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無謀! 瞬発力企画2 会場  作者: しいな ここみ
第三回目 『たこやき』
74/102

かぐつち・くまナぱ(便乗期間限定w)さまのたこやき

『春の世の夢──たこやきのお祭り』


──午前八時。


瞬発力企画、第三回のお題が発表された。


「……たこやき」


常磐元子(ときわ もとこ)は、六畳一間のアパートでつぶやく。


《感情値:微増》


枕元のスマホ(ヒビキ)が光る。


「微増ってなに」


《空腹指数と幸福予測値が同時上昇》


「そりゃ、たこやきってのは……もういいって」


少しお腹が鳴った。


別のふところ具合は、厳しい。


昨日確認した通帳の数字は、笑えないほど静かだった。


「お題を書きたいけど……働くしかないか」


《提案済みアルバイト:業務スーパー“マムー”》


「うん。今日から行かなきゃ…」

 

◇◇◇

 

業務スーパー“マムー”は、庶民の味方だ。

段ボール陳列、特大パック、謎に安い冷凍食品。


そして入口横、簡易プレハブのフードコーナー。

赤いのぼりがはためいている。


たこやき

ソフトクリーム

焼き芋


「……昭和のテーマパーク?」


《価格帯:極めて良心的》

 

店の入口をくぐる。


──店長は丸顔で優しかった。


「元子ちゃん? フード担当ね」


「はい」


「たこやき焼ける?」


「家で冷凍なら」


「……まあ大丈夫。回せばいいから」


時に優しさは、”雑”とも呼ばれる。


◇◇◇


丸い穴が並ぶ。

油の匂い。

キャベツ、天かす、紅しょうが。

じゅわ、と音が立つ。


挿絵(By みてみん)


そして元子は、先輩──四十代半ばほどの男性、と共に鉄板の前に立つ。


《温度管理、重要》


「今やろうと思ってた」


元子の周囲を、ヒビキがふよふよと浮遊している。


「生地は八分目。入れすぎると崩れますよ」


元子が生地を流し込みすぎると、先輩は黙って余分をすくい取り、自然に整える。


その姿は、ただのアルバイトというより、場数を踏んだ職人のようだった。


《回転タイミング、三秒後》


「指示が細かい」

 

竹串でくるり。


半月が球になる。


「焦りは、丸さを壊します」


先輩は、無駄のない手つきで鉄板に向かう。


低く落ち着いた声。


「…たこやきの話ですよね?」


「ええ。──今は」


“今は”。


――この人、どこかで見たことがある。


元子は竹串を握りながら思う。


テレビでもない。動画でもない。もっと向こう側──紙の上で出会ったような感覚。


もちろん直接の関係は、まったくない。


ないはずなのに。


《脳内既視感、発生。検索しますか》


「やめて。変な一致出されても困る」


《一致率、あえて未表示にします》


ヒビキは時々、空気を読む。読み過ぎる。


「どうかしましたか?」


「い、いえ!」


視線が合う。


先輩の目は穏やかだが、奥にわずかな影がある。過去を語らない人の目だ。


「……できた」


《形状:合格》

 

「たこやきは、丸く収めようとしすぎると歪みますが、筋がいいですね。」


「自然に任せるのがいちばんです」


その言葉が、やけに重い。


「あ、はい!」


元子は首を振る。


そして最初の客は、小学生二人組。


「「ひとつください!」」


「はい」


元子は、ソースをかける。


青のり、かつおぶし。

 

湯気が立ちのぼる。

 

「お待たせ」

 

小学生は食券を握りしめている。


しわくちゃ。


「「ありがとうー!! うまそー!」」


《取引完了》

 

小学生は笑い、走っていく。


元子は、鉄板の前で、たこやきを分け合うであろう、ふたりの姿を見送る。

 

「…ヒビキ」


《はい》


「これ、好きかも」


《理由推測:即時的な幸福の可視化》


「難しい言い方やめて……とりあえず…」

 

