表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

幼女外伝 幼女と愛と和平

警官「飛行機なんて初めて乗るよ」


警官は窓にしがみついて、まるで子供のようにはしゃいでいる。

その傍らで男はビールをぐいっと飲んで目を覚ました。


警官「おいおい、まだ昼だぞ」


相棒「酒はいい薬になるんです」


警官「はっ、まさか酔い止めのつもりか」


相棒「さてな」


三時間ちょっとの飛行を終えて彼らの乗る飛行機は、大華の国の沈菜という都市に降りた。

首都からは離れているが、飲食店が多い都市で、グルメ目的の観光客がよく訪れる。

その日も変わらず、空港の中も外も人で賑わっていた。

そして空港から市街地へと移動すると建物が密集していて、穏やかな気候も熱気にのまれ、いよいよ窮屈で暑苦しく感じた。

行き交う人の多さに息苦しさも感じる。

汚れたビルの間をくぐり抜けて、目立つほど綺麗だが、ちんまりとしたホテルで二人はようやく一息ついた。

ホテル内にあるレストランで杏仁豆腐をすすりながら男は人を待つ。

赤で統一された壁に緑や金の模様で独特に装飾された店内を眺めて、ぼっーと異国情緒に耽っていると、細い体に合わせたドレスのような民族衣装をまとった、黒い長髪が美しい女が声を掛けてきた。


ピビ「あなたがボス?」


警官「ボス?」


男は答える代わりに、円卓に立てておいた手書きの名札を掲げた。

「BOSU」

と雑に書かれている。


ピビ「はじめまして、私はピビ。こうして顔を合わせるのは初めてね。それにしてもまさか、ボスが表に出てくるなんて」


相棒「話したろう。これでも、最前線で幼女と実際に戦ってきたんだ」


女はクスリと笑って、ハンドバッグから一枚の写真を取り出して男の前へ滑らせた。

男はニヤリと笑い、警官はドキリとして目を背けた。


ピビ「反応を見る限りボスの言うことは事実のようね。でも、隣の男性はそうじゃないみたい」


相棒「これでも幼女の扱いには慣れているはずなんだがな」


警官「俺の仕事は、遠くから、幼女を見守ることだ」


相棒「ということらしい」


言って、やれやれという風に肩を上げた。


相棒「さて、さっそくこの子に会いに行こう。それとも少し休憩しようか」


ピビ「いいえ、すぐに発ちましょう。到着は夜になるわ。あまり遅くなると幼女と面会出来なくなる」


相棒「分かった。それじゃあ出発だ」


二人は女についてホテルを出ると、大通りに停めてある塗装の剥げた黒いバンに乗り込んだ。

運転手は白いシャツに紺の短パン、それと首にはピンクのタオルをかけた、薄毛が汗でよく湿った男だった。


ピビ「私のパパよ」


相棒「今日からよろしくお願いします」


薄毛「あいさ。安全運転で行くからね」


車は宣言通り、しっかりと周囲に気を配りながらゆっくりと発進して、自動車の海へと静かに潜った。


ピビ「へえ、あなたは内緒警察なの」


警官「全国の警察をまとめる警察庁のなかでも極秘の特命係で、紅白と連携して、東西の首都をまたいで全国で活動している。俺はここ一年のあいだ淡慈という島に配属されていた」


相棒「彼は紅白と幼女の補佐で、縁の下の力持ちってやつだな。わかるか」


ピビ「瑞穂のことわざで、陰の功労者という風な意味ね。私たちの国では便座の下のウォシュレットと言うわ」


相棒「えらく近代的だな……」


ピビ「若者の流行り言葉よ」うぃんく


相棒「なんだ。冗談か」


ピビ「情報収集に長けたボスが知らないなんて驚きね」


相棒「俺は幼女専門だからな」


警官「そうか。君が彼のことをボスと呼ぶのは、君がチャイルドシートのメンバーだからだな」


相棒「紹介が遅れましたね。彼女はピビ」


ピビ「本名じゃないのよ。でも、どうぞよろしく」握手


警官「よろしく」


相棒「この国での通訳と案内を彼女に頼んだんです」


ピビ「内緒警察はチャイルドシートのこともよくご存知のようね」


警官「俺も一応は幼女専門だからな」


相棒「らしく、俺はこいつに捕まって連行されて流れのままに、今の今まで淡慈島で幼女と戦わされていたというわけだ」


ピビ「まあ、捕まったの」


相棒「恥ずかしくて黙ってた。すまん」


ピビ「やるじゃないね瑞穂の警察」


警官「まあな。容易い仕事だった」


相棒「ち、調子に乗りやがって」


気を悪くして窓の外を見やると日は暮れ、車はいつの間にか田舎道を走っていた。

黄金色の野原の向こうにある山。

一行はそこを目指している。


薄毛「ここからちょいと揺れるよ」


ところどころコンクリートの剥がれた山道を一時間ほどガタゴトと登って山奥へと突き進む。

川を越えて原生林を抜けて、秘境と表現するにふさわしい村へやっと到着した。

車から降りると涼しい風が若葉の匂いを運んできた。

見上げる空は薄紫で、星明かりが目立ちはじめている。


相棒「ふうー」


警官「空気が新鮮で気持ちいいな」


相棒「そうですね。幼女もきっと、いきいきとしていることでしょう」


警官「幼女は横目でチラ見するのがベストだったな」


相棒「あなたもY細胞がないなんて災難ですね。それでよくもまあ、わざわざ幼女訪問という危険な旅についてきたものです」


警官「仕事が一段落して間もなく、内緒警察も解散。そんな時に心残りのようなものをふと感じてな……」


相棒「へえ、心残りね」


そこへ連絡を終えたピビが戻ってきた。

男から礼を受けた薄毛は車と一緒に民宿へ去った。


ピビ「二人ともお待たせ。ぜひお会いしたいって」


相棒「良かった。挨拶くらいはしておきたかった」


ピビ「晩餐会に招待してくれたわ」


相棒「え!晩餐会!」


晩餐会と聞いた相棒の顔は夜の陰りと同じに暗くなっていった。


ピビ「大丈夫?顔色がよくないわ」


相棒「幼女と相席なのか」


ピビ「ええ」


相棒「とすればヤバい。幼女が食物を貪る姿は心を激しく乱す小さな口にいっぱいたくわえて咀嚼する有様は……!」ぷるぷる


ピビ「落ち着いて。とにかく落ち着いて」


警官「そんなにヤバいのか?」


相棒「見慣れた幼女なら構わない。耐えられる。しかし初対面の幼女となれば、幼女慣れした俺でもどうなるか分からない」


警官「食欲がなくなってきた。どうせ長居するし断って明日にしないか?な?」


ピビ「それは失礼よ。幼女が楽しみにしているし、それに用意だって進んでいるわ」


相棒「彼女の言う通りです。俺達の目的は世界を巡り幼女を訪問すること。これから様々なアプローチを受けて魅了されそうになるでしょう。その一歩め、ここで躓いてはなりません」


