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無謀! 瞬発力企画2 会場  作者: しいな ここみ
第四回目 『オーボエファイター木村』
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猫舌威さまのオーボエファイター木村

 青空の下の音楽堂。

 僕の独奏の最後の音が皆に届き、わっ、と拍手に包まれる。


「すばらしい演奏でしたね!皆さま、『オーボエの王子様』木村ソウタさんに、大きな拍手を!」


 進行の女性が来場者にマイクを向けると、最前列の小さな子供たちも一生懸命、手を叩いてくれる。可愛いなぁ。

 恥ずかしがり屋の僕だけど、野外アマチュアコンサートに思い切って応募してよかった。


(あ、彼も見てくれてるかな?)


 去り際にきょろきょろ、ステージから客席を見渡すと、一番うしろで遊具にもたれ、腕組みしている赤いマフラーの彼。

 僕と目が合うと、ぐっと親指を立ててくれた。

 良かった、と唇が動いた。やった!

 僕は早く感謝の気持ちを伝えたくて、彼の元へと向かった。



 今朝、野外ステージに来る途中で、僕は楽器ケースをひったくられてしまった。

 現金入りのアタッシュケースにでも見えたんだろうか。「あっ」と言って振り向いたときには、もう二人乗りバイクは遥か遠く。

 せっかく、人前で演奏ができるチャンスだったのに。オーボエという楽器を、皆に知ってもらいたかったのに。

 自分に自信のない僕が、迷って迷って、やっと決心したのに……。


「ここで待ってて」


 絶望した僕に聴こえたのは、もう一台のバイクの音と、優しい声。

 風のように僕の横を駆け抜けた彼のバイクは、ひったくりバイクにあっという間に追いつき……



「ほら、君のでしょ」

「あ、ありがとうございます……っ! 良かったあ……」

「へえ、今日はここで野外コンサートがあるんだ。君も出るの?」

「は、はいっ! このオーボエで……」

「え、俺、オーボエ奏者のオーボエ取り返したの!? うわ、いいことしたぁ」

「はい、大感謝です! ……あ、あの、もし良かったら、見ていって下さいませんか? 僕、貴方への感謝を込めて演奏します!」

「いいの? 喜んで! あ、俺は初音ムジカ。音楽関係…の仕事してるから、耳は肥えてるぜ?」

「えー、緊張してきた……」



 そうして彼、ムジカは約束通り、僕の演奏を聴いてくれたんだ。

 どうだったかな、僕の感謝、伝わってるかな……


「グィロロロロロ!!」


 ……え、何の声?

 ステージ裏の機材の暗がりから、変な声がする。

 僕はゾクリとした。最近の奇妙なニュースのせいだ。

 有名な音楽家や歌手なんかが、変な声が聴こえたあとに行方不明になってる、ていう。

 怪物を見た、とかの噂も。

 でも僕は、まだ駆け出しの音楽家だ。彼らは有名人だから狙われたに違いない……と思ってた。

 今日、二回目の絶望を目にするまでは。


「グィロロロロ!」

「うふふ、貴方、木村ソウタっていうの? とっても魅惑的なオーボエね。皆、貴方の音の虜になっちゃいそう」


 大きな口をドラム缶のように開けた怪物と、それを従える冷たい目の黒衣の美女が、暗がりから出てきた。

 僕は、一瞬で理解した。

 あの噂は本当だったんだ。

 こいつらが、音楽家を拐っている犯人!


「ねえ木村ソウタ。音楽は偉大よね。なんたって、言葉が分からなくても脳みそを直接刺激するんだもの。ヒトなんて、音楽で支配し放題!」


 美女が叫ぶと、怪物の口がガバァと膨れ上がり、僕を……飲み込んだ。




 ……あ、あれ……僕はどうしたんだろう。

 死んではいない。痛みは……あったような、なかったような。

 ……そうだ、オーボエ、大事なオーボエは……


 手に持ってたはず、と右手を動かすと、銀色の硬いものがカチ、と言った。

 ……え?

 左手も見る。同様にカチ、と音を立てた。

 なにこれ、と声をあげる。


「ボエエエエエ」


 なにこれ、……なにこれ!

 僕の身体が! オーボエになってる!


「ボ、ボエエ、ボエエエエエ!!」


 なにこれ、なにこれ!!

 これは僕じゃない! こんな、怪物みたいな姿なんかしてない!

 戻して! 戻してよ!!


「ボエエエ!! ボエエエエエエエ!!!!」

「あーっはっはっは! 素敵な悲鳴だわ、木村ソウタ。今から貴方の名は『オーボエファイター木村』。その美声で人間どもを殲滅してやるのよ!」

「ボエ、ボエエエ……!!」


 ダメだ、鳴くと、声が衝撃波になってしまう!

 ステージ上の照明が破裂して、ガラス片が降り注ぐ。ステージが割れて、人が落ちてゆく。

 ダメだ、僕から離れて!

 誰もケガさせたくなんかない!

 こんなの嫌だ、嫌だああああ!!


「そこまでだ!」

「だ、誰っ!?」


 ……ああ、ムジカの声だ。

 僕に「待ってて」と言ったあの声とは、同じ声だけど、怒りが込められた声。


「ボ、エ……」


 きっと、僕を助けたときみたいに、会場の皆を助けようとしてくれてるんだ。

 不思議と、ムジカが来てくれたから、もう大丈夫って思った。


 皆を助けテ、お願イ。

 僕が、僕でなクナって、シマう、マエ、ニ…………




「ああ、ソウタ。その『(こえ)』、受け取ったよ。

 ……俺は、残響の守護者『Harmonia(ハルモニア)』。嘆きの声を、聴き逃がしはしない!」




―――――――――



特撮ギャグです。ギャグですよ!



ギャグというよりちょっといい話。よく中のソウタに気づいてくれた!(ㅅ´ ˘ `)♡


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― 新着の感想 ―
シロクマシロウ子さま»感想ありがとうございます。続きはもしかしたら後のお題で……? あ、私は☆はすぐ入れます。ジャケ買いみたいなもんで。連載終わったら(途中でも)感想して昇華かな。マラソン選手に補給あ…
ソウタを呑み込んだ怪物は彼と一緒にそこにいるんだろうか? ハルモニアは二対一の戦いを強いられるのか。
 う~む、そうきましたか。  これはある意味正統派……なのかな?
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