安らぎと苦痛を
初めての投稿作品です。不定期に更新していきます。
ローブを着た四人の集団が、一人の男を囲んでいる。男は傷に呻き、震えている。すると四人のうちの統率者らしき男が口を開いた。
「市民たちにクーデターを起こさせ、混乱に乗じて宮へ忍び込み、王を討ちとるはずが・・・」
「予想外の敵に恐れ、為す術も無く悉く屠られ、ついには一番の信頼を置く仲間を置き去り、見殺しにし、 己自身も矢を受け、死の淵に立っている。」
「お前もお前を信じついてきた者たちも、実に無為だな。」
それを聞いた瀕死の男は嗚咽を漏らし、呻いている。統率者らしき男は続ける。
「これがお前の運命だ。お前が知りたがっていた運命だ。お前が掴みたかった運命だ。お前の望んだ運命だ。これがお前の運命だ。」
それを聞いた瀕死の男が返す。
「こ、これが、お、お、俺の望んだ運命・・・!?ふ、ふざけるな!誰がこんなことを望んだんだ!」
「そ、それにお前たちは何なんだ!?お前たちも王からの刺客なのか!?」
統率者らしき男が返す。
「我々は誰の意思にも従わない。お前は運命を望んだ。だから我々はそれを看取りに来ただけだ。」
「い、意味が分からない!」
「お前は、運命を全うした。」
四人の看取り人たちは、瀕死の男が咽び泣きながら死にゆく姿を見続けた。
絶望し咽び泣いている男は、死のその時まで、運命を恨み、憎み続けた。
男が息絶えたのを看取ると、看取り人たちは王宮とは逆の方向に一言も発さず足を進めた。しばらくして仮面をつけた看取り人がまず静寂を破った。
「今回の男も、つまらん運命だったな。」
それにピアスをつけた看取り人が同調する。
「ええ、まったくだわ。せっかく好みの顔をしていたのに。」
すると今度は無精ひげを生やした看取り人が反駁した。
「いや、彼の生き様には学ぶべきところがあった。運命に身を任せ、考えることを思考することを諦めた、怠惰で愚かな勇者としてね。」
彼らはしばらく、「今回」の看取った男について語らいながら歩いた。
空が白み始めたころ、彼らは足を止めた。統率者の男が口を開いた。
「そのあたりに。今回の看取りはここまでだ。では、次の招集まで”しばし”の眠りを。」
「「「御意に。」」」
朝日が昇ったころには、彼らの立っていた場所には、足跡すら残っていなかった。