表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

16.ここでお別れかよ


「聖剣が……」

 あいちゃんの手から、聖剣が消える……。

「役目を終えたのか。これでもう本当に、魔王が倒されたんだな」


「……お別れを言いなさいって」

「世界樹が?」

「うん、たぶん」


「ここまでちょうど十日。夏休みが終わるまでにはギリギリだったかな」

「うわー……それ考えると面倒! 宿題やってないしーっ!」

「ははははは! いや、案外戻ったら、時間全然たってなくて、いつも通りベッドの上で目覚めるかもしれないよ!」

「うえ――、それももったいないかも」

「いい夏休みになったじゃないか」

「うん、ほんとうに!」


 ……あいちゃんが涙目ですね。

「異世界に来て、勇者になって、ドラゴン倒して、ミスコンで優勝して、魔王倒して……」

「……」

「……死んだと思ってたおじさんに会えた」

「……誰にも言うなよ?」

「……言っても信じてもらえないしぃ」

 ははは……。


「でも、おじさん、元気でよかった。もうお墓参り、行きたくなくなっちゃったぐらい」

「元気じゃないし、お骨だし、墓参りはやって」

「どうせ親に連れてかれるけどね」

「頼むわ」

「おじさん、いつかちゃんと成仏してね」

「ああ」

「それちょうだい!!」

「これか?」

 仮面の執事の、仮面を脱ぐ。


「ナイフが欲しいと言うと思った」

「だって、これから使うでしょ?」

「任せろ」

「お願いね。魔王、かわいそうだったから……」

「うん」


 ぎゅっ。抱き着いてくる。

 抱きしめる。

 俺の姪っ子。

 小学三年生だった、あのあいちゃん。本当に大きくなったね。


「えへへへ……」

「俺も面白かったよ。いい女になれよ」

「はいっ!」

 そう言って、俺のマスクをかぶって、敬礼する。

 マスクの下から、涙がぽろぽろ落ちてゆく。

「じゃ! ほんとにありがと! おじさん! 大好きだよ!」


 ……そう言って、あいちゃんは消えてしまった。



「……いい子だったな」

 うん、俺の女子高生嫌い、これで治ったかもしれん。



 さ、最後の一仕事、行くか!


 石造りの玉座を崩す。風化魔法の【ウェザリング】で。

 地下までの階段が現れる。

 それを、降りてゆく。


 一時間は降りたか。広場に出る。

 暗い。

 【プラズマボール】を白熱させてから打ち上げて、照明にする。

 洞窟のばかでかい空間に、世界樹があった。

 こんな暗い、日も当たらないところで生い茂って、なんの意味がある。

 こんなところから世界が見えるもんか。

 葉っぱなんて全部白いじゃないか。

 日に当たってないから、そんな歪んだコントロールしかできないんだ。



『あなたは何者ですか?』 

「勇者の執事です」

『執事……?』

「要するにパーティーメンバーです」 

『……魔王は倒されたのでしょう。何の用です』

「女神ファルテス、アンタに用がある」 

『……』

「これ以上世界に手を出すな」 

『……なぜ?』

「人間が人間らしく生きるためだ」 


 ざわざわ……。世界樹の葉がざわめく。

『より良い世界の実現、善良な人間だけによって作られた理想郷。私の目指すものはもう少しで、それは完成するのです』

「あと何人の魔王と、勇者を犠牲にしてだ?」 

『あと少しなのです。邪魔をしないで』

「いや、邪魔させてもらう」 

『邪魔をするなら、あなたに消えてもらいます……』

「消してみろ」 

『……』

 ざわざわ……ざわざわ……葉がうごめく。

 きゅるるるるるる……風が渦巻く。


『なぜ! なぜあなたは!』

「命なら、もう前世の世界樹にくれてやった」 

『なぜ存在できるのです!!』

「血も肉も全部くれてやったわ」 

『あなたは何者なのです!?』

「全てを前世の世界樹にくれてやった、搾りカスさ」 


 きゅうううううううう――――んんっ!!

 圧力上げ、非常弁全閉鎖、回路開け、安全装置解除。

 水蒸気発生。

 波動エネルギー強制注入、エネルギー充填120%、最終セイフティ解除。

 ひゅんっ 直径30cm臨界水素発生。核融合準備完了。


『何をする気です!!』

「【ペタファイアボール】」


 ……。

 








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