01 見慣れぬ景色
「ここは?」
地面に突っ伏した状態で目を覚ました俺は、取り敢えず身体を起こした。
辺りには鬱蒼と木々が立ち込めていて、辺りは薄暗い。
(森の中に居るのか? あの近くに森なんて無かったと思うが……)
浜辺でキャンプをしていたのだが、予想以上に酔いが回ってしまい、早々にシュラフの中へと潜り込んだ。
そして夜中にトイレへ行きたくなったので、シュラフから出て用を足した後、再び眠りに就こうとテントの中へと入った時に、何かが足に引っ掛かり転んだ……様な気がする。
どうやっても思い出すことが出来ない。
恐らく気を失ってしまったのだろう……だが、それでもテントを張ったのは浜辺だ。
酔っていたとはいえ、浜辺と森の中を間違えるわけがないし、テントを張る時には酔っていなかった。
それに、転んだのはテントの中だ。
出入り口の閉めた様に記憶しているから、転げ回ったとしてもテントの外に出ているのはおかしいと思う。
「そうだ、テントは?」
辺りを見回すと、背後にテントが立っている状態で存在していた。
(荷物は……荒らされていない様だな)
テントの中の荷物は、散らばることなく置かれていた。
(それにしても……ここは何処なんだ?)
森の荒れ具合から見ても、キャンプ場でない事だけは間違いなさそうだ。
整備がされているキャンプ場であれば、この様に荒れ放題の訳が無い。
放置されたキャンプ場でも、その場へ至る道くらいはある筈だが、周りに道らしい形跡は見つけられなかった。
(誰が一体、こんなことをしやがったんだ? 俺に恨みでもあるのか?)
『恨みなど、ありはせんよ』
突然、頭の中に声が響き渡る。
耳を通してではなく、頭へと直接語り掛けられている感じだ。
「誰だ? 何処にいるんだ? 姿を現せ」
『大声を上げんでも良い。
お前が思うだけで、我には伝わるのでな』
「姿を現せ、俺をこんな所に連れて来てどうしようって言うんだ」
『まぁ、落ち着くのじゃ。
落ち着かぬと、まともに話も出来ぬのでな』
「良いから、俺を元の場所に連れていけ。
こんな事して、ただで済むと思ってないだろうな?」
『暫しの間、騒がせておくとするかの。
その内、騒ぎ疲れて落ち着くだろう』
その言葉を全く意に介すことなく、俺は1人で大声を上げて騒ぎ続けた。
見慣れない森の中では俺の怒声が響き渡っていたが、その間、頭の中に聞こえた声からは何も返事がない。
俺が1人で騒ぎ続け5分後、騒ぎ疲れてその場にへたり込んでいた。