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壱拾七 二匹のドラグルスと人魂の闇取引

 家に帰ると、辺りの家とは違いひとつだけ真っ暗だった。


「ただいまー・・・。」


私から先に入ると、家の中は本当に真っ暗で、何も見えなかった。


「ふー・・・・。」


ため息をつく。近頃疲れがたまってきている気がする。


久しぶりにゆっくり眠りたい。


・・・とは言っても結局ドラグルス達に眠りを妨げられるのだろうけど。


夢。ユメ。ゆめ。


それは記憶を寝ている間に整理する時に見えるものだと聞いたけど、


私が見ていたあれはどうなんだろう。


私はこんなドラグルスみたいなのとは接触した覚えもないし・・・。


「・・・そう・・・ですか。あなたが忘れていらっしゃるだけでは?」


「へっ!?」


「美智霞?何か・・・。」


父さんが私の声に気づき、振り向く。


「なっなんにもないよ?ほんとにっ!ほんとに何にもないよ?」


私は急いで二階へ駆け上がる。


「あの・・・・いきなり話しかけて来ないほうが助かるんだけど・・・・。」 


ため息をついて背中にいる奴に話しかける。


「すみません。それより名乗るのが遅れました。スキルク・ミスル・ハルノエと申します。


 よく堅苦しいといわれますが、敬語以外はなせないのでお気になさらず。」


「は・・・はあ?まあそれで?あんた何ナノ?」


う~ん。自分でこう言っておいてなんだけど


なんだかこっちがものすごい悪い奴みたいだ。


「私あんたとなんて契約した覚えないんだけど。」


「はっ申しわけございません!ご無礼をいたしました!」


「いやっ?いやいやいや?そんな謝ってもらおうとかそんな事思って言ったんじゃないんだけど?」


「いえいえ、あなた様の母親に、この世界ではそれが常識だと伺いましたもので。


 敬語もそのときに。


 あなた様の母親が私が敬語を使わなかったりした時のあの仕打ちといったら・・・。」


「私の母さんはいったいどんな人だったんだ?

 

 母さん何やってんだよ!」


「すいません!すいません!母親の文句だなんて。」


「ストーップ!やめて!むしろ怖い!」


「失礼いたしました、お気遣いできなく申し訳ございません!」


「やめてないし!」


「すいません!」


「・・・・あーもう良いよ。うん。それで。ってそれどころじゃなくて。


 何であんたが母さんの事知ってるの?後、さっきの質問にも答えて!」


「まったく質問の多い・・・。うっううん。なんでもありません。

 

 わたくしが契約したのは、あなた様の母親です。


 これで二つともお分かりいただけたでしょうか?」


「随分まとめたな・・・。


 ってことは、母さんが私があんたと契約する事を契約したってこと?」


「頭のわりぃーガキだな」


ドラグルスって皆こんななのだろうか・・・。


普段が敬語のせいで尚更心に突き刺さる。


心が崩壊寸前。すでに崩壊してるかも・・・。


母さんが、こいつに対して、ひどい仕打ちをしていた事も納得できてしまう。


これはムカつくわ・・・。


「あっあんた・・・!」


「つまりですねぇ、私は昔あなた様のお母様と契約しておりまして、


 お母様がわたくしにあなた様と契約する用命ぜられたわけです。


 契約の報酬につきましてはお母様がすでに決められております。


 わたくしに自分の娘が13の誕生日を迎えられれば


 そのとき正式に契約を結ぶようにとおっしゃいまして、わたくし


 今日現れる事ができるようになったわけです。


 報酬は人の心の声が聞こえる事ですが、実際頼まれればなんでもできます。


 全く、何でこんな卑劣な人間共の為なんかにこんな事せにゃならんのだ・・・・うっううん!


 えーそれでお望みがあれば何時でもおよびください!


 基本(わたくし)は無口なので話したくはありませんが拷問されるよりはましです。


 後背中にもう一匹いる奴ですがあいつは少し邪魔ですね。


 消えてもらいましょうか。」


私の怒りを察したかのように、私に怒る間も無くなるように、つらつらと私の質問に答えてきた。


「へ?どっどういう事??クウィルバーの事だよね?