店の前には、数人の列ができている。


「焼いて、焼いて、焼きまくります!」


宣言のように叫ぶと、先輩はほんの少しだけ笑った。


「ええ。その意気です」


くるり、と先輩の竹串が動く。


生地は一切崩れず、完璧な球を描いた。


─午後。


部活帰りの女子高生。

買い物帰りのおばあちゃん。

作業着の男性。


みんな、数百円を出していく。


元子と先輩のふたりと、スマホ1台は、たこやきを焼き続ける。


決して多くは無い、お金。

 

あの時(欲との邂逅)は、重かった言葉。

 

でもここでは。

 

たこやき六個分。

ソフトクリーム一巻き分。

焼き芋一本分。


それだけだ。

 

巨大な欲望も、打算もない。


「増幅しない幸福、か」


《欲望指数:安定》


元子は、まかないとして食べていた、たこやきを見つめる。

 

「ヒビキ、半分あげる」


《──物理的摂取不可》

 

「うん、わかってるけど……気分」

 

《……受領》

 

六畳一間。

貧乏。

アルバイト。

たこやき。


世界は大きく変わらない。

 

でも、今日のふところは、昨日より少しだけ温かいと元子は思った。


◇◇◇


夕暮れの光が、プレハブの屋根を朱に染める。


「たこやき、三つですね。──あと十分ほどで、出来立てを提供できます」

 

先輩の落ち着いた声がフレハブに響く、その瞬間。


《異常波形検知》


――どさり。


鈍い音。


買い物袋が地面に落ちる音ではない。

もっと、重くて、生身の音。


元子の心臓が跳ねる。


「え!?…」


視線の先、駐車場の白線の上に、ひとりの女性が倒れていた。


長い髪がアスファルトに広がる。

淡い色のワンピースが風に揺れる。


その姿が、ふいに重なる。

──昔、倒れた母の姿。


胸の奥が冷える。


「先輩! 鉄板と連絡、お願いします!」


「ええ。任せてください。──店内に伝えます」

 

先輩は即座に火力を落とす。無駄のない動きだった。


元子は駆け出す。


アスファルトの匂い。夕方の湿った空気。


女性のそばに膝をつく。


「大丈夫ですか!? 聞こえますか!?もしもし!?」

 

「…う、うぅん…」


返事はあるが、ぐったりしている。


その腕も、首も、指先も──まるで、たこやきに刺す竹串みたいで頼りない。

今にも折れてしまいそうな、危うい線。


背中を揺らす。


《血糖値低下推定》


「しっかりしてください!」


そのとき。


服の内側から、ふにゃりと柔らかい感触。


しかも。

 

もぞ。

 

「……え?」

 

もぞもぞ。


背中のあたりが、もぞり、と動いた。

 

「……え?」

 

もぞもぞ。

 

「ひゃっ!?」

 

元子は飛び退く。

 

女性の背中側、襟元のあたりから、何かがにゅっと顔を出した。


ちいさな鼻。

つぶらな瞳。

長い胴体に短い手足。


きゅ、と小さく鳴く──白いフェレット。


するりと襟元から這い出し、女性の頬を鼻先でつつく。


まるで、「起きて」と言うように。

あるいは、「助けて」と。


《女性。栄養不足の可能性。血色素低下、体温やや低め》


ヒビキの冷静な分析が、元子の意識を現実に引き戻す。


夕暮れの駐車場。

車はあるが、他に人影はない。


ゆっくりと、女性が顔を上げる。


「食べるものが無くて……創作のエネルギーが、湧かなくて……」

 

創作。

 

元子の胸が、ぴくりと反応する。

 

「気分転換に外に出たんです。春めいた陽気でしたから。ナッくんも一緒に」

 

女性の抱いたフェレットが、「きゅ」と鳴く。


「何も食べてないんですか!? 創作って……何を?」

 

元子が踏み込もうとした、そのとき──低いエンジン音。


業務スーパー”マムー”の駐車場に、黒塗りの大きな高級車が滑り込む。


庶民的なスーパー駐車場と、異様なまでに豪華な構図の対比。


「え、今度はなに!?」

 

