表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/31

第5章 突然の変化(3)

 逃げるのは本当に何も出来なくなった時でいい。

 出来れば今は、目の前の敵を何とか抑えたい。

「誠!」

「はい!」

「現在、PWMMの人間と、どのくらい連絡取れる?」

「連絡が取れそうな人たちでだけなら、千人程度です!」

 千人。このPWMM本部ビルの住居区画で暮らしていた人間の数はざっと三千人。

 通常、昼間この本部にいる人数はおおよそ三万。

 つまり、十パーセント未満の人間しか確認できていないことになる。

「キメラの数も減った気がしないくらいだしな」

 視界にはまだ数えるのも馬鹿らしいくらいのキメラがまだ存在する。

「どうするの、お兄ちゃん」

 かえでが心細そうに尋ねる。

 キメラの大群に不安を隠しきれないようだ。

 放ったアトミックバーストで、キメラの数はかなり減らした。

 アトミックバーストの爆発の威力もあって百万を軽く超えるキメラを倒せただろう。

 普通に考えればかなりの数だ。

 しかし、確認されているキメラの反応は最初の襲撃で一億だ。

「連絡取れる人たちにここの座標を送れ! 残っている人たちを出来るだけ集めて迎撃だ。

 俺はキャノン・レーザーを数個用意する。相当な魔力を使うから五分くらい持ちこたえてくれ」

 そういうと俺は自分の通信機を誠に渡す。

「わたし達は?」

 楓が出来る事はないかと言う表情で尋ねて来た。

「楓とかえではシールドをもう少し広げて、維持を頼む」

 そうしている間に、十人単位でこのシールド内にPWMMの人間が集められる。

 中には顔見知りの人もいて指示を出すとすぐに動いてくれた。

 次々に現れる残存PWMM職員達。

 それに伴いシールドを張る人数が多くなり、シールドの強度が増してきた。

 最終的に百人くらいがシールド維持に回ってくれていた。

 他の者達は迫り来るキメラと、魔法使いに攻撃を入れ続けている。

 そして俺は。

「さすがに…無茶があるな…」

 左腕、両足が悲鳴を上げていた。

 まだ手と足は付け替えていない。

 その状態での十年前の最大魔法を数個、並べて用意しているのだ。

 一時的に魔力供給が経たれそうになって倒れるところをギルバードさんがこちらに向かってくる。

「無茶しすぎだ!」

 倒れる寸前のところを支え、弟をしかりつけるように言って来た。

「ギルバードさん。悪い、少しの間支えていてほしい」

 俺がそういうとギルバードさんは分かったと頷く。

 五分は短いようで長い。敵の数が数だけに、集まったPWMM員も防戦一方だ。

 誠や一部の上位PWMM隊員が広域攻撃魔法を使いながら、千から二千くらいのキメラを倒す。

 いくつものキメラが被弾しては落ちていく、まるで雨のように。その情景は、異様でしかない。

 二千ものキメラを倒していくが、それでも焼け石に水だった。 

 シールド展開している方も徐々にその規模が小さくなっていくのが分かる。

 たった五分だが、敵の攻撃はやむ事がない以上永遠にも感じられる長さだった。

 PWMMの隊員達は、はるかに少ない戦力で自分達の十倍、二十倍のキメラを葬っていた。

 その状況の中、俺は何とか巨大な光の弾数個、完成させた。

 小型の太陽とも言うべき熱量。それだけでキメラが蒸発していく。

 俺は右手を突き出して叫んだ。

「いくぞ! 吹き飛べ!」

 キャノン・レーザーを全て開放した。

 押し寄せてくるキメラ、魔法使いを数本の光の束が飲み込んでいく。

 轟音を立てて大気を震わせて、俺の放った光の束は眩いばかりの光を放って敵の飲み込んでいく。

 まるで、空を貫く光の柱だった。