 ってかその前になんか物凄く嫌味を言われた気がするけど気のせいだよね?」


スキルクの口笛が聞こえてくる。


「馬鹿だ、な・・・・ううん!


 何にもご存じないのですね・・・可哀そうに・・・・」


とても感情をこめて私を哀れんでいる。こんなんでいいのか?私!


「見えないけど哀れむ視線はちゃんと感じてるから・・・。」


「あの者はミリノリアスの出身で、わが神聖なる国、インドリブスと敵対しているのです。


 あのものが何を言ったかわかりませんが、信じないほうが身のためかと。


 この世界にこられるのは、魔法における能力の高い上級階級のみであり、


 彼の紋章を見る限り、下級階級の出でことが伺えます。


 おそらく何者かが彼の後ろ盾をし能力を分け与えているのでしょう。


 そして、あなた様の背中に浮かぶ炎は、正式な契約であれば見る事はできません。


 通常、炎は、あなた様が今首から下げておられる首飾りの玉の中にしまわれております。


 あなた様の背中にある炎は放って置くと、徐々に小さくなり、

 

 消えかける寸前に大きく燃え上がりあなた様の体を焼き尽くすかもしれません。」


「かもしれないって・・・。私死ぬの?」


「私も聞いた事しかありませんが・・・。


 あなた様は死ぬだけではなく、その体に宿る魂さえも奪われる可能性があるそうです。


 つまり、もう二度と生まれ変わる事も意思を持つ事もできないという事でしょう。


 人魂じんこんはどうやら我々の世界の闇市場で高値で取引されており、

 

 人魂を食すと、たちまち魔術能力が上昇するんだとか。」


「ひぃい!じゃあ、あんたもその為に・・・・。」


「失礼な事を仰せられますね。わたくしそのような事考えてもおりません。


 上級階級のドラグルスたちには仕事がちゃんとありある程度の賃金を国から頂き、


 正式な市場で専用の、能力アップの薬を買う事ができますから。


 それは安全なので大丈夫なのですが、人魂は急激に魔術能力が上がる代わりに


 肉体、精神に大きな影響を与えると伺いました。


 精神的に言えば、幻覚、幻聴などの快楽症状。


 魔術能力を上昇させるためではなくその為に人魂を欲する上級階級の者も


 いるとお聞きしました。


 彼の住むミリノリアスはインドリブス、キラグラブスそれからハニギシアス


 の三ヶ国と隣接しており、人魂の闇取引が盛んな事で有名です。


 今回のその「クウィルバー」とやらの親玉の狙いは金か快楽のどちらかと私は予想しますが。


 何かその者は仰っていませんでしたか?」


スキルクはとても真剣な雰囲気を放っている。


「う~んと・・・。確か・・・


 ドラゴンの中でも五個に国が分かれていて、世界が空と海でつながっていて、


 私たちの海とつながっている世界に行くには


 あいにく人間の力も必要だとか何とか。


 ああ、それと確かその世界に行こうとするのには理由があったはず。


 そっちの世界のシーマリズとつながっている世界の魔法に対抗する勢力に


 対抗できる物質を手に入れるためだとかなんとか・・・。」


「・・・随分と物知りですね。


 上級階級のものでなくてはそこまで知っているはずないのですが・・。」


「私に言われても・・・。」


「そうですね。そろそろ出てきてもらいましょうか、下級階級の愚か者よっ!」


へ?・・・ドラグルスって姿出すことできるの?


急に目の前が明るくなる。っというより眩しくなる。


私が眼を再び開けるとそこには、二匹の勇ましいドラグルスの姿があった。


「こうして人間どもの世界に姿を現すのは何十年ぶりでしょうかねぇ?


 っとはいいましても、最大限に小さくしたこの大きさでなくてはこの部屋に収まりきらないので


 本来の大きさではないのですがねぇ・・・。」


「・・・・・。」


クウィルバーと思われるドラグルスは黙り込んだままだ。


無口なのはスキルクの方だと聞いたのに。


「クウィルバー・・・。」


「美智霞・・・。すまねぇ・・。」


「ホントッ下品な言葉遣いであられる事ですねぇ?」


一階から父さんの作るおでんのにおいが漂ってくる中、私の目の前では


夢の様なことが繰り広げられているのだった。

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