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第3章 宣戦布告(4)

 ピザも食べ終わり、リビングで寛ぐ。

 キメラやルークとの戦闘の疲れも抜け切ったわけじゃない。

 休める時に休まないと体が持たないのだ。

 コーヒーに、かえではココアを飲む。

「お兄ちゃんは、誠君とも知り合いだったんだね」

 持っていたマグカップを置くと思い出したように言う。

「楓の弟だからな。昔はお兄ちゃんなんて呼んでくれてたぞ」

「じゃあ、お兄ちゃんは弟もいるみたいな感じなんだ?」

「まあな。ちなみにお前の話は前からしてたんだぞ? それだけにあいつ、かえでを候補として見つけたときは慌てながら俺に許可を求めてきたんだ」

 そうだった。

 かえでが魔法使いとして候補にあがった時、かえでを魔法使いにしていいか真剣に聞いてきたからな。

 俺が昔からかえでのことを話していたから気になっていたんだろう。

 心なし上気してしていたのを思い出す。

「じゃあ、誠君ってわたしと会う前からわたしのこと知ってたの?」

「ああ。お前の寝顔の写真とか撮って見せたりしたぞ」

「な! なんてもの見せるのよ!」

 真っ赤になって思いっきり抗議してきた。

 しっかり意識はしてる証拠だな。

 誠がいたら見せてやりたかった。

「悪い、悪い。冗談だ」

「お兄ちゃんが言うと冗談に聞こえないよ…」

 疲れたように言うかえで。

 まあ、基本妹はからかうものだからな。疲れもするだろう。

「ねえ、お兄ちゃんはどうして魔法使いになったの?」

「俺か? 憧れてたってのが一番の理由かな?」

「魔法使いに?」

「ああ」

 子供の頃、よくロールプレイングゲームで遊んでいた。

 当然、ロールプレイングゲームでは魔法などの設定もあり現実には無い楽しさがあった。

 アニメや漫画などでも圧倒的な力で敵をねじ伏せるなど、その力に子供だった俺は強く憧れたものだ。

 当たり前なのだが、これはあくまで空想の中でしかない。こんな事は現実じゃ出来ないし、憧れるだけ無駄だとは薄々感じてはいた。

 ところが並行世界の住民である楓は俺の前に現れたのだ。

 俺は魔法の力に憧れてた。そして家は親は共に仕事している。

 親にさえ心配を掛けなければ出来るだろうと俺は思って引き受けた。

 憧れの世界。魔法の世界で戦うために。

「俺は魔法への憧れが強かったのもあって、その力は絶大だったんだ」

「魔法の力は信じないとダメなんだっけ?」

「そうだ」

 魔法はその力に信用がなければ魔力がいくらあろうと意味が無い。

 魔法に不信を抱いていれば、たとえ潜在的に力はあっても行使は出来ない。

 PWMMの訓練が幼少から育てるのもそういった理由もあるのかも知れないな。

 ともかく、憧れの強い俺は即戦力だった。

「きっかけは憧れだけど、十年前のあの戦いでみんなを護りたい。それが一番強い想いになったな」

「そうなんだ…」

 かえでが尊敬の眼差しで俺を見る。

 ふふん。何か気持ちがいいもんだな。

「かえでは?」

「わたし?」

「そうだ。俺は子供だったから動機は軽いもんだけど、お前は高校生だろ?」

「あ、うん。わたしは誠君の熱意かな?」

「誠のか?」

「うん」

 かえで自身は最初突拍子なことに引き受けるのを渋っていたらしい。

 だけど、どうしても力を貸してほしいと言う熱意に押されて引き受けたという。

 引き受けたからにはしっかりやると言う。

 その辺はかえでらしいと言えばかえでらしいな。

 誠も俺の次に見つけたのが、かえでだった事とは伝えていた。

 そして、かえでに断られた場合の次の候補との力の差も結構あることも。

 それだけにかえでに断れたくはなかったのだろう。

 俺の妹だしな。

「誠、あいつは強い奴だ」

「普段は優しいよね」

「それはあいつが常に自分に厳しいからだな」

 誠は優しい。

 幼い頃から見ていたこそ良く分かっている。

 あいつは自分に厳しい。

 弱音は昔こそ吐いていたが、今はもうあまり言わない。

 誠が弱音を吐くときは相当切羽詰った時に限ってくるのだ。

 それは今回の応援要請がいい例だった。

 明らかに誠の手では負えないレベルの戦力投入で、自分とかえででは乗り切れないと判断したからこその要請だったのだから。

「ん?」

 通信機のバイブレーションが震えるのを感じて取り出す。

 楓からだった。

「どうした?」

『秀君。今、誠の検査が終わったところなんだ。それの報告をって思って』

「そうか。で、どうなんだ?」

『幸い神経には支障なし。若干の炎症は見られたけどこっちで治療するから一日で復帰できるって』

「それなら安心だな。早い処置が幸を成したな」

『そうだね。あと報告がもう一つ』 

 そういう楓が少し言いずらそうな顔をしていた。

 嫌な報告と見る。

「ルーク関連か?」

『うん…。ルークはPWMMの人間にも手を回していたらしくて…。現在、PWMMの人間が五パーセント程ルークの手下になっているみたい』

「…。良くあることだと言いたい所だが…」

『正直、この事実にはみんな堪えてるよ』

 PWMMは非常に強い絆で皆が結ばれている。

 引退しても要請が来れば参加するくらいなのだから、その絆の強さは伺えるのだ。

 そして、それをも揺るがすだけの力を持つルーク。

 この事実は戦力うんぬん以上の衝撃があった。

「大規模な戦争になりそうだな…」

『うん…』

 かなり浮かない顔をする楓。

 楓もこの事実に相当参っているのだろう。

「わかった。ありがとう。明後日からは警戒を強めながら生活をしないとな」

『そうだね』

「あ、誠に伝言。リーダーはお前だから今後の方針を寝ている間に考えろって」

『了解。こんな時でも厳しいお兄ちゃんだね』

「誠には力はともかく判断力とかは抜いてもらわないとな」

 世代交代が早いPWMMだ。

 誠がメインで活躍する時期だってそう遠くはない。

 ましては今回の事件が終わればあいつは相当実績をあげることになるのだからな。

「それじゃ、誠によろしく。お見舞いにかえでのサービスショットでも送るか?」

「お、お兄ちゃん!」

 真っ赤になって講義するかえで。

 でも、実際にやるとしたら満更でもなさそうな顔でもある。

『あはは。それだと誠、頭以外に血が上っちゃって方針どころじゃないよ』

「それもそうか。それじゃ」

『うん。バイバイ』

 通信機がダウンする。

 通信終了だ。

「お兄ちゃん! あんなこと言わないでよ!」

「悪い悪い。誠が寂しいかなってさ」

「そんなわけないでしょ!」

 誠君に限ってそんなことは…と一人で暴走するかえで。

 俺はそんなかえでを見ながら、こういう平和が崩れるんだなという感覚だけが頭の隅に残っていた。

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