 多くのキメラ、魔法使いを光の渦が飲み込んでいくのが見て分かった。

 迫り来ていた敵が見る見るうちに消えていく。

 触れた側からまるで最初からそこに居なかったかのように消えていくのだ。

 光が収まり、光の柱が徐々に細くなって最後には無くなる。

 その場にいる全ての人間が、呆然とこの状況を眺めていた。

 消えた光のあとに訪れたのは、静寂。

 驚愕と言う静寂が、辺りを支配していたのだ。

 目の前にいたキメラ、魔法使いの数はおおよそ数百万。

 ほとんどのキメラは消え失せた。

 これには誰しもが驚愕する。

「秀二、君はなんて無茶を…」

 支えてもらっていたから気が付かなかったが、義足と義手が酷いことになっていた。

 俺の高出力の魔力がどうやら義足と義手に対して許容範囲を超えてしまい、煙が出ていた。

 それだけじゃない。

 実は接合部分に俺自身が痛みを感じていた。

「すぐに交換したいところだが、これじゃ…」

「仕方ないさ」

 俺は笑うが、正直そんな状態じゃなかった。

 全身も物凄いだるいのだ。

「お兄ちゃん!」

「秀君!」

「秀二兄さん!」

 三人が顔を青くして駆け寄ってくる。

「ギルバードさん、秀君は?」

「急いで新しい義手、義足に換装する必要があるね。だが、施設が…」

 ギルバードさんの顔が歪む。

 それもそうだろう。

 今の襲撃で本部ビルはほぼ崩壊している。

 この場所もいつ崩れるか、分かったものじゃない。

「第二支部が無事ならそっちに行くしかない。このままここにいても、消耗戦になるだけだ」

 ギルバードさんの言葉は正しかった。

 今ので、ほとんどの敵をしとめたとは言え、まだ百万を超える軍勢が押し寄せてきている。

 他の戦闘要員の人間もかなり疲弊しているのは周りを見れば一目瞭然だった。

「え?」

 楓の周りに黒いシールドのような球体が現れた。

「楓!」

「楓お姉ちゃん」

「姉さん!」

 俺達の叫びが響き渡る。

 そして…。

「予定通りだ」

 その言葉と共に、そいつは現れたのだ。

「ルーク!」

 俺の言葉に、他の人も振り向いて、悲鳴が上がる。

 こんな状態では正直戦えない。

 今の俺はもう魔力が枯渇している状態だ。

「これだけの数を相手にするとなれば、藤原秀二。お前が必ず無茶をすると思っていた。十年前と変わらない行動だな」

 俺はただ相手を睨みつけるしかなかった。

「秀…君…」

「楓!」

 楓が弱々しい声で俺を呼ぶ、良く見ると魔力を奪われているのか、立っていられない状態でしゃがみ込んでいた。

「そして、こうして再び君のパートナーを手に入れることが出来た」

 その顔は勝者の顔だった。

 勝ち誇った、そして弱者を哀れむような顔。

「楓をどうする気だ!」

「さて、どうされるかな?」

 嫌な笑みを浮かべながら黒い球体の中に入ろうとする。

 その時だった。

 今まで黙っていた誠が、いや側にいたはずの誠がルークの後ろに回っていた。

 そして。

 爆発が起きる。

 ルークの背中に誠がレーザーショットを打ち込んだのだ。

 不意打ちだった。

 完璧な不意打ちだった。

「なのに、どうして!」

 誠が叫ぶ。

 そう、ルークは確かに不意打ちを今、受けたのだが、傷一つ負っていなかった。

「俺が気が付かないとでも思ったか?」

 後ろを振り向きつつ、笑う。

 笑いながらルークは黒い球体の中に入っていった。

 そして、立てない楓を抱き上げる。

「何するつもりだ…」

「何、十年前の続きをするに過ぎないさ」

 不敵な笑みを浮かべると突然、その場から消え去った。

 同時に俺も意識を手放すことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