ニュウガクソウソウ
春。高校に入学して早くも1週間が過ぎた頃。友達もちらほらと出来始めてもいいだろうという時期。
ただそれはコミニュケーションの高い人たちの時期だ。僕はというと、クラスに打ち解けられずスマホとにらめっこをしている。そう!何を隠そう、僕は人と関わることが苦手なのだ!と胸を張って言える!…なんて自慢げに話をしたところで胸がいたくなるな。この話はもうやめておこう。
話は変わって、僕はスマホでさっきから漫画を読んでいる。最近は本当に便利な時代だ。スマホがあればなんでもできる!お金さえ払えばスマホで漫画が読める時代。ゲームだってできる。これは最高ではなかろうかと思う。
そんなことをしているから友人の1人や2人作れないんだとつくづく思う。
ただ、言い訳をさせて欲しい。僕がどうしてこんなにも人と関わりたくないのかを。
それは、僕の家がや..「お!いたいた!ユッキー!探したぞー!」
平田幸集こと、ユッキーは僕のあだ名だ。そのユッキーと呼んだ奴は、小学生の頃から仲が良かった大橋幸人だ。
同じゆきが付くということと、誕生日が同じということから仲良くなり、今ではこいつなしでは生きていけな…先に言っておくが、これはBL要素はないからな?ホントだよ?
「…ユッキー、どうかした?」
「…おぉ、なんでもないなんでもない!で、どうしたんだい、幸人?」
「いやー、クラスが一緒になったとはいえ、全然話ができてなかったからさー、生きてんのかなーと」
こいつは酷い。
「まてまてまて、生きてるからここにいるわけだし、てか顔ぐらい毎日みてるだろ!」
「いや、そーじゃなくて、生ける屍になってねぇーかなってことだよ」
あ、なるほど。こいつなりに心配してくれてたというわけか。
幸人は見た目はイケメンで、成績優秀、スポーツ万能。唯一弱点はというと…なんだろ、なにも思いつかないや。
なんでこんなすごいやつと親友なのかが未だによくわからなくなることがある。
「…で、本題はなに?」
「いやー、それがさ!聞いてくれよ!隣のクラスの女子によー!めちゃくちゃ美人な女の子がいるんだよ!もちろん、うちのクラスにも可愛い子はいるんだけどさ!あれは格別っていうか、モデルさんだよな!くぅー!あんな彼女が欲しい!!」
…あ、こいつの弱点というか馬鹿なところあったわ。女たらし。
「へー、幸人がそんなに褒めるほどの女子が隣のクラスにいるとはねー」
「ユッキーも気になるべ?ちょっと見に行こうぜ?」
そう言って幸人は僕の右手首を掴み、無理やり僕の重たい腰を動かした。
僕も少し興味はあったが、幸人ほど興味はなく、別にいつか会うことになるんだから今行かなくてもいいんじゃないかなんて思っている。
隣のクラスの窓から、そのモデルのような美人さんを探してみたけど、どうやら席を外しているようで今はここにいないらしい。
幸人は戻ってくるまでここにいよう!なんて言ってたけど、僕は無視して教室へ戻った。
休憩時間が終わろうとしていたので教室に戻り、次の授業を受けるために移動しないといけなかったため、準備をしまだ慣れない学校の迷路を探索しながら目的地である体育館へと向かった。
次の授業は、体育館で隣のクラスとレクリエーションだ。
結局コミュ障な僕のことだ、レクリエーションごときで誰かと仲良くなれるわけがない。
「おい!!勝手に俺を置いて行くなよ!」
ビクッとした僕の肩に手を置いて喋りかけてきたのはさっきも登場した幸人だった。
「ななな、なんだ、幸人か、驚かしやがって」
「なんだとはなんだ!1人寂しく歩いてたユッキーを見つけたから声を掛けたというのに!!」
「べ、別に寂しくなんかないんだからね!」
我ながら完璧なツンデレ!
「…ユッキーのツンデレとか誰得だよ」
「う、うっさい!」
そんなたわいのない会話をしていたら目的地にたどり着いた。
体育館に来たのは入学式以来だな。
体育館に入ってまず思ったことが、なんだかざわついてる。
ざわ…ざわざわ…ざわ…ざわ…
特にざわついてるのは野郎共だ。どうやらめちゃくちゃ可愛い女の子がいるらしい。おそらくさっき幸人が言ってた女の子だろう。
まあ僕には関係のないことだ。とりあえず僕のクラスのところに行き、すでに列はできていたのでそこの1番後ろに座った。
僕の後ろに座っていた幸人が話しかけてきた。
「ユッキー、さっき言ってた女の子だよ、あの子は!やばいな…めっちゃやばいな!!!」
やばいってなんだよ、そんなにやばいぐらいに残念だったのか?ってのはないか。幸人の目は信用しても良いぐらい、女子に対するスカウターのレベルが高い。
ただ僕の位置からじゃその子の顔が見えないため、諦めて前を向いた。
レクリエーションも無事に終わり、教室に戻り戻る時、後ろから「ゆき…あつ?」って女の子の声が聞こえた。
どうやら可愛い女の子を気にしすぎていたせいか幻聴が聞こえてしまったみたいだ。
僕は無視してまた歩き出そうとした瞬間、右手首をギュッと掴まれた。どうやら僕の右手首は掴みやすいようだ。
そして僕はまたビクッとした。あ、幸人か。女声をだした幸人か。そう思うと気が楽になり振り向いたら、目の前にいたのは見覚えのあるようなないような美人な女子がいた。
あ、この子が噂の美人女子か。あれ?どうした?僕はこの子に呼ばれたのか?え?なぜ?Way?どうしてだ?僕はこの子に何かしたのか?それ以前に女子に声を掛けられてしまった!女子と話したとか小学生以来なんだが。そんなレアなイベントが今目の前で起きている。なにこれ?なんてギャルゲー?
「あ、わかった。これから絞められるんだ」
思わず結論だけ声が出てしまった。
「そ、そんなことしないわよ!」
なん…だと?ならなんだっていうんだ!自慢じゃないが僕には幸人以外とに仲の良い友人はいないぞ!
「…よね?」
「…え?」
「幸集よね?…幸集!」
んーと、そうです、僕が幸集です。だがしかし!!僕は君のことなんか…んー?そういえば見覚えが…
…あ!幸菜、小泉幸菜!「…!」
思わず声が出なかった。
「人に指差して固まらないでよ!」
まさに滑稽な光景だ。
「ごめんごめん、驚きすぎて頭の中で語ってたよ…てか幸菜、どうしてここにいるんだよ!」
「べ、別に幸集がこの学校に入学するから私もここに入学しようだなんて思ってない!」
「誰もそんなこと言ってない」
「…き、気にしないでちょうだい」
どうして僕がこんなに驚いてるかって?なぜかというとだな、こいつとは
「ユッキー!え?なに?このめちゃくちゃ可愛い女の子と知り合いなの?てか俺以外に仲良い人いたの?なんだか嫉妬するわー」
「気持ち悪いこというな!てかお前、失礼だな!」
ホント、失礼しちゃう!
「…えっと」
ほら見ろ、幸菜が戸惑ってる。
「ごめん、こいつ大橋幸人っていうんだけど、僕の唯一の友達なんだ。」
「そ、そうなのね。騒がしい友人がいたのね、幸集」
まあ、そうだよな、僕のイメージは大人しいだもんな。
キーンコーンカーンコーン…あ、ホームルームが始まってしまう。
「幸菜また後で話しようか」
「じゃあ、終わったら校門前で待ってて。」
僕たちは約束を交わし、それぞれの教室に戻っていった。