《車両価格帯:場違い》


高級車は、元子たちの近くにゆっくりと停車する。


車から数人の黒いスーツを着た男たちが現れる。


《異常な感情増幅波を検知》


ヒビキが青い光を放つと同時に、後部座席のドアがゆっくりと開く。


いつの間にか、車から駐車場の地面へと、一本のレッドカーペットが敷かれている。


カーペットは鮮やかな深紅で、夕日の光を受けて、元子たちの方に伸びていた。


開ききったドアから降りる、豪奢な黒いドレス。


金糸のように流れる長い髪が、地面に触れそうなほど。


背筋は美しく伸び、完璧な所作。


真紅の布の上をこちらへ、静かに歩み寄る──だが、人の姿。


《対象:金糸の魔女》


「…アウレリア……」


ごくり、と元子の喉が緊張に鳴る。


しかし。


「お迎えにあがりました」


フェレットを抱いた女性の前に、恭しく跪いた。


魔女は、元子を見ていない。


「あなたが空腹で倒れるなど、あってはなりません」


長い金髪が前に垂れ、その表情は隠されている。


声音は、甘い。


空気は静まり、風だけがレッドカーペットの端をわずかに揺らしている。


(私じゃない? この女性を特別視してる?…でも、これ服従じゃない)


《概念:演出》


見る者には分かる。


それは、支配者が選ぶ、あえての低姿勢。


「…空腹だからこそ、浮かぶ創作があるのです」

 

それは、虚勢か、真実か。


金の瞳が細められる。

 

「ここに創作の鍵があると?……ならば、与えましょう」

 

アウレリアの指先が、わずかに光る。

 

「資金を。環境を。評価を。拍手喝采を。無限の支援を」

 

それは、誘惑。


甘やかな空気が、駐車場を包む。


「あなたの創作は、世界を動かす。ならば、相応の富を持つべきです」

 

元子は息をのむ。

 

創作者への、最大級の。


「富があれば楽になる。でも、大きくなりすぎると細部が見えなくなるのです」


女性が、手の中のナッくんを撫でながら、しっかりと答える。


その声は、空腹に倒れていた者とは思えないほど。


元子は、女性を驚きの表情で見つめる。


「──ならば、私も創作で問いましょう。」


大きく揺れた金糸から、眩い光が周囲を照らす。


※「かの金糸の魔女が膝をつくのです。どうか、御手を触れて下さいませ。」※


挿絵(By みてみん)


『硬貨の雨音』


>さあ 目を閉じて

聞こえるでしょう 硬貨の雨音あめおと

あなたの夢は 値札を待っている

足りない夜に


私は光を落とすだけ

小さな願いを 王冠に変えるの

これは罪じゃない


望みを照らす灯火

選ばれたいと願うなら

その手を差し出して


増えて 増えて

あなたの名を飾る数字


もっと もっと

世界がひざまずくまで


飢えたままじゃ 美しくないわ

満たしてあげる

きらめく楽園で


さあ契約は要らない

ただ望めばいい


あなたの“もっと”を 私に預けて  <


(金糸の魔女は静かに微笑む。)


──アウレリアの言葉は正しい。


「富があると、創作は楽になると思いますか?」

 

──アウレリアの歌は、きらびやかで、甘い。


「少なくとも、空腹ではなくなります」

  

努力よりも早く届く成功。


空腹よりも先に満たされる賞賛。


女性の足が、アウレリアの方に進む。


元子の胸が、わずかに痛む。


「……勝てないかも」


《動揺検知》


「だって、あれは強いよ」


金は即効性。


幸福は遅効性。


勝負にならない。


創作(テーマ・内容)としての土台が違う。


しかし。


「──常盤(ときわ)さん、これを」


――エプロンをした男が、そこに立っていた。


「え? 先輩?……あ、今、思い出した……」


それは、あの、橋から落ちかけた男。


ずぶ濡れの夜を越えた男。


元子は瞬きをする。


「……あれ?」


挿絵(By みてみん)


