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ローマの消失

イタリア半島ローマ、かつてここにローマ帝国の帝都があり永遠の都、ラテン文明の中心地であり、ローマ人にとっての聖地。だが都市の大半は今は長きに渡る荒廃の末に地中に埋まり、かつての壮麗な建築物は遺跡として顔を出してるに過ぎず、その土地の上に人が建物を建て新たなローマを形作っていた。

それでもなお、水道橋、下水道、アウレリアヌスの城壁、街道といった、ローマ人の建てたインフラ設備は一部はなおも生きている。

その都市ローマに強い影響力を持つのが、キリスト教会の教派の一つカトリックである。そのローマ・カトリック教会の総本山ヴァチカン、伝説ではヴァチカンの丘の地下に墓地があり、そこに処刑されたイエスの第一の弟子にして、初代教皇たる聖ペテロの遺体が眠るとされる。大帝コンスタンティヌス1世の時代その上に教会が建てられ、後世に教皇庁が置かれる前サン・ピエトロ大聖堂が建設され、今に至る。その会議室。


「東方ではセルジューク朝がイスラム勢力を統合し西方へと矛先を向けております。ビザンツ帝国が防波堤となって抑えてますが、果たして大丈夫かどうか」

「東の帝国は正教を信仰する地だ。イエス・キリストの正しき教えを継承し信仰する我らカトリックの為に異教徒どもと戦うのは、神が奴らに課した罰であり救いなのだ。力など貸す必要はない」

「ですが大司教。イスラムの台頭を見過ごす事は出来ません。今は教義の差異など捨て、共同でこの問題に取り組まねば」

「ふん。向こうが見返りを払うなら考慮の余地はあろうな」


正教を敵視する純粋なカトリックの大司教はビザンツ帝国の存在を疎ましく思ってた。イスラム勢力をキリスト教共通の敵と見て、ヨーロッパとアジアの中間地点を支配する有数のキリスト教国家ビザンツの存在は、ヨーロッパ側からしたら無視出来ないのだ。だが教義の差異や、自分たちの利益、正教に対する不満や優位主義的考え、東西両教会の分裂もそれの理由に会議は進まず平行線を辿った。


本来ならかつての十字軍のように教会が聖地奪還を命ずれば、より教会の権威は上がるのだが、十字軍は教会が結成を呼びかけても教会が費用を負担する必要は無い。あくまで個人の自由参加のようなものだからだ。

そんな中、思いがけない驚愕の報告が会議中の教皇庁にもたらされた。


「会議中失礼致します。ハンガリー王国から緊急の報告が届きました」

「一体何事だ騒々しい」


大司教は不機嫌に答えた。若い司祭はそれどころでは無い様子で、冷や汗を流しながら羊皮紙にの文を読み上げた。


「東ローマ帝国が、ビザンツ帝国が国土ごと消滅しました」


東ローマ帝国が支配するアナトリア半島とバルカン半島部は、地球から姿を消した。

こうしてアジアからヨーロッパに渡る最短の交通路は地球から消え、イスラム帝国は悲願であるコンスタンティノープル奪取、アナトリア半島の完全制覇も果たされる事はなくなった。イスラム勢力がヨーロッパに浸入することも困難になったが、これはヨーロッパにとって東方との交易路の消滅を意味しておりアジアとの繋がりは絶たれ、交通路も北回りかアフリカ経由か海路に代わった。

こうしてローマ帝国は地球から忽然とそして完全に姿を消した。

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