表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エッセイまとめ

夕焼けの空について、思う事あれやこれや

作者: あとさん♪

 

「見て! 夕焼けみたい!」

 と、弾んだ声で幼女が言う。


「え~、何言ってんの、夕焼けだよ」

 母親は、軽く笑いながら幼女に応えた。


 夕暮れ時、私とすれ違った自転車に乗った親子連れの何気ない会話。


 はて。

 自転車の後ろに乗った幼女の言う“夕焼けみたい”とはどんな空なのか。疑問に思った私は、何気なく背後の空を振り返り見上げた。


 なるほど。


 西の空は、雲が薄く薄紅色に染まっていた。

 いわゆる、ピンク色。

 確かにこれは“夕焼け空”と胸を張って言えない色だ。


 夕焼けの空、と言って思い浮かぶテンプレート色は、もっと朱色主体の色だ。オレンジ色、朱色、バーミリオン。茜色もそれに当たるか。


 大人にしてみれば、空が染まり始めるこの時間帯から“夕焼け”と認定されるだろうが、幼女的には、あのピンク色だと“まだ”夕焼けではなかったのだろう。

 だからこそ、“みたい”という表現だったのか。


 そこまで思い至って、もう一度振り返って見あげた空は、もう既に朱色が混ざった“夕焼け”の空だった。


 秋の日はつるべ落とし、とはこの事か。

 なるほど。



 夕焼け空で思い出す事が一つ。


 その昔、息子がまだ小学校低学年だった頃。

 冬の始まりのある日の夕方。

 赤い頬をして帰ってきた息子が、私を外に早く早くと無理矢理連れ出す。

 かーちゃん、夕飯作ってる最中だがね。

 いいから見て! と言って息子が指した西の空は、それはそれは、とても見事な夕焼けの空だった。


 自然は芸術家なのだな、としみじみ思いつつ。


 私は、とても、嬉しかった。


 あんなに小さかった息子が、この風景を綺麗だと思うまでに感性を成長させた事。

 それを誰かと共有したいと思うまでに社会性も成長させた事。

 それを見せる相手に選ばれたという事。

 それらが、とても嬉しかったのだ。


 実際問題として、一人っ子の彼には母親(わたし)くらいしか相手はいなかったのだろうが。


 ね! 綺麗でしょ?

 なぜか得意げな息子が可愛くて。

 でもそれは、やっぱりあっという間に変わってしまう風景で。


 忘れたくないな、と思った。


 あの時小学生だった息子が、今や立派な大学生。

 『秋の日はつるべ落とし』が如く、人もあっという間に成長してしまうのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 夕焼け空って綺麗ですよね。ただの自然現象といえば味気ないですが、石斧を持って獣を追いかけていたような昔の人も、きっとそういうことを思ってたんだろうなとか思うも、とても感慨深くなる時がありま…
2021/10/09 14:41 退会済み
管理
[良い点] 素敵なお話ですね!! 働き始めると夕焼けを見る機会がぐっと減りましたので、何だか嬉しくなりましたよ〜!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