第十話 勝利 の 余韻
「ここ・・・何処だ・・・」
辺り一面が白い、ここは病室だ。あの後の事は覚えてない・・・
「起きたね?」
病室のドアから亜里亜が入って来た。
「亜里亜・・・俺・・・は?」
渚は呆然としながら亜里亜に尋ねた。亜里亜が言うには都庁を制圧した後、「紅月」から降りてすぐに気絶したと言う。
「やっぱりか・・・」
渚は俯きながら呟いた。こんなすぐに影響が来るとは思ってなかった。渚はベッドから降りて格納庫に向かう。
格納庫はかなり活気が漲っていた。都庁を制圧した喜びの反面、かなりの犠牲が出た。これは隠しようのない事実、それにかなり機体が破壊や破損している。ファリナの「月島」の損傷はナイトメアにとってかなりの致命傷だった。
「応千、「月島」の様子は?」
「渚出てきて大丈夫なのか?」
「そんな事より「月島」の様子は?」
「見たとおり、左腕は切断されてるし頭部は潰されている」
応千の言うとおり、「月島」はかなりのダメージを請けていた。特徴だった対機動兵器用刀「豪熱」、その刀さえも折られている。だがこの機体は「バリスタ」にも対応できる用に渚が設計した機体。七武衆の機体にも対応できるはず、今回の敗因はファリナの操作技術でもなく「月島」の機体性能が悪い訳ではない、まだファリナと「月島」の相性が悪いだけ。
(もう少し、データが必要か・・・)
渚は簡単な指示を出すと、「紅月」が収容されている格納庫に向かった。
「ではこの紅い機体は我ら七武衆に匹敵する程の力を持っていると?」
そう尋ねるのは日本軍の副提督でありながら七武衆の一人・草壁豪
トオルたちはあの後、元本部がある富士山基地に避難していた。
「はい、現に我々の機体はその機体が触れた瞬間、爆発しました。」
トオルは豪に向かってそう述べた。豪は七武衆の隊長でもある、トオルの上司に当たる存在だ。
「確かにな、データや戦闘記録を見る限り紅い機体は何か特殊な装備をしているようだ。お前達はもうよい、下がれ!」
トオル、藤堂、白河の三人は一礼し指令室を後にする。
「お前、この機体をどう見る?蛍」
「特殊・・・装備・・・戦って見ないと分からない・・・」
豪の隣に居た少女がそう述べた。その少女も七武衆の一人・臣獄寺蛍
「これこうじゃない!それはこれをこうして!」
活気が漲るナイトメア、統率力があるのは渚のみ、由井にも多少はあるものの少し信頼出来ないのが本音だ。さらに多くの機体が破損している。もう一人、統率力が欲しい所。
「物資はこっちだ!」
指示を常にだす。今の渚にはかなりきつい事だ。
「トオル、いいのかよ。これじゃ草壁のおっさんの思う壺だぜ?」
藤堂がトオルに言った。確かにトオルも今の状況は好ましくない、今にでも東京を取り返したいが機体「バリスタ」の損傷が見た目より酷く、完全に修理するのに一週間かかるとの事。
「あ〜あ、私の「斬電」も足やられちゃったしな〜」
白河はそう呟きながら三人で格納庫に向かった。
今回の戦いの勝因はやはり「紅月」にある。超圧縮波動と言う兵器を搭載した機体、機動兵器同士なら無類の強さを誇る。だがその機体にも弱点がある。致命的な物としては右腕部、頭部を排除している事。それ故にハッチを開けたまま戦う事になる。
渚はその事については整備士の応千に聞くのが妥当だろうと思い、応千に相談した。出た結果、超圧縮波動に合わせる兵器を作る事が決まった。正式名称「紅月甲壱飛翔式」それに伴い「蒼月」も新たに「蒼月・ブラスター型」の製作も行われる事になった。