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幼き日の約束





高い山々に囲まれた小さな国、アルヴィン王国は中立国だ。


決して戦争はせず、どの国の味方にもならず、敵にもならず、ここ数百年、戦争とは無縁の豊かで平和な国だ。

けれど隣国との交流が無いわけではない。

代々この国の王女達は望まれれば四方の国へと嫁いでいる。


アルヴィンを小さい国だからと我が物にしようとする国は現れない。

遠い昔からの言い伝えがあるからだ。


『アルヴィン王国を侵略してはいけない、神に愛されし彼の国を穢せばその国に数百年の災いをもたらすであろう』


言い伝えでは神がアルヴィンの姫を愛し姫に特別な力を授けた。精霊を操る力だ。


アルヴィン王国の王女達は見目の麗しい者、心根の優しい者が多く、どの国の王子達もこぞって求婚の申し入れをする。 しかしその多くは南の大帝国イグニールに嫁ぐ。




✴︎



アルヴィン王国の現国王エドモンド二世は、正妻、側室の子を含め5人の子が居るがその全員が王女だ。

しかし、王妃はなかなか子宝に恵まれず、王女を身籠もるまでに10年を費やした。


王女が誕生した際には国王だけでなく、側室や側室が産んだ王女達も涙を流し喜んだ。

たくさんの精霊達も姿を見せた。

優しい子でなければ精霊は寄りつかず、力も貸すことはないと言われている。


皆に愛されし第七王女マリーローズ


誰もがマリーに愛を与えた。

一番歳の近い姉アリシアもその姉達も皆マリーを可愛がった。


周囲の者はマリーを城に閉じ込める事なく、のびのびと育てた。

大地の精霊に愛されし姫に危険はないからだ。

彼女の側にはいつでも小さな精霊達が付いて回る。

マリーは大らかで優しく、強く、明るく、そして少しお転婆な娘に育った。




しかし、マリーが11歳の時、ついに1番仲の良い姉アリシアが北の国に嫁いで行く。

その年、マリーの母と、姉達の母までも流行り病で亡くなると、父王は床に伏せるようになる。

周囲からの強い勧めを受け、翌年父王は押し付けられるように西の国から妃を娶る。


マリーの愛し愛される日々はここまでだった。


ルキエラ妃は、国王は流行病で、大切な王女に何かあってはいけないと周囲に言い聞かせ、マリーを侍女エルと共に城から離れた離宮に住まわせた。


綺麗なドレスは着られないけれど、離宮には図書室があるので、マリーは本を読んで過ごしたり、愛馬ティモシーの世話をし、野山を一緒に駆け回ったり、小さな畑も耕した。




そんな日々の中でも時折思い出すのは父と母と3人で初めて訪れた南の国での事だ。

マリーはまだ5歳だったがお転婆で見知らぬ国に興味津々の余り、こっそりと両親の元から抜け出し王宮の庭に出た。

そこは、見たこともないような南の国の花が鮮やかに咲き乱れ、いい匂いのする木の実もたくさん生っていた。


マリーは赤い小さな木の実を取りたくて、迷わず木に登ってちぎり胸元に入れると、下に飛び降りた。

すると誰かが、あぶない!っと叫んでマリーを受け止めてくれた。


その人の吸い込まれそうな綺麗な青空色の瞳にマリーは絵本に出てくる王子様と重ねて一目で好きになってしまう。


「 お姫様抱っこをしたのだから、あなたは私をお嫁さんにしてくれなきゃだめなのよ!」


「 ーーははっ、お姫様、そんな決まりがあるのかい?」


「 あるわ!みて、精霊達も祝福してるわ!精霊達があなたにキスをしたら、私達はもう夫婦よ! 」


精霊達はくるくると2人の間を回り、2人にキスを与えた。


「 ーーこれは……、こんなたくさんの精霊は初めて見たよ、すごいな…

どうやら、私は小さな姫と夫婦になってしまったらしいね 」


彼は優しく微笑んでくれた。


「 約束よ、私が16歳になったら迎えに来てね 」


「 君が覚えていられるかな?」


「 もちろん忘れるわけないわ! でも私にもお姉様達みたいにたくさんの求婚者がいるかも?!

その時も諦めないできっと私を迎えに来てね!」


そう言って背伸びをし、彼の頬にキスをした。


(… あの時は楽しかったわ… 彼は覚えているかしら?… たとえ覚えてくれていても、もうどうしようもないわね…)


悲しくなる時もあったし、寂しい時もあった。


でもどんな時も、いつでも側には精霊達が居てくれた。



✴︎



マリーは離宮で誕生日を迎えた。

テーブルの上にはマリーが自分で作った料理が並んでいる。


「 ねぇ、エル! 少し作りすぎたかしら?誕生日だからといって贅沢過ぎる?」


「 …マリー様…っ ちっとも贅沢な事はありません…姫様は本当なら城の料理人に沢山の料理を作って国中に祝ってもらえる立場の方ですのにっ…贈り物すら無いなんてっ! なぜこのようなことが許されるのでしょうっ…うぅっ」


「 エル!泣いてはダメよ、幸せが逃げちゃうわ、エルほら笑って…ね? 2人で作ったから、すごく美味しそうな料理でしょ? 」


「 …ええ、えぇ…とても美味しそう…」


「 お祝いのうたを歌いましょ! 精霊達も一緒に。泣いていては彼等は来てくれないわ、

サリー、ミルー、トットー 」


マリーが呼ぶと精霊達がクルクルと回り、踊り、蝋燭に火つけてくれて、天井からキラキラと祝いの光を降らせてくれる。

それはとても神秘的な光景で、今年はいつもと違う素敵な年になるとマリーは思った。


ーーマリーはこの日約束の16歳になった。























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