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第4章 訓練(1)

 襲撃の翌日。ルークが地球に対してデモストレーションを行った。

 テレビ、ラジオ、インターネットの全てがハッキングされ全世界に向けてルークによる地球支配が宣言された。

 抵抗は無駄であると事を示すために全世界の主要都市へ一万単位のキメラを投入して来たのだ。

 もちろん各国も黙って侵略されるわけには行かない。

 当然、対抗すべく軍を動かした。

 通常兵器は有効ではあったが、キメラの動きは意外と速く耐久力がある。

 キメラを一匹倒すのにバズーカーや携行型ミサイルランチャ等も相当数消費してようやくと言うレベルだ。

 更に誘導弾でも捕えきれない上に同士討ちすら発生した。

 空からの攻撃も有効だが数が多すぎる上に、飛行型キメラも投入されて制空権も奪われる事態になる。

 結果として都市は半壊。

 投入された軍隊も八割から九割の部隊が全滅し、撤退を余儀なくされた。

 ちなみにこの間、わずかに三時間程度だった。

 PWMMの方は介入すべきかの議論の最中にデモストレーションが終わったことになる。

 俺もかえでもそうだが、余程PWMMを無視して動きたいと思った事か。


 更に翌日。戦力として確保したいというPWMMの意向で、俺たちは並行世界の方へ行くことになった。

 襲撃事件の事もあり、ルークと対抗出来る戦力の保護、管理下に置きたいとの事だ。

 ルークの拠点になりそうな場所の調査は下級の調査員が行う事になった。

「ここが“アース”……。このビルがPWMMの本拠地なんだね」

 かえでが顔を空に向けながら感心しながら言う。

 珍しいのだろう。

 俺達は”アース”に来ていた。

 地球はすでに各国非常事態宣言が出されている状態だ。

 会社も学校も通常業務など出来る状態じゃない。

 そういう意味ではこちらに呼ばれたのは好都合だった。

「かえでは初めてなんだったな」

 そう言いながら俺は目の前の風景を見ていた。

 地上二千メートル級の超高層ビル。

 中の広さは東京ドーム換算で十六倍の面積を誇っている。

 相当に広く大きい。

 存在感がとてつもないのだ。

「秀二兄さんも久しぶりなんじゃないんですか?」

「まあな」

 隣を歩く誠に俺は頷きながら堪えた。

 ちなみに楓は俺達が使う部屋の手続きのために先に本部へ行っている。

 いかに引退をしているとは言え、内部事情に詳しい楓は手際が良かった。

「二年ぶりってところか」

 二年前は義手と義足のメンテナンスのために来たのだ。

 今回は機能障害が出るほど酷使したため、午後からメンテナンスになっている。

「ビルは凄いけど、周りの風景とかは地球とあまり変わらないね」

 かえでが周りを見ながら言う。

 道路を走る自動車があり、歩道や信号がある。

 生活の基本的な部分は地球ともあまり変わりはないのだ。

 エネルギーがクリーンだと言う以外は。

「確かにそうだね。ここと地球は元々は同じ歴史を歩んでいたし、基本的な考えは同じなんだよ」

「そうなんだー」

 誠の説明に感心するかえで。

 ビルのエントランスは噴水が中央にあり、観葉植物が嫌味のない程度に飾れている。

 大理石の床、同じく大理石の壁、後はガラス張りだ。

 ガラスは特殊加工されていて、並みの魔法使いの力ではぶち抜くことは不可能だと言われている。

 かえでは外で見ていたときと変わらず感動しっぱなしだった。

 ホテルのフロントのような受付で俺達二人の手続きを行う。

 指紋と網膜、魔力の波長を登録。それから身分証用のカードを渡された。

 事前にこちらの個人情報は提供されていたおかげで手続きもスムーズである。

 セキュリティに関しては“アース”の最新技術てんこ盛りだ。

 当然だが下手なことは出来ない。

 もっとも何かをする気など無いが。

 ちなみに渡されたカードは持っているだけで掲げるなどの動作は不要。

 建物内であれば居場所も把握出来る。

 ストレージのような機能もあり、資料やらなんやらのデータもこの中に入るのだ。

 PWMMの人間としてこのカードがなければ仕事にならないとも言える。

「何か格好いいよね。こういうの」

 かえではカードを手に取りながら嬉しそうにしている。

 俺なんかは会社でカードをいつも首から提げている関係上、あまり感動はない。

「僕はもう慣れちゃってるから」

 と誠は苦笑しながら言う。

 フロントを通り過ぎて奥へと進む。

 何度来てもそうだが広すぎると思った。

 案内板もとても大きい。

 ボタンを押して行きたいエリアを押すのだが、そのエリア一覧の量も多いのだ。

