第5章 突然の変化(6)
光が収まり、視界がはっきりする。
地球の日本で、政治の中心部の場所だったところだ。。
しかしキメラが暴れていたためだろう。少なくとも俺が知っている景色ではなかった。
戦車、戦闘ヘリ、装甲車などの残骸が多く転がっている。
またキメラの死体も少ないもののいくつかあった。
周りの建物も半壊、全壊と言う有様だ。とても平和な国とは思えない。
街路樹は無残になぎ倒され、道路はアスファルトがめくりあがり、土が露出している。
何よりも人が一人もいない。
怖いくらいに静かだった。
「お兄ちゃん……。これって」
「ああ。激しい戦いがあったと言うことだ」
激しい戦いだったのだろう。少なくとも地球の戦力としては。
キメラや魔法使いは「戦った」気にはなっていないはずだ。
一方的な戦いだったと思う。
それこそ戦いと言えない程の戦いだったと思う。
「秀二兄さん、妙だと思いませんか? 目の前に見えるのはルークが占拠して言いる国会議事堂ですよね?
だと言うのに、どういう訳か静かすぎるような」
「確かにな。俺たちが来るのが分かっているはずだ。全く何も準備していないはずがないとは思うんだが……」
俺たちの目の前にあるのは国会議事堂だ。
ここをルークは占拠して拠点としているという情報が入っている。
だと言うのに静かすぎるのが返って不気味だった。
地球の戦力では、ここを脅かすのは無理なのは分かるのだが、それにしても無防備過ぎはしないか?
俺たちが来ても歓迎出来るくらいの余裕を感じさせるのである。
「行くぞ。気は抜くなよ?」
俺の言葉に二人は頷いた。
歩く道も戦いの傷跡が酷い。
歩くのが困難な場所がいくつか伺えた。
低空飛行で俺たちは国会議事堂を目指して飛んで行く。
国会議事堂の正門をあっさりくぐり抜ける。
キメラは一匹もいない。魔法使いも同様に一人もいない。
一体、ここまで無防備なのはどうしてだ?
「ようこそ、勇敢なるものよ。とでも言おうか?」
疑問を他所に上空から声が聞こえて来た。
言うまでもないが、そちらの方を向くと黒い服を着たルークがそこにはいた。
「ルーク……。随分と余裕じゃないか?」
「ここに守りをおいても貴様には無意味なことくらい分かるからな。
下手な戦力は置けるわけがない。
また貴様くらいでなければ脅威にもならない。
警備を置くまでもなのだよ。
なら、この俺が自ら出迎えた方がいいだろう」
涼しい顔をして言うルーク。
ルークの言うことは確かだ。
雑魚を何万置こうと俺には意味が大してない。
ましては二人が着いているなら尚更だ。
だが、それでもこの余裕はむかつくものだ。
「そういう態度が余裕だと言うんだよ」
「すまない。なら、せめて二人にはプレゼントをやろう」
そういうと、魔法使いが二人、ルークの横に現れる。
現れた二人の魔法使いを見て、俺は絶句した。
なぜならば……。
「どうだ? 自分がもう一人いる感覚は?」
「反吐が出る」
俺がいるのだ。
そして、もう一人は楓である。
恐らくクローンなのだろう。
「俺のクローンなんていつの間に作りやがった!」
「二度の接触で貴様の細胞を手に入れることなど簡単だった。
あとは急成長させて、この通りだ。
気に入ってくれたかな?」
「ふざけるな!」
「そうか、気に入ってもらえないか? まあ、いい。
この二人が、君たちの相手をしてくれる。
せいぜい楽しんでくれ」
ルークが手を挙げると、クローンの俺と楓がそれぞれかえでと誠に向かっていく。
「お兄ちゃんはルークに専念して!」
「この二人のクローンは任せて下さい!」
かえで、誠は俺にそう言うと飛び出していった。
ぶつかり合う力と力。
戦闘が始まった。
「気を付けろよ!」
クローンとは言え、俺と楓のクローンだ。
自分で言うのも何だが、きっと苦戦するに違いない。
「ルーク・レーガン!」
ルークの方に向き直り、俺は奴を睨み付けた。
「我々も始めるとしようか?」
「望むところだ!」
先制攻撃は俺からだ。ルークに向かってレーザーショットをお見舞いする。
青白い光の帯が、ルークがいたところを貫いた。
当然のことだが、そこにはもうルークはいない。
わずかにずれた位置に避けていた。
一瞬で、である。やはり実力は相当なものだ。
俺は上空へと飛び上がる。
「ご挨拶だな」
涼しい顔で俺に言う。
「このくらい、挨拶にもならないだろう?」
「そうだ。その程度ではな」
ルークが右手を振り上げると、俺に向かって高速で詰め寄る。
急速に赤い光がルークの手に集まる。
俺も右手に魔力を込める。
やることはルークと同じだ。
青白い光が俺の手に集まると、大剣へと姿を変える。
ルークの赤い剣と、俺の青い剣がぶつかり合う。
「はあああああ!」
「そんなもので!」
青と赤の魔力が互いを削り合う。
その余波で辺りに激風が吹き荒れた。
国会議事堂も巻き起こる風の影響で一部が削り取られていく。
「やはり、伊達に俺を捕まえただけのことはある!」
「当然だ! お前ごときに早々やられるものか!」
一際魔力を込めると、一気に振り抜いた。
ルークは、剣に押される形で吹き飛ばされる。
しかし、空中ですぐに体勢を立て直して俺に向き直ると、ルークは左手を突き出した。
俺は瞬間的に、その場を離れる。
その判断は正しかった。
俺がいた空間に、赤い光の槍が、四方八方から貫いていた。
もし、あの場にいたら俺の体は串刺しだ。
「お礼だ!」
ルークをロック。
俺を右手を突き出し、レーザーショットを放つ。
五本のレーザーは四方と正面から一瞬にしてルークを捉えた。
逃げ道はない。
だが、こんな攻撃がルークに効くことは無なかった。
涼しげな顔で、俺が放ったレーザーショットを屈折させていた。
素が光であるレーザーショット、その光を曲げられてしまえば効果は無い。
方向を変えられたレーザーショットは建物に突き刺さり、はたまた空中へと消えていく。
「さすがだな」
「誰にものを言ってる?」
「それもそうだな」
俺とルークは互いに笑みを浮かべた。
他意はない。
この戦い自体をルークは楽しんでいるのだ。
俺だって戦い自体は死を意識する。
だが、この緊張感が俺にも笑みを浮かべさせていた。
「しかし、このまま戦っていても楽しくない」
「どういう意味だ?」
俺の問いに、ルークは不敵な笑みを浮かべると奴の前に何か黒い玉が現れた。




