九 勘違い??
田名部。
奴は、ツウィッターとか、いろいろチャットとか、ネットでしていて
口が軽く、何でもかんでも、人に広めてしまう。
まあ、別にそれはいいと思っていたが、今回は別だ。
なのに私は気づかず・・・気づいたところで何もできやしないのだけれど・・・。
そう、生まれつき声が聞こえなかった人が、ここまで完璧に完治するのは
私がこの国で初めてらしい。
しかし、私が治ったのは、医者とか薬とかのおかげじゃなく
異世界の力のおかげだ。
しかしそれを言うわけにもいかず・・・・。
誰に言ってはだめか?それはこの世界中の人にだ。
正確に言うならば、メディアだ。
耳が聞こえるようになって二日目。
学校終了のチャイムが鳴り、今日は部活をせずに帰る。
一応、医者から初日と二日目は部活をするなといわれているためだ。
「はあ~。まあいっか。明日からできるし。」
仕方なくかばんを担ぎ、家に向かう。
私は家に着くと、いすに腰をかけ、ゆっくり牛乳を飲む。
「~っぷは~!!やっぱり牛乳最高だわ!」
父さんが帰ってくるのはいつも夜の8時前後。
本当は週に一回ほど飲み会があるらしいが、父さんは私に気を遣ってほとんど参加していないっぽい。
夜の7時ごろになり、キッチン近くの電話の子機がプルルルルルっと音を立てる。
誰からだろう?
お父さんからかな?
そう思って電話に出ると、聞いたことのない声聞こえてきた。
「もしもし?わたくし、〇〇メディアの半澤と申します。桜夢さんでよろしいでしょうか。」
「はっはい。」
「〇〇メディアでは今度聴覚スペシャルを取り上げたいのですが・・・。」
ぴんと来た。知ってるはずないとは思ったがピンと来た。
私は思い切り電話のボタンを押し、電話を切った。
ほっとするのも束の間。
また電話がかかってくる。私は電話の機能などまるで知らないので
ハンカチを、音が出る部分にぐるぐる巻きにしてできるだけ音を抑えた。
しかし、電話の音はいっこうにやまず、もうすぐ8時を迎えていた。
父さんが帰ってくる!私は仕方なく電話の電池を抜き、ポケットに隠した。
急いで二階へ駆け上がるとその頃ちょうど父さんの車の音が聞こえてきた。
私はもうこれで大丈夫だ、そう思っていた。
しかし、もうひとつ心配しなくてはいけないことを思い出した。
「!父さんの携帯!」
私は下の階へ駆け下りた。
「父さんお帰り。ご飯何にするの??」
「ん?今日はな~。肉じゃがにしようと思うんだ。
しかし珍しいな?美智霞が父さんに夕飯を聞くなんて。」
「そんなことないよ。おなかへってたから。」
「じゃあ早めに作るな」
私は父さんとともにキッチンに向かう。
父さんはキッチンに行く途中で、リビングにかばんを置いた。
よし!
父さんは基本的に携帯電話をかばんの一番小さいポケットに入れている。
私は着信がないことを確認し電源を消す。
「そういえば今日、会社の人から電話があるんだ。
この前父さんが作ったお菓子会社で配ったら、部長が食べたいって。」
私はびくっとする。
どうしよう・・・。
でもあれを父さんが聞いたら・・・・。
巻き込みたくないし。
私は仕方なく携帯の電源をいれた。
家の電話の電池を入れて、私は先ほどかけてきた人から電話が来るのを待つ。
私はあまりに驚いてしっかり考えていなかったがよく考えたら、
ちゃんとしっかりきっぱり断れば何とかなるかもしれないじゃないか。
すると手に抱えていた受話器がぶるぶる震えて音が鳴った。
私はすぐにでる。
「はいもしもし!」
「先ほどお電話しましたものですが・・・・。」
「わたくしその件お断りします。」
「え?ちょっちょと待ってください。話も聞かずに・・」
「いえ。言いたいことは大体分かってるので」
「あなたのご家族に耳が聞こえない方がいらっしゃると聞いて
取材したかったのですが・・・・。」
「・・・へ?」
「お断りされるというなら結構です。すいませんでした。」
ツーツーツー。規則的に音が鳴るだけでさっきの人の声はもう聞こえなくなった。
私は拍子抜けして、
しかし、ほっとした顔で父さんの作った肉じゃがを食べることにした。