 まあ、誠がいるからこういったものは使わない。

 はずだったんだが…。

「ねえねえ、これなに?」

 かえでが案内板に興味津々だった。

「これは案内掲示板だよ」

 誠が真面目に答えて、操作をしてみせる。

 その案内板の挙動にすごいすごいと言いながらわたしも触ってみたいと子供のようにはしゃいでいた。

「……。なあ、遊びに来たわけじゃないんだが?」

 俺の言葉に恥ずかしそうに笑うと名残惜しそうに案内板から去ることになった。

 これから荷物を置きに部屋へ行くのだが、実はこのビルにはエレベータが無い。

「ねえねえ、これがエレベーター?」

 エレベーターの入り口のような場所でかえでが聞いてくる。

 両開きの自動ドアに開閉用のボタンのみだ。

「がっかりすると思うが、ここにはエレベータはないんだ。

 行きたい階を入力すると瞬時にテレポートする仕組みになってるんだよ」

 俺の説明に誠も頷く。

 転移装置が各階に存在するのだ。

 エレベーターはコストこそ安いが安全面で転送装置には劣るのだ。

 更に緊急事態の対応を考えれば転送装置で瞬時に移動出来る方がいいわけである。

「えー、つまんない!」

「さっきも言ったが遊びに来ているわけじゃないからな?」

 むくれるかえでに苦笑しながら転送スペース内に入ると指定の階を入力。

 移動して来たのは三二八階だ。

 転送スペース内から出ると、廊下はガラス張りで外が一望出来る。まるで山の上から見るような風景は何もかもが小さく写っていた。

「すっごーい!」

 ここに来てすっかり子供に戻ったかえではここからの風景に圧倒される。

 ガラスにへばり付きそうな感じで風景を見るものだから、通り過ぎていく人たちの視線が少し痛かった。

「かえで、後でゆっくり見れるからまずは荷物を何とかするぞ」

「はーい」

 かえではそういうと外を眺めながら俺達の後について来る。

 用意された部屋は一室のみ。

 一室だけとは言え、部屋は2LDKだ。

 広さに関しては問題ないと言える。

 かえではマンションみたいと興奮し気味に部屋の中へと入っていく。

 リビングで楓がソファーに座って待っていた。

「遅かったね。ちょっと待ちくたびれちゃった」

「ああ、かえでがな…」

 かえでが珍しいんだから仕方ないじゃないと文句を垂れる。

 その姿を見て楓も納得したように頷いた。

 俺はリビングの端に荷物を置く。

 荷物は数日分の着替えだ。

「かえでちゃん、どうだった?」

「もう凄かったです! お兄ちゃんが急かさなかったらもうちょっと見れたのに」

 最後の方は若干、不機嫌そうに言う。

 俺は苦笑しながら誠に声を掛けた。

「誠、お前は午後から何か用事あるか?」

「いえ。特にはありませんが?」

「かえでを案内してやってくれ」

「お、お兄ちゃん! 何、勝手に決めてるの!」

 顔を赤くしたかえでが抗議してくる。

 そんなかえでに呆れたように言ってやった。

「俺は午後から義手と義足のメンテだ。楓はそれの付き添い。じゃ、あとは誰がかえでを案内するんだよ?」

「そ、それはそうだけど…」

 俺の正論を言うととたんに勢いをなくすかえでだった。

「ま、そんなわけだ。とりあえず今日だけは誠に甘えろ。明日からこうは行かないからな?」

 万が一ルーク側に動きがあればすぐにでも出動することになる。

 昨日の今日だから数日はルークも動きがないとPWMMは見ていた。

 根拠は地球に自分の力を示したためである。

 PWMMはルークの本拠地の特定を急いでいるところだし、ルークはルークで急造した自分の組織を固めないとならないはずだ。

 地球へのデモストレーションは終わっているし、時折現れるキメラは現地の調査員が相手できる程度らしい。

 ルークに完全に先手を打たれたとはいえ、翌日にはPWMMも地球に干渉する決定をしたようだ。

 そのため俺達が動くような事態は今のところないというのがPWMMの見解だった。

 俺は誠を鍛える約束を果たしたいし、かえでも鍛える事になっている。

 明日からは特訓を二人に施すつもりなのだ。

「わ、分かってるよ。

 お兄ちゃんが訓練付けてくれるんでしょ?」

「そういう事だ。

 ルークもいつ動くか分からないんだ。

 多少はリラックス出来るが、いつでも動けるようにしておけよ」

「はーい」

 説教くさい俺の言葉に一応の返事をするかえで。

「それじゃ、そろそろ食事にしようか。かえでちゃんもお腹すいてきたでしょ?」

 その言葉にかえでは頷くと俺達は食堂に行くことにした。

 腹が減っては戦も出来ないからな。

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