警官「わかった。楽しめるよう努力する」


相棒「違う」


警官「なに?」


相棒「楽しませられるように努力するんだ!」


警官はハッとした。

安全地帯から幼女を見守っていただけの人間と、前線で命をかけて幼女と戦っていた人間の意識の差違を、己の保身的な醜さまでも思い知らされた。


警官「幼女優先。そうだろう」


相棒「そうです。共に頑張りましょう」


男に力強く肩を叩かれて気が引き締まったようだ。

警官は自信に満ちた笑顔で頷いた。


ピビ「男の友情ていいわね」


相棒「こんな奴に友情なんてあってたまるか」


警官「ちょっと待て。こんな奴とはなんだこんな奴とは」


相棒「行きましょう、お巡りさん」


警官「本官は誤魔化せんぞ」


ピビ「いいから行くわよ」


和平と書いてフーピンちゃん。

これから訪問する幼女の素敵なお名前。

彼女は未来の幼女を減らす一人っ子政策に反対していた団体「ムジゲ」の代表幼女で、その政策が終わりを迎えた現在は、ここ故郷に帰り幸せな毎日を過ごしている。

ここには幼女の悲しみも、大人たちの言い争いもない。

彼女はいつまでも大好きな武術を笑顔で励んでいる。


警官「武術だって?」


竹林に囲まれた村は山の獣から子供たちを守るために高い土壁と石壁で外界と仕切るように出来ていて、また階段が多く荒波のような起伏のある作りになっていた。

地下水が血管のように巡る入り組んだ道路には人の姿がない。

しかし、あちこちからテレビの音や団らんの会話に調子外れの歌声まで聞こえてくる。

各々それぞれに帰宅して食事を楽しんでいるようだ。

家の明かりが街灯の役割を果たすように点在して、食欲をそそる香辛料の匂いが立ち込めている。


警官「まさか幼女と格闘することはないだろうな」


相棒「まさか。彼女の武術は平和を願い争いを鎮めるためのものです。型の美しさで相手の心を魅了して鎮めるんです」


相棒は言い終わってすぐ、自分の言った言葉の恐ろしさに気付いた。


相棒「武術を披露されたらひとたまりもないな」


ピビ「可能性は大いにあるわ。本当に武術が大好きだからね」


警官「南無三!サングラスを瑞穂に忘れた」


相棒「空港で買わなかったんですか?」


警官「今の今まで忘れてた」


ピビ「はい。これを使って」


警官「いいのか?」


警官はショッキングピンクのサングラスを手に入れた。

幼女の魅力に対する耐性が上がった。

かっこよさが下がった。


警官「前がよく見えない」


相棒「あほうおじさんだな」


目的の民家に到着して、腰ほどの高さの赤い鉄門を開き庭へと進む。

庭には木が一本と小さな畑があった。

和平ちゃんの家は他と変わらず、土や石で出来た箱形だった。

その壁には彼女が書いたのか可愛らしい落書きが並んでいる。

それは玄関扉の側にもあって、相棒は見つけた瞬間に思わず飛び退いた。


ピビ「ボス、大袈裟よ」


ピビは笑っていたが男は笑えなかった。

電灯というスポットライトを浴びるそれは真面目に可愛らしくて目が釘付けになる。


相棒「ネットで事前調査したが、こんな情報はなかった。これは悪い大人を払う魔除けか?」


ピビ「そんなのじゃないわ。この村に昔からある風習で、子供たちは家の壁を大きなキャンパスにして墨で自由に絵を描くのよ」


相棒「驚いた。つい罠かと思ってしまったのが情けない」


ピビ「これを見て。これくらいならボスにも読めるはず」


相棒「歓迎、だな」


ピビ「色がハッキリしてる。私たちが訪ねることを聞いて書いたものね。とっても楽しみにしているみたい」


確かにそうらしい。

歓迎の文字と、恐らく和平ちゃん自身だろう。

はしゃぐ女の子に花や動物たちがハッピーをこれでもかとムンムンに醸し出している。


警官「なんだそれは!あまりに可愛いではないか!」


相棒「落ち着いて。興奮すればキュン死に至る可能性が高まります」


その時である。


和平「あ!」


ガラス張りのドアを横に開いて幼女強襲。

六回も瞬く間に、おじさんたちは緊張の糸でがんじがらめにされた。


ピビ「がおかお!」


和平「がおかお!」


元気よく挨拶を交わす二人。

艶のある黒髪を二つの団子にした和平ちゃんが煩い訪問者を快く迎えてくれた。

おじさんたちは立ち尽くして傍観するしかなかった。


和平「よいよい」


和平ちゃんが手招きをしている。

はやく来いということらしい。

応えないわけにはいかないと、まず、相棒が重い足を持ち上げた。


警官「待て。置いて、かないで、くれ。でも、心、の準備、が」


激しい動悸に襲われているようだ。

肩を上下させて喘ぎ喘ぎ苦しんでいる。


相棒「しっかりしろ!」


相棒はポケットに忍ばせていた洗濯バサミを素早く取り出すと、それで警官の鼻を挟んでやった。

警官が大きな悲鳴を上げると同時に和平ちゃんが小さく悲鳴を上げた。


警官「いきなり何するんだ!」


相棒「どうです。落ち着きましたか」


警官「おお……落ち着いた!」


和平「はお?」


心配した和平ちゃんに腕を掴まれてドキリとしたが、鼻を咬む洗濯バサミのおかげで落ち着いていられた。

しかし、心優しい和平ちゃんが、いっぱいいっぱい背伸び手伸びして洗濯バサミを取ってくれようとする。


警官「えいやあ!」


相棒「正気か!」


相棒がせっかく和平ちゃんを引き離したのに、警官は自ら洗濯バサミを外して、それも踵で踏みつけて砕いてしまった。


相棒「どうして……」


警官「俺は警官だ。弱くあっては決してならない。守るためには強くなくてはならないのだ」


相棒は素直に格好いいと思った。

でも、彼がサングラスを外すことはなかった。

和平ちゃんに手を繋がれて、おじさん達はようやく部屋の中へと連行された。

玄関から一歩中へ入ると、もう部屋だった。

土の上にそのまま、木製の大きなテーブルや椅子、隅に移動させられたソファーも置いてあった。

壁には家族写真や賞状がピンで止められ、模様の描かれた布も幾つか飾られていた。

またそこには、電子パッドや大型テレビといった近代的なものもあった。

おっと、照明まで近代的なものである。

