ウィンドーショッピング!
ウインドーショッピングの大好きな女子高生M子がいました。
今日も都会の街を軽快に歩いています。
「このガラスは99年製だわ。週に1回……いや、10日に1回の拭き掃除、ってトコね」
と、行く道筋の店の先々で小姑のごとく、ショーウインドーにケチをつけます。
日課なのです。
「もしもし。そこのポップなブルーをきかせたサーフスタイルのお姉さん。この2007年製、3年保証のショーウインドーは、いかが?」
道端で、ふと、20代後半ぐらいに見える黒いスーツの謎の男が話しかけました。突然にびっくりしたM子は、ジロジロと、その横に立てかけてあるショーウインドーを見ました。
なるほど、傷ひとつない、薄いけど叩いても音はそんなに響かない、なかなか珍しいガラスです。
「でも、高いんじゃないの」
さすがはM子。ケチをつけるのを忘れません。でも謎の男は言いました。
「ご安心を! 今ならもうひとつ、さらにこの……ぐはぁっ!」
と、謎の男は、いきなり、うめき声を上げて倒れました。
一体何が起きたのでしょう?
……。
……実は、謎の男は手に隠し持っていた包丁で、自らを刺したのです!
場は騒然。M子は謎の男を抱きかかえ、わけを問いただしました。すると謎の男は、
「い、今なら、……この、穴あき包丁が、つ、い、て、くる……」
……そう言って、人差し指を立てて、がっくりとうなだれました。
「この穴あきに……何の意味が、あるのーーーーーーっ!」
ジャジャーーン! (効果音)
M子は大声で叫びました。救急車が、近づいてきます。
「きゅうりが、くっつかないんだよ」と、野次が飛んできます。
謎の男の、自分の身を犠牲にしたセールスに、皆は乾杯です!
そしてこれが火種となり、「穴あき包丁ブーム」の到来です。
あのショーウインドーはM子が10万で購入。
……本当は謎の男、希望価格100万だったのに。……人差し指を立てたのに……ねぇ?
《END》
……ご読了ありがとうございました。