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第1章・影から見守る兄(6)

 PWMMの人間と連絡を取るためにそのまま楓のアパートまで一緒にやって来た。

 家で連絡をしてもいいのだが、かえでに聞かれたら隠している意味もない。

 PWMMに通信を入れる。

 カード型端末に文字の羅列が浮かんでは消える。十秒程で通信接続状態がオンラインになった。

 通信担当の人間と久しぶりにあいさつを交わすと、現状を確認する。

 確認出来た事は再び地球の日本に潜伏しているらしいことしか分からなかった。

 追跡部隊が任に当たったが追跡途中で全隊員との連絡が途絶えたと言う。

 違法魔法使い達との接触が考えられるため俺もバックアップで調査協力することになった。

 かえでにバレると楽しみが無くなる。

 その辺は気をつけて行動しなければならない。

 バレる時はあくまでかえでがピンチの時だ。

 実はお兄ちゃんが魔法使いでいつもかげながら見守っていたと言うのをピンチの後に教えたほうが面白い上に優越感を感じるからな。

 通信を終えると俺は楓にたずねた。

「調査の方は大丈夫そうか?」

 ルークが相手となると色々と楓も不安があるはず。

 最悪、俺だけで動いてもいいのだ。

「うん。さっきはいきなりのことで気が動転してたけど、大丈夫」

 心なしかまだ顔は青い。

 しかし、それも仕方ないのかも知れない。

 トラウマになっているのだから。

 俺はあまり深いことは聞かないことにしていた。

「それより、明日休みだろ? どこか遊びにでも行くか?」

「え?」

 急に話題が変わって戸惑う楓。

「だから出かけないかってこと。それに最近はかえで達のことばかりで俺達の方がおろそかになってるしな」

 今回の事件が始まってから、俺は極力かえで達のサポートに付こうと時間を割いていた。

 そのために俺達はデートもせずにいることが多く最後に出かけたのも一月前になる。

 あとはこれから忙しくなりそうだと言う事もあげられるが。

 だから気分転換が必要だろうと思ったのだ。

「そうだね。わたしも久しぶりに出かけたいかも」

「なんなら前から行きたがっていた秋葉原にでも行くか?」

「あ、いいね!」

 そういうと急にうきうきとし出す楓。

 俺のことにも気を使っているようにも見えるが。

 ちなみにデートに秋葉原は無いだろうという意見もあるかも知れない。

 しかし女の子が行きたがる場所はだいたい行ってしまっているのだ。

 それにもう一つ理由がある。

「言っておくけど、期待するなよ?」

「違いが知りたいだけだよー」

 秋葉原。

 電気街というイメージは数年前から消え去ってしまっている。

 今ではゲームとアニメがメインの街だ。

 それでも秋葉原特有の老舗などは存在しており、現在のイメージとは裏腹に未だに電気街の名残は保っているところもある。

 なぜ楓が行きたがっているかと言うと、向こうの”アース”でも秋葉原が存在しており最先端技術の宝庫となっているらしい。

 こちらの秋葉原も昔同様にあらゆる電子パーツ、PCパーツが並ぶためITと言えば日本の最先端を担う部分は変わらない。

 ”アース”の秋葉原は魔法科学の最先端であり、大手研究所から卸されたばかりの電子パーツ、魔法工学関連の機器や部品など多く出回っているらしい。

 魔法科学は個人でも十分に扱える代物で自分の魔力を使うことでさまざまなことが出来るのだ。

 個人でも歩行型のロボットに魔力を注ぎ込むことで半自立型のロボットを作れるし、場合によっては自分の行動をトレースさせて遊ぶなどもある。

 企業レベルなら魔法科学を使って飛行可能な自動車ある。

 魔力を電気変換する事で周囲の魔力を吸いつつ空に浮かぶだけの推進力を生み出すのだ。

 その技術を応用して、月面基地の建設、火星への移住、太陽系外の惑星探査など向こうの科学は俺達の世界より百年単位で進んでいる。

 特に遠隔操作は魔法によってほぼリアルタイム。トレースするロボットの精度が高いため、未開の星などでの情報収集もかなり正確に収集出来るらしい。

 技術の進歩は目覚しいが生活レベルはこちらとは大幅に変わるわけではないという。

 少し説明が長くなったが、そのため楓はこちらの秋葉原がどんなものか知りたいのだ。

 これが楓にも十分な気分転換になるかもしれないと考えていた。

 ルークもまだ本格的には動かないだろうと想定していた。

 しかし俺が思っている程、状況が甘くない事を思い知らされる事になる。

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