男は何とも奇妙な気持ちになったが、目前のご馳走を見れば大して気にはならない。

和平ちゃんの父親、そして村長が顔を赤くしながら酒を飲んでいた。

二人はグラスを片手に陽気に迎えてくれた。

奥の部屋から和平ちゃんの母とピビが料理を運んできて席に着けば、部屋はいっぱいいっぱいになった。


村長「それで、いつ頃までいらっしゃいますか?」


ピビが村長の言葉を訳してくれる。


相棒「四日は滞在したいと考えております」


村長「そうですか。不便もありましょうが、どうぞご自由になさってください。我々はあなた方を心より歓迎します」


相棒「ありがとうございます」


父親「明日は朝一番、娘の武術を見学してはいかがかな」


母親「それがいいわ。うん、まずは村の伝統的な武術を見てもらいましょう」


相棒「いいですね。楽しみにします」


ピビを仲介して男は対話を続ける。

その傍らで警官は酸味のある地酒を飲んで酔ってしまったのか、意識が朦朧として空っぽの口をモゴモゴさせていた。

彼の視線の先で、和平ちゃんが慣れた手つきで蟹の足をへし折ってもぎ取り、その中身を専用のフォークでズルルと引きずり出している。

蟹は村からもう少し高いところに建てられた養殖場で育てられていて、この村の特産だ。

コンピューターによって徹底管理された環境と清らかな湧水で育った蟹は大きいもので十五㌢にもなる。

それを鉄鍋に放り込み、醤油や辛味噌等の調味料で味付けしながら唐辛子とニンニクの芽も加えて豪快に焼き、最後にシャンパンで蒸す。

出来上がったものは「シャンパンガニ」と呼ばれ、この国の伝統料理であり名物として世界によく知られている。


相棒「ジッと見てはいけません」


男が邪な視線に気付いて小声で注意した。

警官と目があった和平ちゃんは、しおらしく肩をすくめて照れ笑いした。

口もとについたソースが彼女の魅力をより引き立てる。

サングラスを外すことを余儀なくされた無防備な彼にとっては一撃必殺の微笑みだった。


警官「からくないのかなあ」


お母さん「あの子の蟹には辛いものは入っていないのよ」


警官「そうなんだあ」


ここで一度断っておくが、この警官は間抜けなわけではない。

彼の心がまるで方位磁石のように引き寄せられるほど和平ちゃんが魅力的なのだ。

しかし、生死の境でも負けまいと、意識の底では引き続き幼女の魅力と戦っている。

彼は錆び付いたネジのような頭を軋ませて男を見た。

男は汚ならしく蟹を食っていた。

手も口もベトベトで、時に辛さに舌を出して参っている。

それでも男の手は止まらない。

足を食いつくすと甲羅の中身をすすり出した。

いや、母親に取り上げられたぞ。

助かった。これ以上に気持ち悪いものを見せられてはせっかくのご馳走を吐いてしまうところだった。


父親「甲羅の中に地酒を入れて煮ると美味いんだ」


村長「ここでしか味わえませんぞ」


ボーナスタイム突入。


母親「あら、足がまだ残っているじゃない。もしかしてお口に合いませんでした?」


警官「いえ。この蟹も鳥も野菜も、どの手料理も上等、いや上品な風味で美味です」


母親「あら嬉しいわ。それじゃあ、この残った身も甲羅に入れるわね」


警官「お願いします」


男が羨ましそうにこちらを見ている。

警官は手や口くらい拭けと言って軽蔑した。

ピビは和平ちゃんの口をティシューで拭いてやりながら二人のやり取りを笑って見守っている。


相棒「そうだ忘れていた」


ふと思い出した男は、旅行カバンから、瑞穂の国から持ってきたお土産を幼女に手渡した。

幼女は瞳を大きくして、男の目を薄明光線で潰してやろうというくらいキラキラさせて見上げた。

男はそれを薄目で凌ぐ。


和平「ちーもよ?」


相棒「これは、おりがみ、紙の玩具と言えばいいのかな」


ピビが説明してやると、幼女は大変に興味を持ったようだ。


和平「いぇいいぇい!」


頭をペコリと下げてソファーに走るとさっそく、おりがみの折り方が大きなイラストで丁寧に解説された本を、喜びを表すように足をパタパタさせながら読み始めた。

その本ならば、やまと言葉が読めなくともおりがみを楽しむことが出来るだろう。


ピビ「ボス。いいものを選んだわね」


相棒「他国に何かを模して紙を折る文化はないらしいから丁度いいかと思ったんだ」


ピビ「素敵よ。最高のチョイス」うぃんく


男の心ばかりの贈り物は幼女だけでなく、彼女の家族に村長まで笑顔にした。

まるで朝がはやく来たみたいに明るく賑やかな夜になった。

警官は甲羅の中身をすすりながら、その輝きをいつまでも心に留めておきたいと願った。

やがて晩餐会がお開きになると、一行は薄毛の待つ民宿に千鳥足で向かった。

幼女の家と変わらぬ箱型だったが、二階建てになっており、中はちゃんと部屋が小分けされていた。

薄毛はすっかり茹で蛸になっていた。

受け付け、兼、食堂にあるソファーにもたれかかりテレビを見て伸びている。

酒臭い男三人は交代で簡素なシャワーを浴びると、二階にある一つの部屋に戻り、木の床の上に布団を敷いて薄毛を間に川の字になった。

風邪をひかない程度に冷房をかけ、薄毛がささやいてくれた愛娘ピビの生まれから幼少の思い出話を子守唄にぐっすりと眠った。


ピビ「起きて!朝よ!」


朝早くにピビに額を叩き起こされた二人は羊のような顔で眠る薄毛を残して食堂で簡単な食事を済ませた。


ピビ「和平ちゃんはこの時間、日課の家事手伝いをしているわ」


相棒「幼女はやっぱり偉いな」


そう言いながら男は二人の幼女を思い出していた。

ミニフォンを確認してみたが、彼女達からの連絡は一つもなかった。

怒っているのではなく、それもあるだろうが、とにかく待ってくれている。

女心が少しは分かるようになっていたので、男は後で電話をしようと決めた。


相棒「家事が終われば、道場に集まって稽古が始まるんだったな」


ピビ「あれだけ酔っていたのによく覚えているわね」


相棒「酒には強い方なんだ。こいつと違って」


警官「こいつとは何だ。こいつとは失敬であるぞ」


警官は二日酔いとトキメキ酔いで軽く頭痛がしていた。

心臓がドクドク高鳴っていて危機を感じている。

