#9 生きる意志
「望さん、一つ聞きたい事があるんだけど」
「なに?」
「さっきの人は誰?」
巴は、見届ける者の事を尋ねた?
「俺の事か?」
突然、仰向けに寝てる望の視線の前に、見届ける者が現れた。
「キャッ!」
望が叫ぶ前に巴が叫んだ為、辛うじて望は叫び声を飲み込んだ。
「お、お前……」
「望さん、その人誰?」
「え~っと、こいつは……巴さん見えるの?」
説明しようとした望は、巴が見届ける者が見えている事に気づいた。
「俺は見届ける者、別に隠れてる訳じゃない」
見届ける者は望と巴の疑問に一言で答えた。
「俺は死が近づいた人間に選択肢を伝えその結果を見届ける。
”一度俺を見た事がある者”
”死が近づいた者、その選択に深く関わる者”
には俺が見える」
いつになく饒舌に見届ける者が喋る。
「この野郎!!」
望がいきなり見届ける者に飛びかかった。かつて見届ける者に選択肢を告げられ、自らが助かる選択肢を選んだ望は、その代償として未来を失いかけた。
「お前があの時、未来に危険が及ぶ事を言っていれば、俺は決してあんな選択はしなかった。何故あの時言わなかったんだ!!」
「俺は言ったはずだ。未来は変えられるが選択は変えられないと」
「それが何だ!!」
望が掴もうとする手を紙一重でかわしながら、見届ける者が続ける。
「こうも言った。お前が望むと望まざると関わらず、事象はお前の選択結果に向けて動くと。俺は死が近づく者の前に現れるが、死が近づく者全ての前に現れる訳では無い」
「どういう意味だ!」
見届ける者を捕まえる事ができず、その苛立ちで望が叫ぶ。
「生きる意志の強い者が俺を呼び寄せる」