第5章 突然の変化(2)
現在の状態は平和と言うわけではない。
そう、あくまで今は緊張状態だ。
ただ何も起きないと緊張の糸と言うのは緩んでしまう。
それは、ルークが地球でのみ活動をしていると思ってしまったこと。
宣戦布告をしたもののまさかPWMMを直接攻撃してくると言うのは無いと勝手に決め付けたこと。
これらの事が上げられる。
何を言いたいのかって?
今、現在PWMM本部への奇襲攻撃が行われていると言う事だった。
突然の爆発によって、本部ビルの防衛機能の七十パーセントがダウン。
同時に、キメラが約一億匹。
裏切り者。つまり内通者がいた事によりPWMM本部を守るバリアを解除された。
俺と、楓はその、何ていうか…。まあ男女の営みを楽しんでいたところをいきなり襲撃されたのである。
素っ裸でバリアを張る羽目になったのはホント間抜けだった。
服が吹き飛ばなかったのはホントに幸運だったと思う。
俺がバリアを維持しながらお互い服を着る。
こんな状況じゃなければ、楓の着る姿をじっくり見たかったものだが、そんな余裕は当然無い。
「服、着たか」
迫り来るキメラの攻撃を防ぎながら俺は楓に声をかけた。
すでに回りは数百のキメラが取り囲んでいる。
異様な光景だ。
「大丈夫!」
やや顔を赤くして応える。
さっき敵の魔法使いがちらりとこちらを見ていたからな。
俺たちがいた部屋は、シールドで何とか攻撃を防いでいる状況だ。
状況は悪すぎる。最初の一撃で実は俺達のいたベッドとそのわずかな周辺以外は吹き飛ばされてしまっていたのだ。
少しでも反応が遅れていたら、俺も楓も今ごろお陀仏だった。
『秀二兄さん、無事ですか!』
通信機から誠の声が聞こえてきた。
「とりあえずは無事だ。そっちはどうだ?」
『何とか生きていますが…。正直、分が悪すぎです。大量のキメラに魔法使い達ですからね』
「現在の座標を送ってくれ。そっちに行く」
『今から送ります。このままじゃ持ちません』
そこで、通信が切れた。
辛うじて座標は送られて来ている。
「楓、行くぞ」
「うん」
楓が俺の手に掴まると、送られてきた座標に瞬間移動をした。
瞬間移動した先はラウンジだった場所だった。
と言うのも襲撃でほとんど形を留めていない。
周りには無数のキメラ、そして魔法使い。
誠が防御をしつつ、かえでが攻撃をしているが、一向に敵が減る様子がない。
「くらえ!」
俺はレーザーショットを無差別に打ち放つ。
レーザーが出鱈目にキメラや魔法使いを貫いていくが、正直焼け石に水だ。
楓にシールドを張るのを頼むと、誠とかえでの側に行く。
「お兄ちゃん!」
「秀二兄さんに姉さん!」
二人は安堵したように俺達を見る。
俺は頷いて答えると、すぐに指示を出した。
「誠! かえで! お前達もシールドを張れ! 全力でだ!」
「ど、どうして、お兄ちゃん!」
「秀君、まさか…」
俺がやろうとすることが分かったのか、楓が諦めとも呆れとも付かない顔をする。
「至近距離でアトミックバーストを使う! 目も瞑っておけ!」
俺の言葉に、二人は慌ててシールドを張った。
楓にいたってはやっぱり……と言う顔をしている。
楓がドーム状のシールドで俺達全員を包むようにする。
二人もそれに習い、シールドを重ねるようにして展開。これで三重にシールドが張られることになる。
これだけのシールドならたぶん大丈夫だろう。
「行くぞ!」
キメラ、魔法使いが攻撃してくる中、俺は周囲にアトミックバーストを展開するイメージをさせて、発動させた。
数は約五十。
周りが見えなくなる程の強烈な光を放ち。
まるで雷が近くに落ちた時のような轟音が辺りを響かせる。
放ったアトミックバーストはPWMM本部ビルの外側だが、衝撃波は凄まじかった。
光が収まってきた時に見たのはPWMM本部ビル以外、焼け野原になったこげ茶色の土が一面に渡ってあるだけだった。
「それでも、まだってわけか…」
周辺、ニ、三キロの範囲で敵を葬ったわけなのだが、肉眼で見る限りまだまだいる。
まるで、イナゴの大群を見ているような感じだ。
黒い影が、まるで波のように押し寄せてきている。
「みんな無事か?」
三人の方を振り向いて確認する。
全員がしっかりと頷いて答えて見せる。
「秀君、ここにいたら危険だよ!」
押し寄せてくる黒い波。
ほどんどがキメラの大群を見て、楓がいう。
確かに、ここにいたら危険なのは間違いない。
だが…。
「今、ここを放棄したらPWMMはどうなる?」
俺の質問に誰も答えられなかった。