民宿を一人で切り盛りするおばちゃんが酔いに効くと言って出してくれた苦い茶をチビチビ飲んで治ることを願うばかりだ。


和平「がおかお!」ひょこ


幼女襲来。

矢庭に危機が見当違いの方向から鋭い角度で飛んで来た。

トキメキはいつだって突然なのである。

警官は驚きのあまり椅子ごとひっくり返ってしまった。


和平「ちーま?」


警官「大丈夫だ」


言いながらも警官はテーブルの下で縮こまってしまった。

布製のリュックを背負った幼女は筒のような帽子を被り、ピビと同じくドレスのような銀龍の刺繍が美しい翡翠の民族衣装で武装していた。

端麗なる魅力を纏う幼女をあまり直視しては失明すらあり得るかもしれない。

ピビが幼女の頭を撫でて警官から気を逸らした。


ピビ「迎えに来てくれたみたい」


相棒「分かった。すぐにでも発とう」


男が掠れた声で答えて五分も経たぬうちに、三人は準備運動も許されぬまま朝靄の残る道路へ引きずり出された。

一列に連なって階段を上がったり下ったりを繰り返し肩に掛けたカバンを揺らしながらの過酷なランニング。

幼女に激しく振り回されて、とうとうピビが最初の犠牲者となった。

どうも今朝食べ過ぎたらしく今にも嘔吐しそうだった。

彼女よりも泣いて吐いていっそ何もかも諦めてお家に帰りたいはずの警官はグッと堪えて彼女を優しく介抱した。

池を跨ぐ石橋の中央にベンチがあったので、そこに寝かせてやった。


ピビ「この先にある龍宝寺はもっと危険よ。気を付けて」


警官「何が危険なんだ」


ピビ「高低差……うっ!」


それだけ言って、ピビは池に嘔吐してしまった。

滝のような勢いに一命を案じる。

警官は下着に触れないよう紳士らしく注意しながら背中をさすってやる。


警官「しっかり。すぐ連絡して、お父さんに迎えに来てもらうんだ」


ピビが二度頷いたので、警官はひとまず安心した。

きっと助かると信じよう。


相棒「行きますよ!」


警官「あ、ああ……あああ!」


一難去ってまた一難。

幼女と同じ民族衣装で武装した児童が塊になってこちらへと走って来るのが遠くに見えた。

性別も年齢もまばらだ。

大きい子が小さい子を挟んで迫ってくる。

幼女がそこへ合流しようと手を振って合図を送った。

彼らが幼女の仲間であることは疑いようもない。

幼女があの集団に混じれば可愛さは密に増し、魅力が突発的な小爆発を起こすことは想像に難くない。

男は反射的に走り出した。

遅れて警官も後を追う。

自転車で逃走するひったくり犯を追いかけるような全力疾走だ。


ピビ「ぐはっ!」


幼女がピビの背中でちょうど集団に合流した直後、幼女が起こした小爆発による衝撃波が彼女を襲った。

それを受けて、トキメキに免疫を持つ彼女ですら再び吐いてしまった。


相棒「サングラスを落とさないようにしてください!まだ見慣れない二日目だから、チラ見でもどうなるか分かりません!」


警官「よく分かった!」


警官はサングラスをグッと顔に押し込んだ。


相棒「振り返らないで!」


警官は気になって振り向こうとしていた。

それを間一髪で男が止めた。


相棒「トキメキに足を捕らわれて転んでしまえば幼女と接触することになります」


警官「見ろ。あれが龍宝寺か」


橋の端は村の外だった。

長い階段の先に立派な寺を見つけた。


相棒「この階段を走り抜けるしかない」


警官「キツいな。だが、やろう」


集団が寺に到着して十分くらいは経ったろうか。

龍宝寺と掲げられた門の中へと倒れ込み、おじさん二人は息絶えた。

まるで水分を失った切り干し大根のように萎びている。


熊猫「てめえら大丈夫かよ」


そこへ、背筋が真っ直ぐ伸びた長身の老人が、カタコトしたやまと言葉で話し掛けてきた。


相棒「おみじゅくだちゃい……」


男は水筒を逆さにして掠れた声で助けを求める。


熊猫「てめえらピビが言ってた紅白の野郎か。とっとと中へ入った。頑張れよ」


先に立ち上がった警官が男に手を差し伸べた。

二人は肩を組んで力なく歩き、目前に雄々しく建つ寺の中へと突入した。

そこでは石床の上にクッションを置いて、子供たちが綺麗に並んで座禅していた。

この寺では昇天する銀龍を荘厳し祀っている。

視界を独り占めするほど大きくて、鱗の一枚一枚は煌めき瞬くほどよく手入れされていて美しい。

汗拭きシートの爽快感で気を落ち着かせながらそれに注目していると、老人がグラスを二つ持って戻ってきた。


熊猫「さっさと水飲めや」


相棒「ありがとうございます」


湧水だろう。

でかいグラス、もといジョッキに溢れるほど入った水はよく冷えていてうまかった。

汗拭きシート以上の爽快感をくれた。


熊猫「ここが寺と道場である。いま子供たちは心の悪を浄めた。次に龍になろう」


警官「龍になろう?」


熊猫「そうだろう。龍を昇る。炎で闇を焼く」


相棒「うーん。よくは分からないが、また登ることは分かった」


警官「高低差に気を付けろとピビが言っていた」


相棒「なら残りますか。俺はそれでも行きますよ」


警官「行くよ。子供たちを守るのも本官の務めだ」


老人が呼び掛けると子供達は直ちに集合した。

規律を重んじる子供達の表情はとても凛々しく真面目だ。

老人がみんなに二人を紹介してくれたらしく、子供達は拳を合わせ直角に頭を下げて挨拶した。

二人も見よう見まねで挨拶する。

老人はうんうんと頷いて幼女を召喚した。

ちまちまと駆け寄る姿から放たれる可愛いが二人の胸に刺さってチクリとした。


熊猫「村長に聞いた。てめえら仲良しなら面倒みてもらう」


和平「ひんうぉ!」


満面の笑みを浮かべてガッツポーズ。

許容範囲外のガッツを送られた二人の心は過充電してしまい顔から火が出た。


熊猫「ひんうぉ。頑張ろうだ意味」


相棒「ひんうぉ!」


和平「ひんうぉ!」


教えてもらってすぐ、男は幼女へ躊躇いなくガッツを送り返してみせた。

当然、幼女より反射的反撃とガッツが再び送られるというのにガッツを送ることが出来たのは、彼が誰よりも勇敢で、何よりも幼女を愛して笑顔にしたいと心から望んでいるからだろう。

