#11 式神
「俺はハクだ、ヨロシクな!」
虎であった式神はクルリと宙返りすると銀髪の少年に変化した。歳の頃は12~13歳といったところだろう。
「かわいい!」
銀髪の少年に夢中になった巴は銀髪の頭を撫でたり、頬を指でプニプニしながらまとわりついた。
「なんだ、こいつ。喰っていいか?」
迷惑そうな目で巴を見るハク。
「ダメだ。それより式神とはなんだ?」
「お前、式神も知らないのか?」
やれやれといった具合にハクは頭をふる。
「式神は主の”気”を糧にする。”気”は命の源だ。式神は自分の属性以外は何も持ってない。主の命の源である”気”を力に変え意思を具現化する存在。それが俺達式神だ」
子供には不釣合いな難しい言葉を織り交ぜながら、ハクが式神の説明をする。
「俺達? お前の仲間もいるのか?」
「ああいるよ。なぁもういいだろ。俺眠たいんだけど」
大きな欠伸をしたハクは、目が半分閉じかけている。
「そうね、ハクちゃんおねむの時間だもんね、もう帰ろっか」
「お前バカにしてんだろ」
ニコニコしながら頭を撫でる巴を目を擦りながらハクが睨む。
「そうだな、もう遅いし帰ろう。巴さん送っていきます」
「ありがとう、でも家はすぐそこなんで大丈夫です」
「でも……」
「大丈夫! それよりハクちゃんを早く寝かせてあげて」
巴の中でハクは完全に子供扱いであった。
「わかりました、では巴さんも気をつけて帰って下さい」
「うん、二人ともお休み」
◇ ◇ ◇
五分後。巴は自宅のマンションに着いた。
「ふふ、ハクちゃんかわいかったな~、好きな食べ物なんだろう?」
あれこれ妄想しながら玄関を開けた巴は、部屋の中に気配を感じる。カーテンの隙間から差し込む月光に照らされる人影。
「誰!」
身構える巴。
「あなたは……」
部屋の暗がりに目が慣れ、人影の輪郭が浮かび上がる。
「俺は見届ける者。お前はもうすぐ死ぬ」