけないだろ? 何か生きていく為の術をくれよ」
『じゃから、そなたの持っていた物も一緒に置いておいたのだ。
あれがあれば、生きていけるのじゃろ?』
「あれは、息抜きと言うか、趣味と言うか……兎に角、あれは一時的であって、何時もはあれで生活している訳じゃないんだ。
もっときちんと生活できる様な物をくれよ」
『それは無理じゃな』
「どうしてだ?」
『こちらに持ってこられるものは、あの場にあった物だけじゃ。
元の世界では別の魂が、そなたとして生きていくのじゃからの? 尤も、全ての記憶を失くした状態としてではあるがの。
それでも、あちらの世界では生きていけるじゃろうからの。
まぁ、勝手に入り込んだ報いでもあるがの』
「電化製品が無いと、暮らすのも大変なんだ。
どうにか持って来てもらえないか?」
『無理だと言ったじゃろう。
それに、此方の世界には電気は通っておらぬようじゃ。
電気も無しでどうやって使うつもりなのじゃ?』
「発電機とかも、一緒に持って来てもらえれば……」
『じゃから、持ってこられぬと言っておろうに……あまりにしつこい様であれば『消滅』させてしまうが、良いかの?』
「さっき、予定外だって言っていたじゃないか。
それも、予定外じゃないのか?」
『我は『消滅』と言ったのだ。
予定外では行き場のない魂が出来てしまうのが問題なのじゃが、『消滅』の場合は話が違うのじゃよ。
消滅ならば、文字通り魂をも無くしてしまうのでな。
何もなかったことになるので、問題とならないのじゃよ。
さて、そなたに問おう。
そなたは、消滅を望むのであろうか?』
俺は、押し黙るしかなかった。