その想いが程よくエールを放出して顔の火照りを冷ましてくれた。

一方で警官は、二人の仲睦まじい姿を見て嫉妬と劣等感で悔しい思いをしていた。

老人だけが、それを見抜いたかのような眼差しで警官を厳しく睨んでいる。


相棒「まさしくこれだ!俺が求めていた風景は!」


銀龍の裏にある戸口から外へ出ると目を奪われる絶景が広がっていた。

巨大な奇岩群が新緑を突き破り堂々と立っている。

朝霧がその岩肌に沿って、雲からこぼれる暖かな日差しを求めて上っている。

空の果てでは、太陽が雲を押し退けようと燦々と輝いていた。


相棒「うひょひょい!」


男はミニフォンで写真撮影しながら大いにはしゃいだ。

子供たちがそれを見てクスクス笑うほどご機嫌だ。


警官「ははは!まるで子供より子供らしいじゃないか」


相棒「下調べした時からこの風景が見たいと思っていたんだ。ああ、本当に嬉しい」


一行は右に伸びる峠道を進み、間もなく奇岩の割れ目に潜り込んだ。

大人一人がやっと通れる狭く舗装もされていない自然の凸凹道を、足元に気を付けながら上がったり下ったりして螺旋を描くように登ってゆく。

瑞穂の国ではアスレチックでヨウジョフレンズに散々しごかれた男でも、早くに息が切れるほど道は険しかった。

対して子供たちは歌をうたい、互いに助け合い、手足を器用に使って元気よく登っている。

幼女は男の子たちに負けず劣らず逞しく、すれ違う風のように爽やかで疲れなど全く感じさせない。


和平「ひんうぉ!うぉーうぉー!」


幼女はよく振り返り、二人にガッツを送ったり、手を差し伸べたりしてくれた。

初めは指しか掴めなかった警官も、何度目かには小さな手を大きな手で包めるようになった。


相棒「お疲れ様です」


警官「お疲れ様でした。ビビの忠告通り厳しい高低さだったな」


相棒「奇岩の割れ目は、さながら昇天する龍のようでしたね」


警官「その体内を登る俺たちこそ龍の炎というわけだ」


老人「闇は焼けた」


老人は柔らかに垂れた目を向けて話す。


老人「良い顔だ」


警官「ええ。清々しい気持ちです」


竹で作った柵に囲まれた頂で、警官はすっかり晴れた空よりも澄んだ表情をしていた。


相棒「和平ちゃんと仲良くなりたかったんじゃないですか」


男が出し抜けに聞いた。

まったくその通りだった。

警官は頭を掻いてから、小恥ずかしそうに、しずしずと告白する。


警官「仲良くなりたかった。でも、幼女と接したこともなく、幼女の魅力に戸惑うばかりの俺にはどうすればいいか分からなかった。でも、でもだ。どうしたっていいんだな」


相棒「そうです。どうしたっていい。ただ素直に、心のままに接して気持ちを通わせることが出来ればいいんです」


警官は駆け寄ってくる幼女と目線を合わせるために膝を折った。

そして、王子が姫に敬愛を捧げるように幼女の手を取った。


警官「友達、になってくれるかな」


警官はサングラスを胸ポッケにしまいこんで言った。

老人が彼の言葉を訳す前に幼女は言葉を返した。

えくぼの花を一輪添えて。


和平「ともだち!」


寺に戻るとピビが村の人たちとお弁当を用意して待っていた。

友達という言葉は、昨晩、幼女がピビから唯一教わったやまと言葉だと分かった。

幼女が初めに、最も伝えたい言葉として選んだのだった。


ピビ「友達になれて良かったわね」


警官「ああ。昼食後の武術がより楽しみになった」


ピビ「サングラスはかけないで、その目でしっかり見届けてあげてね」


警官「そうする」


とは言ったものの、現実は甘くなかった。

両者の間にあった見えない壁が崩れたことで、幼女の魅力は警官の心へ鋭く重く深く刻まれた。

子供たちが一列になって武術を披露する。

決して拳は握らず緩急メリハリのある、それでも柔らかな所作で次々と型をしっかり決めていく。

幼女が掌を突き出せば警官は腹を抑え、蹴り上げれば天を仰ぎ、足払いをすれば派手に転んだ。

突然の異変に子供たちが何事かと困惑している。


相棒「子供たちが驚いています。堪えて」


警官「分かっている。迷惑をかけてすまない」


相棒が担ぎ上げるように彼の体を起こした瞬間、幼女の高い跳躍力を活かした回転二連蹴りが警官の頬へ炸裂したっぽい。

警官の体はきりもみ状態で宙を舞い、幼女が流れるような動きで踵落としをバッチリ決めると、彼の体は圧力を受けた風に石床に叩きつけられた。


ピビ「きゃ!彼は一体どうしたの!」


警官の目は虚ろで口の端からは涎が線を引いて床に伸びている。


相棒「だめだ!こいつは和平ちゃんにすっかり惚れ込んでいる!」


男はピビにその場を任せて、警官を背負って寺の外へ脱出した。

それから建物の陰へ優しく寝かせてやった。


警官「何が起きた。教えてくれ」


相棒「和平ちゃんに惚れたことで、体が一種の催眠状態に陥っているようです」


警官「がわいがっだ……!」


にわかに警官は叫んで、涙を見せまいと手で目を覆い、不甲斐なさに歯を食い縛った。


警官「すんごく可愛かったあ!」


相棒「でしょうね」


警官「君は、平気なんだな」


男は服を捲ってヘソからむねへと毛が続く筋肉質の腹を見せた。

そこには桃色の小さな手形がポツリと刻まれていた。


相棒「きっと惚気にやられたんでしょう。仲良くなったことで気が緩みましたね」


警官「そうか。のろけか」


相棒「悪いことではありません。幼女と仲良くなれてとても嬉しかったでしょう。その気持ち、よく分かります」


警官「だから腹に一撃を浴びたのか」


相棒「その時にこれはいけないと肛門括約筋を引き締めました」


警官「その臨機応変な対応。さすがだ。歴戦の猛者は違うな」


相棒「あんたも経験を積めばいい。早いも遅いもない。すぐにだって耐えられるようになりますよ」


瑞穂最強のヨウジョ、そして彼女の魅力的な友達と戦ってきた男から貰った言葉はとても頼もしかった。


相棒「ただ約束してください。幼女の魅力は必ず受け入れると」


警官「どういうことだ。いや、単純なことか」


相棒「受け入れないと心が通じることはまずありませんからね。それに相手を理解するためにも大切なことです」


警官「約束しよう。そら、急いで戻ろう」


相棒「待て。石床に体を強く打ち付けた。無理はしない方がいいです」


そこへ幼女が、濡らしたタオルを持って、おずおずとやって来た。

男はその姿を一目見て分かってしまった。


相棒「あの子は自身の魅力の強大さ。そのトキメキによる被害を理解している。俺はそんな大事なことを忘れていた」


警官「可哀想に。俺のせいで自分を責めなければいいが」


相棒「ピビ!」


遅れて、バケツを持ったピビが慌てて駆け付けた。

バケツの重さに負けて転んで、中の水を警官の体にぶちまけてしまったが、なに気にすることはないと一言。

警官は全身びちょびちょになっても、自身よりも幼女を案じた。


ピビ「冗談が招いた怪我だと理解してくれたわ」


相棒「良かったですね。和平ちゃんが自責する事態は回避されました」


警官「あとは俺が元気な姿を見せるだけだな」


ピビ「早まらないで。いま医者を呼んでくるから、このまま安静にしていて」


村医者によると軽い打撲と擦り傷が少しらしい。

幼女も、ほっと一安心した。

彼女に湿布を貼って貰えば、体が動かせるほどに快復した。

武術も再開して、二時ちょいには無事解散となった。

子供たちは老人に礼をすると、うっかり鞄を置いていきそうな勢いで散り散りになって、それぞれに徒党を組み、遊びと称して村を蹂躙した。

彼女は同じ年頃の乙女と茶をしばきに茶屋を襲撃した。

そこは友達の家で、男たちはこれ以上、乙女の世界に踏み入ることは許されないと民宿に一時帰還した。


警官「昼寝をさせてもらう。和平ちゃんの帰宅時間になったら起こしてくれないか」


相棒「分かりました」


相棒は民宿を後にして、ひとり石橋へと向かう。

ベンチでカップルがイチャついていたので、橋の欄干にもたれかかり電話をかけることにした。


