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64 竹を切るのはあっという間

「それで、あたしは何をすれば良いんだい?」


 腹の中に溜めていたものを、全て吐き出したリーナは非常にすっきりとした良い笑顔で俺に問い掛けた。

 怒る時には怒るけれど後々まで引き摺らない、竹を割ったような性格だったと言う事は非常に助かる。


(……引き摺らないよな?)


 少しだけ疑心暗鬼になっているのは、今まで怒られていたという事からかもしれない。

 杞憂に終わる事を祈る。


「どうしたんだい? あたしは何をすれば良いんだい?」


「済まない、ちょっと考え事をしていたんだ。

 それで、リーナが出来そうな仕事だけど……」


 何かないか辺りを見回す。

 竹を編んで壁にする作業は、俺とテオ、チャーリーが居れば問題無く進められると思う。

 レオンには、俺がリーナに怒られている時から脚立の方を作って貰っている。

 一応、2台作ってもらう様に頼んだのだが、もうそろそろ出来上がってくると思う。

 ザガンには竹を割って貰っているのだけど、あれだけあったはずの竹の山が心許無い数になってきている。


「リーナには竹を切って貰いたいのだけど、頼めるか?」


「良いよ、任せておきな。

 あの辺に立っている竹を切ってくれば良いんだろ?」


 リーナは踵を返して、竹林の方へと歩き始めようとしていた。


「一寸待て。

 一緒に行って、切り方を……」


 俺も慌てて立ち上がろうとしたのだが、足が痺れていて上手く立ち上がれない。

 直ぐにまた座り込んでしまった。


「何やってるんだい? まぁ、良いや。

 要は竹を切り倒して来れば良いんだろ? 大人しくそこで見ていな」


 リーナは竹林に到着すると、静かに竹に向かって剣を構えた。


(おい、まさか……)


 リーナの身体が動いたかと思った次の瞬間、数本の竹がゆっくりと音を立てて倒れた。

 そして先先の方にある枝を切り払い、纏めて此方へと引き摺って来た。


「これで良いんだろ?」


「あぁ、問題無いな……いや、1つだけに注文を付けても良いか?」


「何だい?」


「もう少し下の方から切り倒してくれると良いかな? って感じかな?」


「分かったよ、もう少し下で切れば良いんだね?」


「あぁ……」


 昨日、俺が少なくない時間を掛けて切り倒した本数を、リーナはあっという間に終わらせてしまった。


 何だか狡い様な感じもしたが、結果が全てだ。

 目的が達せられたのならば、その過程を問う必要は無い。

 狡いように感じたと言っても、それは俺が鋸で1本1本切り倒すと言う苦労をしたからであって、他の者には何の関係もない。

 要するに狡いように感じているのは俺だけで、他の者の目にはリーナが竹を切り倒したという実績が残されただけだ。


 先程まで心許無かったザガンの傍にある竹の山は、見る見るうちにその高さを回復させていた。


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