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喰らい愛  作者: オーバーヒーター
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キエルセカイ

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バケモノ....外宇宙に高度な文明を築く生命体。群体生物であり個という概念が薄く、お互いを喰らい合い情報を取り込むことをコミュニケーションの手段としている。彼らの生命維持に必要なものは脳に蓄積された情報であり複雑な情報ほどエネルギー効率が高い。また、情報の偏りを防ぐために別の宇宙から知的生命体を転送トラップで捕獲して喰らうような行動も頻繁に行われる。


インド....急激な産業革命により2038年では世界一の技術大国となった。宇宙開発の中心国でもあり極秘で宇宙資源の軍事利用について研究を進めている。


ブラーフマナ....インド最大の宇宙船。バケモノのトラップに掛かり彼らの宇宙へ転送されるも大量の核弾頭によりバケモノを殲滅。転送トラップを解析し帰還する。



「ここはどこ?」



さっきまで世界を包んでいた白炎はどこへ行ったのだろう。


数時間前、足の少ない生物に使役された金属の鳥が私達の世界に無数の種を吐き出して去っていった。その種から炸裂した熱量と衝撃波によって私の脳と内臓は確かに機能を止めたはずだった。


しかし、私は生きて地に立っている。それも私のよく知るの純水なダイヤモンドの大地の上ではなく、酸化したアルミニウムやカルシウム、ケイ素等で形成された異様な大地だった。しかもその向こう側一帯は水で満たされている。


異様な世界に対しての驚きはあるけど生きていることに対する感動はない。(そもそも私の種族間に於いて感動という概念はデータ上の知識としてしか存在しない)


だけど生きなければならないの。だって生きているのだから。

生命体に於いて生存本能より優先される項目などありえるはずがない。例えそれがいくら高度に進化した知的生命体であっても。(少なくとも私が現時点までに保持しているデータの中には存在しない)



私は自らの本能に従って生命維持活動を始めた。丁度隣で鋏のようなものが生えた物質が動き回っていたので触手を突き刺して解析してみる。恐らく生命体だろう。

不要な部分を強酸で溶かし脳にあたる部分を補食した。やはり大きさ相応に「情報量」は不十分で主食として選択するはあまりに不適切だ。


私たちの種は様々な外宇宙で捕獲した知的生命体の脳を喰らいその後にお互いの脳を喰らい合うことで生命維持と情報共有を効率的に両立させていた。知的生命体の脳以外を補食したことはなかったがこうも「栄養」が足りていないとは。少々予想外の事態だった。


できるだけ脳の発達した生物を探そう。

私は水中の鱗を持った生物に触手を突き刺しながらそう考えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次のニュースです

一年前から行方不明となっていたインドの有人宇宙船「ブラーフマナ」が先日奇跡の帰還を果たしました。


制服に腕を通しながらテレビを何気無く眺めると、そこでは浅黒い肌で強面の男が誇らしげな表情でインタビューに答えている。

その威圧的な声と肌に不釣り合いな白すぎる前歯に少し不快感を覚えつつも、僕は彼の話す壮大なストーリーにのめり込んでいた。


なんでも外宇宙に流れ着いてエイリアンと闘い、未知の物質を持って帰ってきたとか。


「きっとジョークか翻訳家の誇張表現だろうな。」


そう思いながら一人微笑む。こういう夢の大きい冗談は嫌いじゃない。他人の冒険譚や夢物語に自己を投影してスリルや快感に浸るのが幼い頃から好きだった。


「海!学校は!?」


鋭い女性の声が僕の物語を遮る。僕の母さんだ。母さんは年の割に綺麗だけど少々完璧主義すぎるきらいがあっていろいろ寛容な僕とはあまりそりが合わなかった。


「今から行くところだって!」


定番すぎる返答に思わず自嘲しながらも逃げるように家を飛び出した。


駅のホームにつくと相も変わらずいつもの2人が待っている。


「また寝坊かよ!?どんくせえな」


この体も声もデカい男は同じクラスの滝山錬太郎。俺と同じ帰宅部にも関わらず、凄まじい運動神経と馴れ馴れしい性格でスクールカーストの上位に君臨しているちょっと鼻に付くやつだ。少なくとも、悪いやつじゃないんだけどさ。


その横で無言でスマホを弄っている男が川崎翔大。滝山の幼馴染だ。陰気な性格なためかカーストは低めだが成績は毎回トップクラスで滝山と仲がいいため悪く言われるようなことは少ない。


「ったく!今日は海外から転校生が来る日だってのにお前らときたら....」


そう言ってふてる滝山の方をよく見たら髪の毛を申し訳程度にワックスで固めていた。こいつのそういうわかりやすすぎるところはかえって好感が持てる。


あそこまで張り切っている人間の話題を流すのも少し申し訳ないので定型文の様な質問を返した。


「そう言えばそういう話もあったな。ちなみに男?女?」


まあその答えはあいつの頭髪に書いてあるんだけど。


「女だよ。もっとも、僕たちのクラスに来るとは限らないけどね」


質問に答えたのはまさかの川崎だった。それもなかなかにハードな形で。お前横の男に恨みでもあるのか?その現実的な答えを突き付けられた滝山の顔は親にサンタクロース等いないと教えられた子供のようで少し可哀想だった。


「来ねえと決まったわけでもねえだろ!!」


「期待しすぎるのも良くないでしょ」


「夢くらい見させろよ!!」


電車内で喧嘩するなよ....全く、こいつらは仲が良いのか悪いのか。


そうやってたわいもないやりとりを続けている内に学校に到着した。


さっきまで二人のやりとりを無関心を装い傍観していた俺だが、やはり転校生に対して多少の興味はある。


もし同じクラスに来るなら可愛い娘がいいな。


俺は胸に淡い期待を抱きながら朝礼のベルを待った。







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