メカヨウジョ「もしもし?」


相棒「俺だ俺」


メカヨウジョ「この通話は録音されています」


相棒「詐欺じゃない。俺だ、分かるだろう」


メカヨウジョ「久しぶりですね」


相棒「久しぶり、ことほちゃん。いま何してる?」


メカヨウジョ「みんなと公園で、かくれんぼしています」


相棒「それはごめん。かけ直そうか」


メカヨウジョ「いえ。絶対に見つからないところにいるので大丈夫です」


相棒「そうか。実は俺な、今は大華の国に来ているんだ」


メカヨウジョ「聞きました。急に帰ってきてすぐ出て行ったって」


相棒「悪かった。今度からはきちんと連絡する」


メカヨウジョ「それだけですか?」


相棒「顔も見る」


メカヨウジョ「グッド。それでよろしい」


相棒「なんだかミスリーダーに似てきたな」


メカヨウジョ「そうでしょうか?」


相棒「や、気にしないでくれ」


ケモナ「ことほ、ウメが接近中だわん」


相棒「おいおい、かくれんぼにドローンを使うなんてよくないんじゃないか」


ケモナ「スパイと警察の対決だからスパイは結託していいの」


相棒「ケードロみたいなものか。しかし、それじゃあ警察役のウメちゃんがあまりに不利じゃないか」


メカヨウジョ「警察も部下を従えています」


相棒「なるほど。あいつがドローンとか使って必死にサポートしているんだな。で、なんでそんな高度な遊びをしているんだ」


メカヨウジョ「スリルです」


ケモナ「わん」


相棒「楽しそうだな。俺もまざりたい」


メカヨウジョ「じゃあ、帰ってきてください」


相棒「夏には帰る」


メカヨウジョ「それじゃあ遅い!」


ケモナ「しっー!」


メカヨウジョ「あ、ごめんなさい」


相棒「許してくれ。どうしても今やりたいことなんだ」


メカヨウジョ「むう……」


相棒「そうだ。ロケットを打ち上げるときには博士の側にいるんだろう。その時に会えるじゃないか」


メカヨウジョ「夏に変わりない」


相棒「えーと……」


メカヨウジョ「待ってます」


相棒「うん」


メカヨウジョ「待ってるからちゃんと帰ってきてください。簡単にキュン死にしちゃダメですよ」


相棒「大丈夫。お前より魅力的な幼女なんてこの世界にはいない」


メカヨウジョ「……ばか」


相棒「これからメールだけでも小まめにするから」


メカヨウジョ「うん」


相棒「ケモナちゃん。お願いがあるんだ」


ケモナ「なあに?」


相棒「綺麗な景色をたくさん送るから写真にしておいてくれ」


ケモナ「はーい!」


相棒「ありがとう」


ケモナ「わん!」


相棒「じゃあまたな。二人とも、警察なんかに負けるなよ」


そこで電話を切り、池の水面を見つめて呟く。


相棒「俺は警察が嫌いなんだ」


ピビ「どうして?」


相棒「ピビ」


ピビ「ごめんなさい。和平ちゃんのところに出掛けたのかと思って探していたの」


相棒「あちゃー、また連絡ミスだ」


ピビ「気を付けてねボス」


相棒「悪い悪い。報連相は腐らせちゃいけないよな」


ピビ「それで、どうして警察が嫌いなの?良かったら教えて?」


相棒「態度が悪いから」


ピビ「それだけ?」


相棒「それだけ」


ピビは困った顔で笑った。


相棒「でもいまは、少し見直した。幼女を守る仲間として認める」


幼女の帰宅の連絡が男のもとへ届いたのは日が傾きはじめた頃だった。

茶屋から民宿へと電話があった。

男は警官を叩き起こして、ピビを連れて現場へ急行する。


相棒「いたぞ!幼女だ!」


幼女は木のベンチに腰掛けて友達とお喋りしながらお迎えを待っていた。

いつも一人で帰るところを、今日はお願いしてわざわざ待ってもらった。

紅白の人間がいて、万が一に何かあってはならないためだ。


警官「さっき決めた通り。ここは俺に任せてくれ」


男は、幼女オススメの焼き餅の味を噛み締めながら、大人しく物陰から見守ることにした。

ピビは不安そうに、ぼそぼそと、幼女が好む草餅を食んでいる。

また倒れやしないかと心配なのだ。

その想いと餡が口元からポロッとこぼれた。


ピビ「ねえ。やっぱりボスも行くべきよ」


相棒「あの人が決めたことだ」


ピビ「心配だわ」


相棒「仲間なら信じろ」


ピビはすっかり飲み込んで頷いた。


相棒「あいつならやりきる。俺が認めた男だからな」


警官が幼女に接触した。

男に借りた紅白支給のミニフォンに標準搭載されている通訳機を利用して会話を試みる。


警官「迎えにきたよ」


通訳機が変換した言葉を滑らかに伝える。

幼女は驚いた後、好奇でおめかした顔でミニフォンの画面を指で突いてみた。


警官「そう。これに話して」


和平「おじさんひとり?」


警官「一人だよ。でも心配はない。おじさんは警官なんだ」


言葉が通じたのが嬉しい幼女は、くるりと回って喜んだ。

それから手を繋いで「帰ろう」と微笑んだ。

警官は手を繋いだことで意識が飛びかけた。

心が通じたのが嬉しく、ぐるりと白目になって悶絶した。


相棒「トキメキにやられると、誰でも白目をむくんだな」


ピビ「心当たりがあるの?」


相棒「ふっ、遠い昔にな」


幼女に手を引かれて意識を取り戻した警官は、母親に連れられる息子のように後をついて歩く。

しかし、身の上話を交わしてさらに心の距離を縮めたことで隣に並んで歩けるようになった。

そこですかさず、彼は意識を仕事モードに切り替えて、自意識を強く保ちながら、すれ違う人々から然り気無く幼女を守り抜いた。

階段や石畳の一部が壊れて盛り上がった段差などに躓かないようにも、十分に気を付けて注意を怠らなかった。

かくして、完璧なエスコートで幼女を目的地へと護送することに大成功した。


和平「あんよん!」


警官「あんよん!」


体ごと大きく手を振る幼女が玄関の戸を閉め鍵をかけるまでしっかり見送った警官は、満足気な表情を浮かべ誇らしそうに胸を張り、ちょいと浮き足で二人と合流した。


警官「任務完了だ」


警官が敬礼すると男は背筋を伸ばして返礼した。


相棒「やりましたね」


警官「彼女がどうして、俺達おじさんなんかと友達になってくれたか分かったよ」


相棒「その理由は何です?」


警官「彼女は誰とでも友達になりたいと常に思っている。いつかは異星人とも友達になるつもりだ」


相棒「異星人ともか……俺もなれるかな」


警官「望むならなれるだろう。君は俺と違い奇跡を起こせる男だ」


相棒「大げさですよ」


警官「いいや。そんなことはない」


相棒「急に過大評価されても困ります」


警官「世界を救った君は俺が認めた憧れなんだ。自信を持ってくれ」


相棒「分かりました。どうもありがとうございます」


はにかみながら手を結び友情が芽生えた二人。

翌日、翌々日、最終日と切磋琢磨して、より逞しくなっていくのをピビは側で見て感じた。

子供たちに混ざってランニングを完走することが出来るようになったし、岩山登りも子供たちを手助けしてやれるほどに余裕が出来た。

幼女が武術を披露すれども体に魅力が刻まれることもなく、心地よくトキメキするようになった。

彼らは短い時間のなかで、幼女だけでなく、彼女の愉快な仲間みんなと親睦を深めた。

修練の後に幼女や子供たちと戯れる時間は疲れた体を元気に癒してくれた。

すっかり甘えてくれるほどなついてくれた。

そして最終日には、再び幼女の家で晩餐会が催された。

お別れ会なのに、歓迎会と同じくらい、いやそれ以上に楽しく盛り上がった。


優しい家族が好き、一緒に頑張れる友達が好き、お世話してくれたムジゲの仲間達が好き、自然に囲まれた村が好き、鼻がみょーんてしたアリクイが好き、温かいお茶が好き、町に降りて食べるハンバーガーが好き、濃い赤が好き、大きな牡丹が好き、のんびりお喋りするのが好き、元気になれる武術が好き、かわいい折り紙が好き、遠いところから会いに来てくれたあなた達が好き。


