序章
(あー、息苦しい、、、)毛布の上で横たわり、最期の時を待っている。7才にして寿命を全うしようとしている。
「ユキぃー!げんきだしてー!うぅ〜っ」5歳の女の子がボクのお腹を優しく撫でながら泣いている。
子供ながら何が起こってるのか感じているようだ。
この子が産まれた時から今日まで一緒に過ごしてきた。
走馬灯のように思い出される。赤ちゃんの頃は泣き声がうるさくていつも耳を塞いでいた。ママさんはボクの事を構ってくれなくなって淋しい想いさえしていた。でも日が経つにつれてこの子が笑うようになって、少しずつ可愛いって思うようになったんだ。この子が歩けるようになってからは公園で一緒に遊んだり散歩したり昼寝したり、まるで兄妹のように、時には友達のように。いつの間にかボクにとってかけがえのない大切な存在になっていった。
病気にさえならなければボクはあと、10年は生きてこの子の成長を見届けられたのに、、、(すげー悔しい)
「ハァ、、ハァ、、」どうしようもないが、もうそろそろお迎えの時みたいだ。
「ユキぃー!またあいにきてね!とおいところにいってもまたあいにきてねー!やくそくだからねー!」
(やくそく?)息も絶え絶えで意識もうろうの中で、大切なこの子が泣きじゃくりながら一生懸命何度も「あいにきて」って言ってる。
仕方ないなー分かったよ。そこまで言うのなら、また君に会いに行くよ。
(今度は人間として君に会いに行くよ、、、)
そう心の中で誓い、最後の力を振り絞って尻尾を1振りした後、犬としての一生を終えた。