#7 助ける者
「巴達どこに行ったのかしら?」
二組分の会計を済ませた彩加が、メイプルを出た時には既に辺りに二人の姿は無かった。
メイプルの目の前には南北に伸びた片側二車線の国道三号線が走り、その向こうには広い河川敷を有した一級河川に指定される阿良川が流れる。
望と巴は国道を100m程南下した通り沿いにある、双葉公園前の少し手前の路上にいた。
男はが無言で望に、への字に曲がったバットを振り下ろす。
ーー殺られる!
両腕で頭をかばい死を覚悟する望。だがバットが振り下ろされる事は無かった。
「グ……ギギ……」
恐る恐る目を開けた望が見たものは、バットを振り上げたまま金縛りにあう男の姿であった。
「逃げろ!」
望の背後で声が聞えた。振り返ると見届ける者が、何やら印を結んでいた。
「お、お前は!」
「早く……しろ、長くは持たん!」
「望さん! どうしたのこの人……動かなくなったけど、それにあの人は?」
巴が見届ける者を見つけ、事態を飲み込めないでいる。
「逃げよう!」
望は巴の手を取り、近くの双葉公園の茂みの中に隠れた。
「はぁ、はぁ、巴さん怪我は無い?」
「大丈夫、望さんは?」
「大丈夫だ。とにかくあいつがあの男を止めてくれてる間に逃げよう!」
「あいつ?」
「話は後だ、行くぞ!」
巴の手を取り無人の三号線を走る二人を、月光が照らし長い影をつくっていた。