幼女は夜遅くまで、目を擦りながら眠いのも我慢して、たくさんの好きを教えてくれた。

だから名残惜しくも、お別れは涙がなく爽やかだった。

和平ちゃんが贈る言葉。


和平「ずっとともだち」にこっ


終わりに披露された幼女と子供たちによる合唱は友達をテーマにした歌だった。

ピビがわざわざ意味を教えてくれなければ泣いてしまうことはなかったろう。

旅立ちはにわか雨のように、それでも過ぎれば晴れやかだった。

これから新たな幼女との出逢いがまだまだ待っている。

幸福は一瞬だけれど不滅だと知った。


相棒「ピビ。この国の幼女は幸せか?」


ピビ「ええ。幸せよ」


相棒「なら確かめに行こう」


それから男たちは半月ほどかけて、都会から田舎へ、田舎からまた都会へと各地を忙しく巡った。

幼女が「しあわせ」であることを確認するためにとにかく奔走した。

薄毛が就寝前に囁く娘の自慢話も進んで、いよいよ婿探しの相談になった。

僅かな時間でも、一人でも多くの幼女に出逢うために心を鬼にして薄毛を酷使した。

運転に疲れたのか、それとも婿探しを諦めたのか、とうとう薄毛はイビキをかいて熟睡してしまうようになった。


相棒「これ以上は迷惑をかけられないな」


とある夜、ホテルの一室。

男は都会の明かりを見下ろしながら、数日前に民宿で雑魚寝したときに見てしまった薄毛の枕周りにパラパラと散る頭髪を思い出しながら誠に申し訳なく思っている。

未だ焦燥に駆られて不眠が続いていた男はホテルのロビーへ下りた。

人がいなかったのでソファーに寝転び、薄毛に対する申し訳なさと、幼女に会うために必要な現実的な時間を照らし合わせて大きく溜め息をついた。


ミス「どうしました?こんな夜遅くに」


男はミスリーダーに電話をかけた。

夜遅くに悪いなと思いながらもかけてしまった。


相棒「いや、声が聞きたくて」


定期報告と嘘を吐こうと思っていたのに、自動販売機から蟹が出てきたのと同じタイミングで本音が出てきてしまった。

もうまともじゃないかも知れない。

男は蟹を持て余しながら、ミスリーダーの笑いが収まるのを待った。


ミス「声が聞きたいだなんて、嬉しいこと言ってくれますね」


男は恥ずかしくて話を逸らすようにきく。


相棒「二人はもう寝ましたか?」


メカヨウジョとケモナには、就寝時に巣を離れてミスリーダーの隣で寝る習性がある。

彼女たちが起きることを心配した。


ミス「大丈夫。朝まで起きることはありません」


安堵した男は素直になって相談した。

時間がないことと薄毛に申し訳ないこと。

これまで出逢った幼女の可愛さもしっかり伝えた。


ミス「大華の国を、そろそろ発ってはどうでしょう」


相棒「そう思っています。半分もまだ巡っていないけれど、そもそも全土を巡ろうなんて無理があったかも知れません」


ミス「真面目ですね。大華の国は世界的にみて国土が三番目に広大なのはご存知でしょう。時間に余裕のない現在、全土を回ろうなんて、それははっきり言って無茶です」


相棒「やっぱりそうですよね。でも、出来るだけ多くの幼女に会いたいんです」


ミス「幼女は、その国にしかいないわけじゃないでしょう」


相棒「確かにそうなんですがね。この国は一人ぼっちの幼女が特に多いんです。彼女たちに、和平ちゃんのように友達がいるかなんて、この目で見なくちゃ分からないじゃないですか」


ミス「私が大華の国の本部に連絡して訊いておきます」


相棒「でも……」


ミス「どうしても自分の目で見なきゃ不安ですか?」


相棒「え?」


ミス「あなたの気持ちは分かります。あなたは部屋に籠り、ネットを介して幼女を見守っていた人。だから、不安になってしまう気持ちはよく分かります。自分の目で見てみなくちゃ現実がどうかなんて分からないですよね」


相棒「そうなんです。ネットだけだと見逃す現実もあるかも知れない」


ミス「でも、現実的に見て回ることは難しい」


相棒「だから、もう、ワケわかんなくて俺」


ミス「改めて信じてください。仲間を」


相棒「仲間を信じる」


ミス「あなたはチャイルドシートのボスとして活動していた時、同じ不安を感じていましたか?」


相棒「いや……ん……そんなに?」


ミス「それは仲間を信じていたからです。あなたは現在、懐疑的になっています。幼女との戦いで悲しい現実を目の当たりにして、幼女が苦しんでいると痛感して、だからこそ幼女を必死になって救った。それでも本当に救われたのだろうか、世界に生きる幼女は幸せだろうか、思い遣るほどに不安が増している」


相棒「その通りです。何もかも疑わしく、かなり不安です」


ミス「でもあまり心配しすぎないで。私たちやお巡りさんやピビさん、それから幼女を助ける人たちは世界どこにだっています。みんな仲間です。あなたが、たったいま話してくれたじゃないですか」


相棒「……そうか。世界どこにだって幼女を助けてくれる人達は必ずいるんだ。みんな仲間なんだ。和平ちゃんの村でもそうだった。巡ってきた場所でもそうだ。幼女たちは愛に守られて笑って生きていた」


