17.終わりかよ
「佐藤雅之さん、お気の毒ですが、あなたは亡くなられました……」
なにもない白い空間。ただただ白い……。
(……………)
手を見る。
……手が無い。
………何もない。
…………とうとうガイコツの体も失ったか。
前を見る。
男だ……。
女神じゃない。
(どういうことかな?)
もう慣れた。
さあ話を聞こうじゃないか。
「私は宇宙の管理者。……言ってみれば女神たちの上司にあたります。宇宙神、とでもお呼びください」
(それで?)
「最後に世界樹を吹き飛ばしたあなたは、ただの意識だけになったのです」
(そんな俺を呼んでどうしようと)
「お礼を申し上げようと思いまして」
男は深々と頭を下げる。
「御承知の通り、世界の管理に正解はありません。女神たちが毎日、四苦八苦しながら、世界の管理を行っていますが、なかなかうまくいきません」
(………)
「しかし、その中で、あなたは一つの正解を、いくつも示された。迷っている女神たち、道を誤っている女神たち、それぞれを助けて、より良い世界を作ろうと尽力なされた。そのことに対して、私はあなたに感謝をし、お礼を言いたいのです」
(ずいぶんひどいことをしました。女神の教会を潰したこともあったし、女神を失ったり、最後にはとうとう女神を滅ぼしてしまいました……)
「正す者、止める者が必要だったのです。よくやってくれました」
男は、俺に笑いかける。
「ささやかながら、報酬を差し上げたい」
(……どのような)
「あなたはこれまで五つの世界を見た。その世界のどれか一つに、戻してあげましょう」
(いままでの世界……?)
「はい。一つは、あなたがいた地球の世界で、すべての記憶を失い、赤ん坊からやりなおす」
(………)
「もう一つは、最初の異世界に戻る。あるいは二番目、三番目、そして先ほどまでいた四番目の世界。お好きな世界に戻してあげましょう。あなたの望む姿で」
(………………)
「さあ、願いなさい。戻りたい世界を」
(……………………)
暗い。
暗いぞっ!
なんだここ?
ごつっごつごつっ。
体が当たる。
妙に狭い空間。身動き取れないじゃないか。
ぐっ……力を入れる。
ぎしぎしっ。
なんだこれ、木箱か?
重いな!!
なんだよここ。
ばこっ!!
力を入れたら蓋が持ち上がった。
土が入ってくる。
ぺっぺっ……。なんだよここ。
ぐあああああっ!!
足を持ち上げ、蹴り上げる。
どごんっ!!
うわっ猛烈に土がかぶさってきた。
なに俺埋められてるの?
なんで――――!!
起き上がる。
どんっ!
木の板を手で払いのける。
明るい。
光だ!
なんだこの大量の土は!
軽くなった。
立ち上がる。
のそっ。
眩しい。白い。
目が慣れない。
ぱちぱち。瞬きする。
少しずつ、見えてくる。
「な……な……な…………」
なんだおいずいぶん大勢いるな。
「ま、マサユキ!!!」
なんだよカーリン、尻もち突いて、口開けてあわあわしやがって。
四天王? 元気だったか?
あいかわらず5人いるのか。
トーラス陛下、ヒルダーさん。久しぶりっす。
全員真黒な服着て、なにやってんのみんなで。
「やあ」
「お、お、お主、生き返ったのか?!」
「ん?」
見回す。
墓地だ。
墓?
俺の墓?
手を見る。
俺の手だ。
ホネじゃない、ほんとうの俺の手だ。
袖、魔界風貴族服。最初に葬られたときのままだ。泥だらけだけど。
腰………長いこと愛用していた十手がある。
なぜか、魔剣ルシフィスも。
「ねえなんでみんないるの?」
「おぬしの三周忌じゃっ!!」
「貴之! ナーリン! おっきくなったな――っ!!」
カーリンにしがみついて俺の二人の子供が泣きそうになってるよ。
「こ……こ……この…………」
喪服を着てベールをかぶった未亡人の魔王カーリン。
顔がゆがむ。泣きそうな、嬉しそうな。
「馬鹿者が――――っ!!」
――――本当にEND――――
最後までご覧くださり、まことにありがとうございました。
初投稿の一作目から、幸運なことに読者が付き、続編を書くエネルギーとなりました。偉大なる先人により完成されていたテンプレの異世界の中を、時にはお約束を守り、時にはお約束を壊し、思う存分暴れられた4作品となったことを読者のみなさま、異世界転移というジャンルを確立された先人の作家の皆さまに感謝をしたいと思います。
本当にありがとうございました。
また、多くの作品を読んでから、これを書き始めたというわけでもないので、ネタ的にかぶっている物、すでに同じアイデアの作品があるなど多数あるかと思いますが、お許し願えれば幸いです。
物語を最後まで書きあげる喜びを、完結させることができた達成感を、多くの作家の皆さんに共有していただければ幸いです。
――――ジュピタースタジオ――――
※続編「理系のおっさんが物理と魔法で異世界チート5番外編」もよろしくお願いいたします。