光の中
※語彙力は無いです
光の中
屋上へ続くドアを開けて、外へ出る。耳からイヤホンを抜いてポケットにしまうと、手すりに持たれて夜空を見上げて、ため息を1つ。
それは夜空に輝く星を見て美しさに惚れ惚れとして、自然とついたため息ではなく、呆れから来たものだった。何せ、都会の明かりで星など一つも見えなかったから。
では、街の夜景はどうだろう?星が自分を満たしてくれないのなら、作られた星々なら自分を満たしてくれるだろうか。
だが、その期待は外れた。
街の夜景と言うのは、 傍から眺める分には良いものだが、その中にいて周りを眺めるとその魅力は大幅に下がるのだ。この場所では、自分を満たしてくれる物はなかった。
ならどこに行けば自分は満たされる?この世界のどこへ行けば…。
いや、もうこの世界に自分を満たす星はないのかもしれない。だったら…。
手すりに手をかけ、力を込める。手すりを乗り越えて、数十センチ程の狭い縁に立つ。喧騒が足元から響く。
空からなら、地上が空に見えるかな。
ぐらり。世界が揺らぐ。
時は西暦2060年。
地表の殆どがビル街になり、空の星はどこに行っても、一つたりとも、見えなくなった。
その美しいとされる夜景すら、当たり前になってしまった。
空を夢見る子どもは、自ら深淵へ飛ぶ。