出会いから戦いへと
かくして、栄一は電話口の相手に今まで起こった一切の成り行きを説明した。
分かりやすく、丁寧に。
あの日、突然現れた得体のしれない悪魔に対する解明を求めるべく、彼は相手の知識からできるだけ情報を引き出そうと試みた。
「ううーーーん。概要はわかったけど……実際君が負った手の傷の事とか、お友達の件も、直接見ないと分からないね。差支えなければ、場所と日時を決めてくれれば会えますけど」
彼は、そんなの全然かまわないよ、言わんばかりに栄一たちと面会を促した。
「いいんですか?」
栄一が興奮した表情で声を発する。
「ああ。国内であれば。俺は明後日の午後4時半から、東京駅で信者たちとのセッションがあるんだけど、君たちも来るかい?」
「えっ。あの、非常に聞きづらいんですけど、費用とかって掛かります?」
栄一が心配していたのは、やはり相手が宗教団体の開祖だという事で、妙なつながりが出来てしまい、施設に引きずり込まれて、挙句に洗脳されてしまうという事だった。
「くっくっく。そんなに心配しないでくれたまえ。俺は他のアヤシイ宗教団体とは違うんだ。君たちのような若い才能から金をせびるつもりはないし、惑わそうなんて魂胆も全くない!」
山崎さんがあんまりにも自信たっぷりに言い放つので、栄一は逆に心配になった。
けれども、今は彼以外に頼るべく人はいない。たとえアヤシイ団体だとしても、いずれ我々はあの例の悪魔にとり殺されてしまうかもしれない未来が見えていた。
だからこそ、掛ける以外にないのだ。
「了解です。明後日の16時半に東京駅ですね。一応、電話番号も伝えます」
ここで、お互いの電話番号を控えた両者は、明後日、待ち合わせをする事となった。
栄一はその後も頻繁に山崎さんと連絡をしていた。
そうして霊的な存在と出会ってしまった時の為の対策とか、除霊と浄化の違いとか、様々な話を吸収し、亮介やユキに話の内容をそのまま伝えた。
またその過程で、彼らがあの日公園で出会ってしまった悪魔が
「ハッカイ・トバシ」
と呼ばれているという事実も知らされたので、三人は悪魔の事をいつしか「トバシ」と呼ぶようになっていった。
また、東京駅というのは何かと広く、人がごった返していて待ち合わせをするにも、顔を知らない相手と鉢合わせるというのは至難の業だという事にも気が付いた。
そこで、具体的な場所は「銀の鈴」地下にある有名なスポットで、学生服を着た三人組を見かけたら手をふってくださいという趣旨を伝えた。
加えて山崎さんの方は、天然パーマでサングラスを付けたアロハシャツの男性を見かけたら手を振ってくれということだったので、一同はそうして、対面する事となった。
当日
栄一、亮介、ユキの三人は待ち合わせ場所に集合した。
予定より早く集合してしまったらしいけれども、栄一は
「あの人じゃないか?」
とすぐに山崎さんと思われる人を発見したので手を振った。
彼は「栄一くーん」と大声を発してきたので、一目瞭然であった。