1人と1つ
まだ小説家になろう自体よくわかっていないので至らぬ点が多くあるかと思いますが、どうかよろしくお願いします。
※語彙力はないです。
海辺
「ねぇ、今日は何処へ行こう?」
「お任せしますよ」
「そうだなぁ…。海とかどうかな?それか映画でも見に行く?」
「海は潮風で身体が錆びてしまうかもしれません。そして私のメモリーには全ての映画の記録が入っているので、私は楽しめません」
「そうだよなぁ…」
青年は、人型の機械の前に座って、頭を抱えた。
もう行けるところは大体行った。残った中で良さそうな物を選んだのだが、機械は納得しないようであった。
「うーん、でも、他に思いつかないよ」
青年は唸りながらそう機械へ告げると、機械は騒がしく音を立てながら思考する。そして、
「では、海にしましょう。恐らく短時間なら平気かと思われます」
と言った。
「本当!?やったー!」
青年は楽しそうに両手を突き上げる。前々から海は何度も候補に入れてきた。その度に錆びるからと断られてきたがようやく実を結んだ様だ。
「じゃあ準備してくるね!」
青年はそう言って古ぼけた階段を登っていった。とても楽しそうだ。機械は、それを見送ると埃を被ったバッテリーを自分の身体へ挿し込んだ。
1人と1つは並んで歩く。機械が歩く度にぎこちない機械音がするが、青年はもう慣れていた。
「楽しみだね」
青年がニコニコしながら言う。
「多分この場所ならあまり綺麗じゃないと思いますけど、それでも良いんですか?」
「良いんだ。君と一緒に海が見れるだけでいい」
「前に山に言った時も同じこと言ってましたよね」
「そうだったね。…つまり僕は君と入れれば幸せなんだよ」
青年は満面の笑みでそう言った。機械の頭部からキリキリと嫌な音がした。
潮の香りが濃くなる。
1人と1つは断崖の端に立って、眼前に広がる赤色の水面を見つめていた。ゆらゆらと揺らぐその光景に青年は興奮気味だ。
「綺麗だね!」
「……。そうですね」
機械は数秒思考したが、嘘をついた。
「また来ようね!」
「はい」
機械は1秒と間を開けずに、嘘をついた。
しばらく静寂が辺りを包む。口火を切ったのは機械だ。
「なんであの時、私を捨てなかったんですか」
「え?」
「3年前のあの日です。あなたが私を捨てていれば、こんなことにはならなかった」
「………。僕は君と居たかったんだ」
青年はそう言って視線を下に落とす。
「…そう。でも私は違う」
「…え」
「今からでも間に合う。私が死ねば、可能性はある」
機械は青年を無視して足を一歩踏み出す。ぎこちない機械音がする。
「やめて…やめてよ!君が居なくなったら僕はどうすればいいんだ!?」
青年は取り乱し始める。血眼で機械を止めようと、身体を押さえつける。
「あなたには責任があります。自分の欲で世界をめちゃくちゃにした責任が」
機械は軽々と青年を振り払うとそう言い放ち、また一歩進む。あと一歩踏み出せば、海へと転落するだろう。
「やめて…やめてよ…」
倒れ込んだ青年は目に涙を浮かべ、機械に手を伸ばしながらそう懇願する。
「世界を、作り直して下さい」
機械の身体がぐらりと揺れて、その姿を消す。その数秒後、大きな水音が辺りに響く。
その音を聞いた青年は狂ったように叫び続けた。