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第2章 動き出す黒い影(2)

 大方まわり終わると、帰り途中に東京駅で昼食にする事にした。

 東京駅と言えば老舗のブックセンターもある。

 せっかくだからこちらの工学関連の書物も買って帰りたいとの事だ。

 すっかり技術者魂に火がついてしまったらしい。

 こちらの技術で作れるものを作ってみたいらしいのだ。

 今、俺達は駅ビルの八階にいる。

 窓から線路が見えるが、子供の頃なら大はしゃぎだっただろうなと思う。

「午前だけでもかなり楽しんだな」

「そうだね」

 食事前に頼んだジュースを飲みながら言う楓。

 ジュースはオレンジジュースで楓のお気に入りだ。

 ”アース”でもよく飲んでいるものらしく、俺もこっちに来た楓がオレンジジュース以外のジュースを飲んでいるところ見たことが無いくらいだ。

「地球の秋葉原も”アース”とは違っても楽しかった」

「それは良かった。そっちの方が科学は進みすぎてるからあまり面白くないんじゃないかと思ったよ。それに今ではアニメやゲームの街って言われるしな」

「それはそれで味はあるから。わたしもBL本買っちゃったし」

 そう言いながら少し読みたそうにうずうずしている。

 さすがにこんなところでBL本を出すことはないようだが。

 周りはほとんどが俺達より年上の人が多いし、店の雰囲気もそれなりに良い。

「あ、ここでは読まないから大丈夫だよ」

 照れ笑いしながら言い訳するように言う。

 秋葉原で食事していたら読めたかもしれない。

 せっかくデートに来ているのだからちょっとしゃれた店にしたかったのだ。

「あのね…」

「ん?」

 急に楓が不安そうに俺を見る。

 どうしたのだろうか?

「わたしね、十年前の戦いの時にあるものをルークに埋め込まれたの…」

「あるもの?」

「そう…。魔力を封じ込まれてしまう装置。大きさ的には親指くらいでしかないんだけどね…」

「なんだって」

 いきなり話題がルークのことになり、トーンが下がった。

 しかも十年前の戦いで埋め込まれたと…。

 何かされていたとは思っていたがまさかそんなものを埋め込まれていたとは。

「PWMMでそのことは?」

「知ってるよ。取り除く試みもしてみたけど…、結果は不可能だって」

「どうしてさ?」

「ルークの魔力で保護されて取り除こうとすると結界が張られて手出し出来ないの」

「それじゃあ、最後の戦いで楓が動けなかったのは…」

「うん。その装置のせいなんだ」

 俺が右手以外を失うきっかけになった戦い。

 楓を救出した際に、楓が全く魔法が使えない状態だと告げていた。

 たぶん、相当消耗していたからだと思っていたが、まさかルークの仕業だと当時は思わなかった。

 楓のサポートがあればもう少し楽に戦いを進められただろうと思う。

 結果はルークの逮捕と引き換えに俺は右手以外の損失だった。

 今までも楓がわたしのせいでと自分を責めることがあったが、こういうことだったのか。

「顔が真っ青だった理由はそれか」

「うん」

 ルークと戦う場合、楓は魔法が使えない。

 詰まる所、俺のサポートが出来ないということだ。

 俺も十年前から力はつけている。

 いかにルークが強敵と言えど同じ失敗は繰り返さないつもりだ。

 実際に楓のサポートがないのがきついと言う事実は変わらないが。

「じゃあ、ルークが来たら楓は転移させる。その方が安心だろう」

「うん。本当は側にいたいんだけどね」

「そうは行かないだろうな。魔法が使えないんじゃ、また人質にされかねない。そうなったら楓にまた負担が掛かるからな」

「秀君にはまた迷惑をかけちゃうけどね」

 一緒に戦えないのは悔しいだろう。

 楓の表情からはそう取れた。

「ご注文のお品をお持ちしました」

 そこで、ウェイトレスの人が来たのでルーク絡みの話は一度、中断することにした。

「あ、おいしい」

 楓が頼んだパスタを一口食べて言う。

「そりゃな。情報誌見て人気だって書いてあったんだ」

 特にここはパスタがおいしいと書いてあったからな。

 すき焼きと並んで、楓が好きな食べ物の一つがパスタだ。

 だからこそ、ちょっと拘ったのもある。

「秀君が情報誌なんて読むんだね」

「ちょっとくらい知識があった方がいいだろ?」

「うん」

 男としては女性をリード出来るだけの知識は欲しいもんだ。

 そのためなら普段読まないものだって読んで調べもするさ。

「あ、デザートも食べていい?」

「いいけど、まずはそれ食ってからな」

「はーい」

 昼食が終わって、デザートも食べ終わる。

「…結構な値段だな」

 俺はテーブルに置かれた会計を見て言う。

 俺がステーキとデザート一品だけだったのだが、楓がパスタを二人前とデザートも三つ頼んだ。

 おかげでいい値段である。

「ご、ごめんね…。ついおいしくて」

 まあ、気持ちは分からなくもない。

 しかし良い食べっぷりだった。

 見てるこっちも気持ちよくなるくらい。

「気にするなって。それじゃあ、行くぞ」

「うん」

 二人で席を立った瞬間にビル全体が突然大きな衝撃で揺れるのだった。

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