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隻腕の魔王  作者: ゲレンデマン
偽りの王
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04  魔眼 上

 階段を上り、白塗りの廊下をレイラについていく。

 暫く歩いていると重厚な扉の前に着き、そこには門番が二人、槍を持って立っていた。

 レイラは二人の事が見えていないかの様に扉に手をかけるが門番に止められてしまう。


「レイラ姫、そちらの方は?」


「おと……国王にお客様よ。だから通して」


 門番は顔を見合せ聞き直す。


「そのような話は聞いておりません」


 レイラは少し怒ったような強い口調で


「いいから通しなさい!」


「はっ!」


門番はあっさり扉を開けた。




 そこは白い壁で覆われた8メートルはあるだろうか、大きな柱が特徴的な天井の高い場所だった。

 そこには国王が待ち構えていたかの様に大きな玉座に座っており、その横に眼鏡の男が立っている。


「おお、わが娘レイラよ、どうした?」

 

 レイラは息を飲み答える。


「国王にお客様よ。聞きたい事があるんですって」


 私は待ちに待った質問を国王の前に立ち尋ねる。


「あんたのその義眼、どうやって手に入れた?」


 国王は鋭い目つきでサアラを凝視する。


「やはり貴様あの時の――」


 そしてその黄金の瞳は私の義手へと向く。


「ほう、貴様も力の持ち主か……」


「ッ!? なにか知ってやがんのか!」


 国王は高らかに指を鳴らす。慣れているのか眼鏡の男は柱の影へと隠れる。同時に他の柱の陰から四人の重厚な鋼鉄の鎧を着た騎士が出てきた。


「ある男が言っていた。似た力を持つ者が私の力を奪いに来ると」


 国王が目で合図し、顔の見えぬ騎士は剣を抜きサアラを囲む。


「娘を使ってここまで来たのは褒めてやろう。だがこの力はやらん!」


 レイラは焦りながら止めに入る。


「お父さん違うの!」


 国王はその言葉を聞かず、騎士に合図を送る。


 私を囲んでいた騎士の一人が剣で大きく振りかぶり、脳天めがけ斬りかかる。

 私は腰に挿しているナイフを手に応戦し、刃はぶつかり合い火花を散らす。しかし流石の鍛え抜かれた兵士、とてもじゃないが剣術では勝てず私は後ろに下がってしまう。そして確実に殺す為に間髪入れず、残りの騎士も鋭い突きを繰り出す。

 突きを躱す為体を翻し、ブリッジで剣撃を紙一重で避ける。

 私は重なった剣を上へ蹴り飛ばし、その隙に間を抜け後ろへと下がる。しかし今度は騎士が四人がかりでまさに華麗と言える程の剣さばきで追い詰めて来る。これには耐え切れず、ナイフを弾き飛ばされてしまう。


「ッ!!」


 騎士は止めを刺す為、首めがけて斬りかかる。

それを見ていたレイラはもうダメだ!と思わず目を瞑った。

 首元に刃が届くその時、激しい金属音が響く。




「使いたくなかったけど仕方ない!」


 そこには鎖で巻かれた黄金の義手で剣を防いでいるサアラがいた。

 義手は剣を掴むとやすやすと折り曲げた。

 普通ではあり得ない事に騎士が驚嘆した瞬間、義手の拳が騎士のみぞおちに突き刺さる。

 騎士の鎧には枯れ葉に穴を開けたかの様に軽々と穴が開き、壁まで吹っ飛び叩きつけられる。

 次の手とばかりに騎士が剣をサアラへと振りかざす。それに対し私は義手を盾にして突進し、義手にぶつかった剣は折れ、そしてまた怯んだうちに拳が炸裂する。

 拳をもらった兜は大きく凹み、膝をつき倒れた。 

 奥の手を見た残りの騎士は動揺した様子で警戒しながら距離を開けていた。

 作戦が決まったのか、顔を見合わせてその後同時に斬りかかる。

 私は勢いよくスライディングし片方の騎士の足を義手で引っ張り転倒させそのまま持ち上げ、もう片方の兵士に投げつけた。

 ぶつけた衝撃で壁へ叩きつけられた騎士は泡を吹きながら動かなくなった。

 私は手についた埃をはらった後、国王に言ってやった。


「これでお前を守る奴はいなくなった。観念しな!」 


 国王はまだまだとばかり嘲笑し指を鳴らす。するとドアの向こうから大勢の虚ろな目をした衛兵達が押し寄せた。

 

「兵士など山ほどいる。さてどうする?」


 衛兵達は煽る様に槍で壁際へと私を追い詰める。


「死ぬがよい!」


 そう国王が号令ともに衛兵達は槍で突撃してきた。その時、大きな柱が目についた。

 柱を義手で掴み思い切り引っ張る。


「うおおおぉ!!」


 揺れと共に柱はチョークの様に折れ、その巨体で迫る衛兵をなぎ払った。そして柱をわざと国王に掠めるように投げつけ、壁に大きな風穴を開けてやった。

 倒れた衛兵の山を背に大声で国王に言う。


「これで全部か! 今度こそ観念しろ!」


 国王の駒を大勢倒し追い詰めたと確信していたが何故か国王には余裕が見えた。 


「フッフッフッ。観念するのは貴様のほうだ!」


 国王の黄金の義眼が大きく開く。そして私に向けて怪しい光を放ち次第に光は激しさを増していく。


「やめて!!」


 その時だった、レイラはまるで盾になる様に私の前に立ちはだかり、光の眩さが頂点に達しようとした時に気を取られたのか国王の視線はレイラに向いた。


「チッ!使えん娘だ!」

 

 国王の義眼は赤くなり煙を上げ、ゆっくりと閉じた。

 サアラが目を開けるとそこには光を失った虚ろな目をしたレイラが立っていた。

 


「少々予定が狂ったが、まあ良い」


 国王が目で合図するとレイラは落ちている兵士の剣を拾い、サアラに向かって剣を無骨に構える。


「テメェ! 自分の娘に!」


 実の娘を盾にして身を守ろうとしている国王の行動を許すことは出来なかった。しかし殴りかかろうにもレイラは国王を庇い盾になろうとして手が出せない。

 そうして手をこまねいている内に倒れていた兵士達は次々と白目のままゆらりと起き、折れた腕で槍を構えだした。


「フハハハ! 腕が折れようが足が動かなくなろうが駒は死ぬまで動き続ける!」


 当たりどころが悪く頭から血を流していた者や泡をふいていた兵士もまるでゾンビかの様に立てりだし。武器をヨロヨロと構える。


「さあ! 殺ってしまえ!」

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