壱拾六 二度目の病院と契約者
なんだかここ最近、病院を利用することが多い気がする。
本当のことだけど。
「父さん・・・。」
静かに目を開けると、父さんのしかめっ面があった。
少し遠くでこの間世話になった医者となにやら話し込んでいる。
「うっ・・・。」
起き上がろうとすると背中がなにやらずきずき痛む。
まるであの時の様だ・・・。私がクウィルバーとであった次の日の朝の事の様。
「イッイタイ・・・。」
「美智霞?起きてたのか。大丈夫か?」
「父さん・・・。珍しいね。」
やけに冷静沈着だ。いつもならもっと、こう・・・・。
「なにが・・・?」
「あ・・ううん。なんでもない。」
そっけなく返事をした後、父さんは医者と病室を出て行った。
「?」
なんなんだろう・・。変な父さん。
「ん?これって・・・・」
私が気づいて手に取ったのは、母がつけていたネックレス。
中央に水のようなものがはいった玉が付いていて、透き通るように綺麗だ。
私は小さく微笑みながらそのネックレスに手を触れる。
「・・・・あったかい。」
わたしはネックレスの玉に顔を近づけ暫く眺めていた。
そして紐の部分を持ってゆっくりと自分の首に掛ける。
「なんだか・・・ねぇ。本当に懐かしい感じがするよ・・・。」
一人病室で呟く。母さんには聞こえているだろうか。
私はさすがに暇になり、ドアの隙間からこっそりと外を見てみた。
すると目の前を看護師さんが通り過ぎていった。
「皆大変そう・・・・。ってやっぱり暇だぁ・・・。」
私はベッドの上に戻り、ふとある事に気が付いた。
「もしこれがあの時と同じなら、あのときみたいに背中にくっきりと紋章があるはず。
いや、それ以前に私は契約をしたのか・・・?」
気になることだらけだ。
「そうです・・・・貴方は私と契約をしました。」
「うぉあ!」
突然後ろから声をかけられて慌てふためく。
「しかしながら私、まだしっかりと契約ができておりませぬ。」
「?そうなの?、ていうか、そもそも夢の中にも現れないでどうやって契約したの?」
「それは・・・」
「美智霞、帰ろう。医者にはちゃんと薬ももらったから。」
突然、ドアが開いた。父さんだった。
私はベッドから降りてゆっくりと歩き始めた。
「くそぅ・・・。聞きたいこといっぱいあるのに・・・・」
ボソッと小さく呟く。
「?何か言ったかい?」
「ううん。何も無いよ。」
父さんはなぜかいつもよりも怖い顔をしていた。
「美智霞。ちゃんと薬毎日欠かさず飲むんだよ。」
「?あ、う、うん。」
父さんの真剣そうな顔に私は驚いた。
本当に今日の父さんはいつに無く真剣で、珍しい。
「帰ろうか。」
「うん。」
そうして言葉数の少ない親子はゆっくりと病院の自動ドアを通って帰っていった。