第4章 訓練(3)
検査が終了して 機材を片付けながらギルバードさんが言う。
「どうだ? 久しぶりだし、お茶でも」
確かに久しぶりだし、たぶんゆっくり出来るのは今のうちだ。
俺はギルバードさんの誘いに乗ることにする。
「いいね。ラウンジでコーヒーでも」
「あ、いいな。ケーキも付けようよ」
楓もケーキを食べたいからか乗ってくる。
「ラウンジか…。秀二は久しぶりだったんだよな? 驚くぞ?」
「何に驚くのさ?」
「何、行ってからの楽しみだ」
何に驚くのだろうと思いながら、ギルバードさんと検査室から出ることにする。
ラウンジに着くと窓側にある四人掛けのテーブル席へと行く。
席に着いて周りを見るが特別何が変わったのかは分からなかった。
「特別変わった所はないような気がするぞ?」
「そうか? あれを見てみな」
そう言われて俺と楓はある自販機を見てみる。
その自販機を見て俺達は確かに驚いた。
カップ麺の自販機があるのだ。
それに何を驚いているのか?
実は、”アース”にはカップ麺はない。
文化の違いなのだろう。カップではなく、マグカップが主流なのだ。
似て異なるこの世界で、俺達の世界のカップ麺が置いてあるのは驚きだった。
「これって、わたしの好きなやつ!」
楓が自販機の前まで行くと嬉しそうに言う。
大好物の一つのカップ焼きそばなのだ。
かなり種類が豊富でこれはこれで楽しめそうだ。
「実は向こうに行っている人間の何人かが稟議書を提出して通したらしいんだ。こっちでも地球の味をって」
「結構物好きな人もいるもんだな」
呆れていいのか褒めていいのか。
好きなものを食べたいと言う気持ちは十分に理解出来るからある意味褒めれるかも知れない。
自分に忠実と言う事で。
せっかく目の前にカップ麺があるわけだが、俺達はもう昼食は済ませてある。
オーソドックスにコーヒーを買うと雑談が始まる。
ちなみに楓はちゃんとケーキを頼んでいた。
「そう言えば、秀二の妹も来てるんだっけ?」
「ああ。来てはいるけど…。妹に手は出させないぞ?」
ギルバードさんは女好きだ。
楓にも言われていたが、セクハラもする。
今日は言葉だけだが、たまに楓は肩を抱かれたり、腰に手を回されたりとするのだ。
女の子と見れば見境が無い。
俺としては会わせるつもりはない。
「ギルバードさん。絶対にかえでちゃんにはセクハラ禁止ですよ!」
だからだろうか、楓が反応して結構本気で注意をする。
「わ、分かった、分かった」
ギルバードさんは参ったと言わんばかりに両手をあげる。
当然と言えば当然だろう。
これで引き下がれば可愛いのだが……。
「じゃあ、代わりに楓ちゃんで楽しむよ」
と、言うわけだ。
そんな事を言うからギルバードさんは楓に思いっきり足を踏みつけられるのであった。
「ところで、だ」
ギルバードさんは足の痛みを堪えながら俺を見る。
若干、涙目なのを見ると相当辛いのだろう。
自業自得だな。
「何だ?」
「楓ちゃんから頼まれてた訓練用のシミュレータ用意しておいたから」
「ありがとう。ってギルバードさんが用意してくれたんだ」
訓練用シミュレータ。
魔力でキメラを十万体まで生成出来るものだ。
魔力で作られるとは言え、実際のキメラと感触はほぼ同じ。
安全性を重視していて、鉤爪が当たっても大して怪我はしないようになっている。
ただし、大した怪我はしないであって、多少は怪我するが。
ちなみにこれは誠とかえでの訓練のためである。
展開が早いだけにどれだけ鍛える事が出来るか分からない。
二人のために訓練しておきたいのは二つだ。
一対多での効率的な戦い方だ。
ここから二つの訓練が出来る。
一つはいかに限られた魔力で効率的に魔法を使うかだ。
もう一つは多数の敵との戦闘の中での状況判断能力の向上だ。
前者はかえでに問題のある魔法を使った攻撃と防御の効率化。
後者は誠の元々持っている判断能力の向上である。
二人ともこの二つをしっかり鍛えることで生き残れる可能性が高くなってくると思うのだ。
「第二フィールドなら予約無く使えるから、後は受付で受け取ってくれ」
「ありがとう。助かる」
お礼を言うと、礼なら楓のキスでと言ってきた。
もちろん楓に平手を食らうのが落ちである。