ミス「少しは、あなたの助けになれましたでしょうか」


相棒「助かりました。ありがとう、ミスリーダー」


ミス「いえいえ。私はあなたの上司だから当然のケアをしたまでです」


相棒「ケア……ヘアー……あ」


ミス「薄毛……こほん。ピビさんのお父様のことが最後の気掛かりですね」


相棒「酷いことをしました」


ミス「なら、ちゃんとごめんなさいしなさい」


相棒「うん」


ミス「そして、ちゃんと労ってあげてください」


相棒「感謝の気持ちを込めて、豪華な食事を振る舞いたいと思います。あの人はお酒が好きだから」


ミス「それがいいでしょう。ということで一件落着かな。もう何も気掛かりはありませんね」


相棒「お陰様でよく眠れそうです」


ミス「ふふ、良かった。また何か困ることがあれば遠慮なくいつでも電話してくださいね。もし声が聞きたい時でも構いませんよ」


相棒「おやすみなさい」


早口に言って電話を切った。

ミスリーダーが発した最後の言葉にドキマギしている。

こんな気持ちは初めてだった。

と、ミニフォンに一枚の画像が送られてきた。

ケモナのヌイグルミを抱いて眠るメカヨウジョの寝顔が写っていた。

手に持つ蟹からメキッという可哀想な音がした。

追加でメッセージも送られてきた。

「おやすみなさい」

その一言がとても愛しいと感じたのは二度めだった。


相棒「みんな。突然だけれど、この国での旅は今日を最後にしたいと思う」


翌朝。

近くの喫茶店でモーニングを食べ終わりコーヒーを飲んでいた男は不意に別れを告げた。


相棒「この国を発って、明日には次の国へ行く」


ピビが目を丸くしてスティックシュガーを机に溢す。

薄毛が、さっと彼女のカップを滑らせた。


ピビ「本当に突然ね。一体どうしたの?」


相棒「なに、満足しただけだよ」


ピビ「そう。でも、あまりに突然で寂しいわ」


そう言うピビの瞳には、彼女と同じく寂しい顔をした警官が映っている。


相棒「最後まで勝手で、わがまま言ってごめん。でも、はやく別の国の幼女に会いたいんだ。幼女に会いたいだけじゃない。これからの準備がしたい」


ピビ「これからの?」


男はテーブルに身を乗り出して小声で話す。


相棒「俺は宇宙へ幼女に会いに行く」


薄毛「ああい!?」がたっ


相棒「しっ!座って!これは人類にとっての最重要機密です」ひそ


薄毛「嘘じゃないのかい?映画の撮影じゃあないのかい?」


相棒「事実です。しかし、公表されることはありません」


薄毛「ううむ。何か面倒事が起こりうるかも知れないからかな?」


相棒「そういうことです。今日は朝からよく喋りますね」


薄毛「まあ、宇宙は誰のものでもないからね。万が一にそこかしこの国が主導権を争うことになっては幼女が再び悲しむことになろうよ」


相棒「だからこそ、世界で最も中立の立場にある、人類が協力して組織した紅白が解体される前に会いに行くのです」


薄毛「やあ、向こうからメッセージか何か届いたの?」


相棒「届きました。池球にない宝石がジーランディアを囲む池に落とされ、回収すると中に紙のように薄い物質が入っていて、やまと言葉が刻まれていたそうです」


薄毛「やまと言葉を知っているのかよ!」


相棒「俺も驚きました。高い知能を持っているようです」


薄毛「それで、なんと書かれていた?」


相棒「端的に言いますと、月の裏で待っています。別れの前に話をしたいそうです」


薄毛「別れ?」


相棒「そのことについては何も分かりません」


薄毛「だが、別れと言うにはファーストでファイナルのコンタクトになるね」


相棒「ザッツライ」


ピビ「なら、池球人同士も異星人とも争わなくて済むわね」


警官「何はともあれだ。いつ行くんだ」


相棒「夏、七月かな。七夕がちょうどいいって話はしてる」


警官「あと一ヶ月ちょっとか。それで君は落ち着きなかったんだな」


警官は、分かっていたぞという風に男の肩を二度叩いた。

ピビも頷いて笑う。


ピビ「私も分かっていたわ。ボスが何か焦っていたこと。でも、今はそうじゃないみたい」


相棒「俺の焦りは、幼女が幸せだという現実をこの目で確認出来ないことに対してだった。でも、昨日の夜にミスリーダーと電話で話して、世界で幼女を助ける仲間を信じることを言われて、とりあえずは落ち着いた」


ピビ「まさか、この国の幼女みんなに会うつもりだったの?」


相棒「みんなは無理だ。それでも、全土を回りたいとは思っていた」


ピビ「無理と無茶ね。一言でも相談してくれれば良かったのに」


相棒「ごめん。本当にごめん。お父さんに苦労かけたこと、ピビに相談しなかったこと、最後まで付き合わせて大きな迷惑をかけたことを謝る」


男が頭を机に打ち付けて謝罪すると、薄毛が、まるで息子に接するように彼の頭を柔らかく撫でた。


薄毛「楽しかったよ。みんなとの旅」


ピビ「そうね。楽しい思い出が出来たから、まあいいわ」


相棒「二人とも。こんな俺を許してくれるのか」


薄毛「人の思い遣りを責めることは誰にも出来やしないよ」


ピビ「お父さんの言う通りよ。私達だって同じ想いだし、だからこそ旅に同行してきたんじゃない」


警官「こほん。俺もそうだぞ」


相棒「みんなありがとう。本当の本当にありがとう。今日は、どうか感謝の労いをさせてほしい」


薄毛「気にしなくていいよ」


相棒「いえ、させてください。昼食に美味しいお酒を飲みましょう」


薄毛「あいさ。それなら喜んで」にこっ


ピビ「もう、お父さんてば」くすくす


昼食までは各々、ゆっくりと部屋で休むことにした。

時間がきて、予約していた近場のレストランで贅を尽くした料理の数々を堪能する。

薄毛は唐辛子と区別がつかないくらい顔を真っ赤にして酔っている。

満足してくれたようだ。

みんなで楽しかった思い出を振り返ると舌がよく回った。

いつの間にか料理よりも思い出を堪能していた。

そして気が付けば夜だった。

男は川のほとりへと涼みに行く男女の背中を見守ってから、薄毛を部屋に引きずって運んだ。

薄毛は安らかな顔で眠った。

優しく白いシーツをかけてやる。

愛しいとは全く思わないが、彼の子守唄がもう聞けないのは少し寂しかった。

男は部屋へ戻り、荷物と気持ちを黙々と整理した。


相棒「おはよう。みんな」


みんなとは言ったが薄毛はそこにいない。


ピビ「もう行ってしまうのね」


その言葉は男ではなく警官に向けられている。

二人は道連れに密かに恋をしていたのだった。


相棒「残っていいんだぞ」


警官「馬鹿を言えよ。悪いが、俺は真面目な男なんだ」


ピビ「ボスと同じね」


男たちは顔を見合わせ声を揃えて「一緒にするな」と怒鳴った。

まるで兄弟みたいに。


ピビ「すっかり仲が良くなったわね」


相棒「それはピビ達の方だろう。まったく気が付かなかった」


ピビ「気を遣わせたくなかったし、それに仕事中だし」


相棒「仕事とプライベートの間みたいな曖昧なものなんだけどな」


ピビ「いいえ。立派な仕事よ。たとえ契約がなく無償でも、幼女のために働くなんて素敵なことだわ」


その言葉も、やっぱり男ではなく警官に向けられている。

見せつけられて男は居た堪れなくなった。


相棒「じゃあな、俺は先に行く。バスの時間に遅れるな」


ピビ「ボス!」


別れも言わず歩き出した男をピビが呼び止める。


ピビ「またね!あんよん!」


相棒「ああ。次は結婚式で会おう」


ピビ「ま、結婚式だって」


警官「どっちが先になるかな」


ピビ「え?」


警官「何でもない。それより今は君と別れを惜しみたい」


ピビ「私もよ。時間いっぱいね」


男がホテルを出ると、いよいよ夏が始まり、外は乾いた熱気に満ちていた。

陽光も肌を突き刺すように激しく照っている。


相棒「やれやれ。熱々だな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