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離婚宣言
式場がざわざわと動揺しているのがわかった。
華やかで清純で甘美な空間には似つかわしくない、不穏。
この中で冷静なのは、おそらく僕だけだろう。
神父様もあわあわと冷や汗をかいている始末だし。
何より、目の前の花嫁の表情がこの上なく『動揺』という言葉を表現していた。
これから辞書の『動揺』の頁にはこの女のこの顔写真を貼り付けておけばいい。
文章の読解が苦手な人でも『動揺』という言葉がどのようなものなのかすぐに理解できるだろう。
そんなことはさておき、僕の花嫁は酷く動揺していた。
まあ、無理はないのかもしれない。
それくらい僕の台詞は凄惨だったということだろう。
「な、何? 何て言ったの?」
サーシャは小さな声で聞き返してきた。
自分の耳を疑っているようだ。
絶対音感を持つ君が僕の言葉を聞き間違えるわけないだろうに。
仕方がないので、僕はもう一度サーシャに台詞を投げてあげる。
全ては復讐のために仕組んだ"愛"の結末の言葉を。
「サーシャ、もう別れよう。君との結婚は失敗だったみたいだ」