斉藤寅蔵さまのたこやき
《秘密情報局員ヤス》
俺はこの国の秘密情報局員。
コードネームはヤス。
情報局は地下組織の工作員がこのフェスティバル会場でのテロを計画してるとの情報をキャッチした。
そこでフェスティバル当日の今日、テロ防止のため、多数の情報局員を秘密監視員としてこの会場に配置。
俺も目立たないようにとたこやき屋に扮しての会場の監視を命じられたのだが。
「ニイちゃん、たこやきひとつ」
「はい!500円になります、ありがとございやしたー!」
「ニイちゃん、そろそろ具入れんと焼き上がってまうで」
「うわ!ヤベ、あ、ありがとございやす!」
「ニイちゃんこっちもたこやきひとつー」
「はい!ただいまー!」
「ニイちゃんなんか焦げそやないか?」
「うわああ!すみません!」
焼いてる手元見るのとお客さんの相手するので精一杯で会場の監視どころじゃないよ!
なんならお客さん達に指摘されまくって『手際の悪いたこやき屋のニイちゃん』として目立っちゃってるよ!
仕方ないだろ普段たこやきなんて焼いてないんだから!
そうして必死でたこやきを焼く俺の前に、黒いソフト帽をかぶった男がやってきた。
「……青のり抜きで。かつおぶし多めに」
そ、その合言葉は……
「顔はそのまま視線だけを左に向けろ」
声をひそめて黒ソフト帽の男が俺に言う。
「射的屋に黒コートの男がいるな?」
「はい」
「奴がホシだ」
「まさか……」
「さっきから射的で三回連続景品とってる。あの腕前、ただ者じゃない」
根拠それ?
「あ、今度はスペースノーチラス号ハイパーのプラモまでとりやがった!あれも俺欲しかったのに!畜生!許さねえ!」
私怨じゃねーか。
「あ、あいつが店を離れる。お前は奴を追え。この店は俺が残って、ウッ」
黒ソフト帽の男は最後まで台詞を言い切ることができなかった。
なぜなら俺がこっそり呼んだ情報局員二人に両脇から押さえられ特殊な注射を打たれたから。
グッタリした黒ソフト帽の男は、介抱するていの情報局員二人に連れられていった。
よく調べてたようだったが、残念だったな。
合言葉は直前に『タコ抜きで。ワサビ多めに』に変わっていたんだよ。
『青のり抜きで。かつおぶし多めに』なんて普通のお客さんも言いそうで紛らわしいからな。
ちなみに黒コートの男は情報局の先輩だ。
人が必死に働いてる(二重の意味で)ときになに遊んでんだよ……
~二ヶ月後~
ふたたび俺は前回とは別のフェスティバル会場で、たこやき屋に扮して会場監視をしていた。
……いやだから無理だって!普通に一般人を装っていればいいだろ!前回だってたこやき屋やってたからホシ挙げられたわけじゃないって!
「ニイちゃんタコ入れ忘れとるで」
「うわあああ!?ヤベ、ご指摘ありがとございやす!」
経験者が語ります。たこやきを作りながら周囲に目を配るのは無理です(*^^*)




