壱拾四 炎と紋章
『最初から親友だなんて思ってなかった!』
あの言葉が私の中で何度も響く。
私は呆然と中庭を歩き続け、プールの横を通り、部室に向かう。
プールの横を通るときあの時の事を思い出した。
「あっ・・・。」
結局あの時の事に亜莉奈は関わっていたのだろうか。
分かるはずもないが・・・。
髪の毛をひとつにしばり上げ、部活を始める。
「はあぁ~・・・・。」
私の小さなため息は誰にも聞こえることなく消えていく。
人一人いない運動場を私は一人時計の音と共に走り回った。
『ピィーッ』
時計は24分18秒22を示す。
前よりは少し速くなったかな?
風の音はやはり綺麗だが何度も聞くと少し飽きるなぁ・・・。
私は運動場に背を向けさっき来た道を戻る。
プールの横を通り、中庭に入る。
先ほど、私たちが話し合った場所にはもうすでに彼女はいなかった。
委員会ちゃんといったかな。
そう言えば、今日は父さんが珍しく平日に休みをもらっているらしい。
とりあえずさっさと家に帰ろう。
家の、門を通り、玄関のドアに手をかけるとすでに鍵が開いていた。
中からはテレビの音が漏れていた。
「父さん?」
「あぁ、美智霞か。おかえり。遅かったな?」
「ちょっと部活が長引いて・・・。」
私が部屋に入ると父さんは少し心配げな眼差しで私のように振り向いた。
「あまり無理するんじゃないぞ。」
「うん。分かってる。」
「本当か?無理してないか?」
父さんの心配性が発動した。
全くこれだから父さんは。
「疲れたから一休みしてくる。」
「ほらやっぱり無理してるんじゃないか。父さんのせいで苦労かけてすまないな。」
「ううん。本当に大丈夫だから。無理なんかしてないってば。」
しかしその後どれだけさとしても、父さんは心配そうに「でも・・・」と繰り返していた。
そんな父さんはさておき、私はちゃっちゃか二階の自分の部屋に向かった。
ベッドに腰を置いて、服を脱ぐ。
背中にある白い炎に手を当てる。
「熱く・・ない。」
私の部屋に唯一ある小さな鏡を後ろにまわし、振り返る。
「ん?あれなんか、もう一個別に模様が増えてない?
それに前より炎が小さくなって・・・。」
「おい。俺に聞きたいことあったんじゃなかったのか?」
クウィルバーか・・・。
「あぁ。そうだった。私ってもしかしてエスパー的な・・・?」
「ん?なんだそりゃ俺は知らんぞそんな物。俺のほうも変なんだ。」
「変て何が?」
「さっきお前が言ってたことだよ。お前の背中にもう一匹いるかもしれない。」
「いるって何が・・・。」
察しは着いている。だが・・・。いやそんなはずは・・。
それしかない。
私の背中にもう一匹ドラゴンがいるのか?
「大体察しは着いているようだな。まあたぶんそのとおりだと思うぜ?
お前ほかに何か心当たりはないか?
例えば、前できなかったことができるようになるとか。
俺みたいのを夢で見たり・・・さぁ?」
「ん~~~、なんかあったような・・・
ゆめ、ユメ、夢・・・・。ああ!一昨日ぐらいに似たような夢なら見たわ!
あんたの言うできなかった事ができる様になるっていうのは、
私がさっき言ったことぐらいだと思う。」
「な~るほど~・・・。うん。夢でなんか言ったりしてなかったのか?」
「ほとんど何も。何かボソボソッと『忘れるな』だとか何とか。」
「そうか・・・。そいつと今話せるか?背中にいるんだから。」
「名前がわからないのになんて呼べばいいのよ!?」
「さぁな。自分でそのくらい考えろよ。」
「ちょっと!」
その後何度話しかけてみてもクウィルバーももう一匹?と思われるものも返事をしなかった。
無視って・・・。聞こえてるくせに。気分わるー・・・。
私は再び背中の模様を鏡を使ってみようとしたが
鏡小さすぎてとてもじゃないけど見れそうにもなく、風呂に入る時見ようと諦め、
下の階から漂ういいにおいに誘われ、階段をよたよたと降りていった。