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無謀! 瞬発力企画2 会場  作者: しいな ここみ
第四回目 『オーボエファイター木村』
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御田文人さまのオーボエファイター木村


 長い一日だった。

 自宅最寄り駅に降りた所で私はようやく一息が付けた気がする。


 カレーショップのフランチャイズに加盟し、今日が新規オープンという日に担当SVとの連絡が付かなくなった。

 それでなくとも直前でオープニングスタッフが一人退職しており店の空気は最悪だった。


 焦って、かなり感情的に本部にクレームの電話を入れた。

 加盟なんかするんじゃなかったと思った。

「まったく未経験の分野でしょ?やめた方がいいのでは?」

 と、事業拡大に不安を示した妻の顔が過る。


「未経験だからフランチャイズなんだよ。本部のノウハウを学びながらやればいい」

 そう啖呵を切ったものの現実はこれだ。本部の支援が無ければここまで脆い自分に愕然とし、情けなくなった。『オーナー』という肩書に胡坐をかかず、もっと細部のオペレーションまで学んでおくべきだった。

 様々な後悔が巡る。


 幸い急遽代わりに来たSVの支援の下、初日は無事終えることが出来た。

 彼は前任のSVよりも随分馬が合う。今後も担当してくれるとのことなので、なんとか見通しが立った。

 こんなトラブルがあったことは、家族には黙っておこう。

 そう決めて自宅のドアを開ける。


「お帰りなさい。どうだった?」

 ダイニングにいた妻が声をかけてくれた。

「めっちゃ忙しかったよ」

「いいことでしょ」

「そうだね」

「うん!カレー臭い!」

「一日いるとこうなるね。明日から着替えを持って行くよ」

 私は来ていたYシャツを洗濯機に入れ、リビングに入った。


 息子がゲームをやっていた。

 見たことが無いゲームだ。

「新しいの買ったの?」

「うん」

 息子は画面から目を離さず答えた。アクションゲームのようだから、目が離せないのだろう。


「小遣いだからいいんだけどさ、また変なゲーム買ってきて」

 と妻がこぼす。

「変なゲーム?」

 その質問に妻が傍らに置いてあったゲームのパッケージを見せた。


 タイトルは『オーボエファイター木村』と書いてあった。

 画面を見ると木村らしいキャラクターが、機械生命体らしき敵をオーボエでぶん殴っていた。


「なんか懐かしいな」

 私は呟いた。

「昔もあったの?」

 息子がこちらを向いて言った。中学にもなれば、もう昔ほど懐いては来ないが、ゲームの話だけは食いついてくる。


「いや、こんなちょっと変なタイトルのゲームはけっこうあったんだよ。『超絶倫人ベラボーマン』とか『がんばれ森川君2号』とかね」

「面白いの?」

「森川君は知らない。ベラボーマンは面白いよ、たぶんアーカイブでも出てるな」

「へー、あっ死んだ!!」

 話している最中にボスにやられたようだ。


「父さん、ここだけ手伝ってくれない?」

 息子がコントローラーを差し出した。どうも多人数プレイが出来るらしい。それを見て私は妻も呼んだ。


「父さんは前田がお勧め」

 と息子が言う。勧められたのは『エレキ海賊前田』というキャクターで、エレキギターで突くのが基本攻撃、必殺技は雷を落とす。


「母さんは牛島かな。連打してればいいから」

 さほどアクションが得意ではない妻が勧められたのは『和太鼓力士牛島』というキャラクター。通常技はバチで叩く。必殺技は地震を起こすとのこと。


 キャクターを選択し、ゲームをスタートする。

 ボスの手前から再開。

「なるほどな。エレキと太鼓が加わるのか」

 私が気づいたことを口に出す。キャラクターが増えると各キャラクターの楽器の音がBGMに加わるシステムらしい。

「カッコイイっしょ!」

 息子は得意げだ。


「母さんは後ろで連打してて!父さんは周りの雑魚を始末して欲しい!」

 ボスと戦いながら息子が指示を出す。

 今日買ったばかりのはずなのに、もう傾向を分析して作戦を立てている。


「よし!ありがとう!」

 我々は言われるがままに動いていただけだが、それで息子はあっという間にボスを倒してしまった。

 まったく、子供も適応力というのはたいしたもんだ。


「このまま次の面も出来る?次の面クリアしたらセーブして止めるから!」

 憎たらしいことに、コイツは親の心理を読んでいる。

 子供にお礼を言われると弱いし、『ここまでやったら止める』という条件を先に出されると、なんか許可しやすくなってしまう。


「次の面だけだよ」

 妻が先に了承したので、私も付き合うことにした。


 ゲームをやりながら、ふと前任SVと退職したスタッフの顔が浮かんだ。

 彼らともっと上手くやれなかっただろうか・・・


 今更後悔しても遅いのだが、そんな念が沸いてくる。


 オーボエに、エレキギターに、和太鼓。このムチャクチャな組み合わせだと思ったBGMが、なんだか耳になじんで来たからだ。



―了―


お父さんのオフショット(*´ω`*)


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― 新着の感想 ―
連載続いているの凄いですね。 日常の普通の空間だからこそ、オーボエファイター木村 ワードが出た時に何故か笑った私を許してください。 ゲームタイトルならまだ…………ありそうですよね。ʕ•ᴥ•ʔ⭐︎
>二角さん 牛時はパワータイプで、連打で力押し出来るイメージなので自分も多分牛島派です >笹門さん 今じゃめっきり少なくなった2Dアクションのイメージです! >戯言士さん そう、あの時代のちょっと…
すごい! このタイトなお題で、ここまで連載できるのか! 脱帽です。。
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