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第一話 日常は崩壊へ

 俺こと、『クリスト·フォロス·エメラルドコート』は16歳までRPGゲームのように魔法が使え、モンスターのいる世界が当たり前だと思っていた。


 ある日、ひどい頭痛の後に前世の知識が脳内に流れた事で、ここが不思議な世界に感じてしまったものの、それ以外は生活の支障がなく、普通に過ごしている。


 この世界は、異世界転移が普通にあるようだ。というのも、この世界をより良い文明社会にしようと異世界の人間を定期的にこの世界へ転移させているようだ。


 ここ王都プロキオンも転移者が多く、城下町は平成日本の都会みたいなビル群に、中世のレンガ家屋の住宅街がある、ちぐはぐした街並みになっている。


 だが、ごくたまーに俺のような転生者も現れるようで、生活に支障が出るようなら福祉支援を受けられる制度もある。


 転生者とは、異世界の記憶を持った魂が別の世界に生まれた者の事を指す。


 俺が転生者ということは、不思議と周囲に広まりちょっとした有名人となった。


「おじさん、それとそれ2つずつ頂戴。」

「あいよ、オマケにもう一個入れとくね。」

「え、良いの?サービスいいじゃん。」


 俺は今、王都の広場で開催されているマルシェで買い物をしている。時刻が夕方とあって、人が多い。


「あー、この近くに『でぱーと』?という商業施設が出来てな。何でも(そろ)う上に値段も安いっていう事で、若い子やらお得意様だった人が流れちまって、こっちも必死なんだよ。」


 あー、あるな。


 近くにショッピングセンターが出来ると商店街にある店がたちまちシャッターを降ろしてしまう話。


 転移者によって得られるモノもあれば、廃れてしまうモノもある。


 昔は何でも魔法で解決し、人々の憧れの的であった上級職業『魔法使い(ソーサラー)』も、学べば誰でも扱える科学によって需要(じゅよう)が少なくなってしまった。


「時代の流れかぁ…。頑張ってねおじさん。」

「クリストも、帰り道気を付けろよ。最近、モンスターの凶暴化による事件とか多いからな。」


 次の日、俺は通っている魔法学園までの道を歩いていた。


 レーゲンシルム魔法学園。元々はお金持ちのご子息、ご息女様達が通う由緒ある魔法を学ぶ学園だったが、科学の普及により何十年も前から一般人も通えるようになった。


 それに伴って校舎も増築したようで、王都外の国からも入学する人もいる。


 それにしても、今日は運が良い日だ何故なら…


「おはよう、クリスト」

「おはよう、ジュリア。マリスさんは一緒じゃないのか?」


 ジュリア·ワレンティン。俺の昔からの幼なじみであり、同じ魔法学園に通う同級生であり、憧れの存在だ。


 中身も外見も頭も良く、学園のマドンナであり、俺とは真逆の存在。


 彼女の父、マリス·ワレンティンは学園の先生であり、学園入学前は彼女と共に勉強を教えて貰った恩師である。


 いつもはマリスさんと一緒に学園へ登校しているが、今日は違うようだ。


「最近、モンスターの事件が多いから街の見回りをしてから学園に向かう事になったの。」

「そーなんだ、大変だな。」


 サンクス凶暴モンスター。


 俺は心の中で遭遇(そうぐう)した事もないモンスターへ感謝した。


 学園に着けば、校門前にはマートル先生という中年の男性が険しい顔で辺りを見回しながら挨拶(あいさつ)し、教室に入れば黒板には『午前中は自習』の文字が書かれていた。


 そんなにヤバい事件だったか?


 授業時間になっても(ほとん)どの同級生達は自習せず、おしゃべりに夢中となった。


 俺は教科書とノートを取り出し、歴史の勉強している振りをしながら、真面目に防衛魔法の復習しているジュリアの姿を眺めていた。


「何だ、お前!どこから入ってきた!」


 そんな怒号が聞こえた。教室内は静になり、好奇心のある若者達は窓から覗く。


 校門に立っていた先生と、顔色の悪い男性が校内で対面していた。


 恐らく先生が校内へ戻った後にその男性が入ってきたのだろう。先生は手を構えながら何度も警告する。


 だが侵入者は酔っぱらいなのか、ぎこちなくゆっくりと先生へ近づく。

 俺はその男性に対して不気味さと嫌な予感を感じた。


「マートル先生、どうなされましたか!?」


 女性のリーン先生とマリスさんが駆けつけた。


 マートル先生はそちらへ顔を振り向くと、侵入者はマートル先生の肩を(つか)み、首に顔を(うず)めた。


「あぎゃああああぁぁぁ!!!?」


 直後、絶叫が校内に響き渡る。


 マートル先生から赤い液体が吹き出し、倒れた。侵入者はマートル先生の首に噛みつき、肉を喰いちぎったのだ。

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