いつの間にか、元子の両手にはひと舟の、”たこやき”、が乗っていた。


「……増やすより、回す方が性に合ってるみたいです」


それ以上、男は何も言わない。


ただ、くるり、と踵を返す。


元子は、自らの手を見る。


焼き上がったばかりの、たこやき。

ソースは控えめ。

マヨネーズは、ない。

青のりが、ふわりと舞う。


丸い。

あたたかい。

すぐ食べないと冷める。


「……発想、変える」


《方向転換確認》


「増やすんじゃなくて、思い出す」


その声は、もう震えていない。


ヒビキを手に。


そして、書き始める。


※「これは私の幼い頃の記憶。どうか、触れてみて下さい。たこやきのことを思い出して」※


挿絵(By みてみん)


『お祭りのたこやき』 


>りんご飴の灯り

金魚すくいの影

小さな財布を握りしめ

胸がどきどきしてた


ずっと夢だった

ひとりじめのたこやき

全部食べるんだって

何度も数えてた


だけど

ひとりで食べたら

なぜか味がしなかった


父にひとつ

母にひとつ


(繰り返し)

兄にひとつ

残ったのは 半分こ

笑い声が

夜空に弾けた


そのとき初めて

あつあつになった


たこやきは

丸いままじゃない


分けたとき

ほんとうの味になる


お祭りの夜

提灯の下で

夢はね

みんなで食べるものだった <


元子は、想った。


最初に作る手は、ぎこちなかった。


たこやきは。

丸く、丸く。

焦がさないように。


「貴女も、焼けますよね? たこやき」


たこやきは。

丸いけれど。丸いけれど。

転がり落ちないように。


「創作は、空腹でも満腹でもできます」


そう言って、女性を見る。


「心さえあれば」


女性は、たこやきを見つめる。

 

「これは、いくらですか?」

 

「ひと舟で百円です・・・マヨネーズは別売りです」


元子が答える。

 

「百円は驚きの安さ…でも、マヨネーズは別売りとは…」

 

女性は頷く。

 

「……こっそり、マヨネーズはサービスでお付けします」


元子が偶然にも、エプロンに入っていたマヨネーズを渡す。


女性は満足の笑みを浮かべる。


「このくらいが、ちょうどいいのですね」


挿絵(By みてみん) 


跪いていた姿勢をやめた、アウレリアの瞳が、わずかに揺れる。

 

「そんな貧乏なモノで満足されるのですか……あなたは、もっと大きな存在でしょう」

 

「ええ」

 

女性は否定はせず、笑う。

 

「ですが、出来立ての”たこやき”には勝てません」

 

フェレットが、アウレリアをじっと見る。

 

金と、創作。

 

増幅と、瞬発。

 

元子は、黙って立っている。

 

アウレリアはゆっくり立ち上がる。

 

「……あなたは、飢えていた方が美しい」

 

それは本音だった。

 

女性は首を振る。

 

「そうかもしれませんが、私は、食べても書きます」


「……硬貨の雨音あめおとが、聞こえなくなっても、後悔なさらないで下さいね」


アルレリアの艶やかに伸びる母音。


甘く絡む子音。


その完璧な旋律の中で。


――ぴく。


元子の眉が、わずかに動いた。


「……今、なんて?」


アウレリアは微笑む。


「“あめおと”。美しいでしょう?」


元子は腕を組む。


静かながら、逃がさない目をしている。


「惜しい」


空気が変わる。


「それ、普通は“あまおと”って読むの」


アウレリアが、ほんのわずかに目を細める。


「…どうして“あめ”が“あま”になるの?」


元子は一歩近づく。


レッドカーペットの上、履き古しのスニーカーの音が小さく響く。


「言葉はね、隣り合うと変わるの」


彼女は、指先でヒビキの画面に言葉を描く。


「“あめ”と“おと”。

 単体なら、あめ。おと。」


指と指が、すっと寄り添う。


「でも、日本語は優しいから、ぶつからないように形を変えるの」


“め”の音が、すっとほどけるように柔らぐ。


「複合語になると、“あめ”は語幹の“あま”に戻ることが多いの。そこに“おと”が続く。」


静かに、言葉が繋がる。


「あま・おと」


雨音。


「これ、連濁っていう現象の仲間。山川が“やまかわ”じゃなくて“やまがわ”になるのと同じ。」


アウレリアは黙って聞いている。


その表情は読めない。


元子は続ける。


「“あめおと”でも意味は通じる。

 でも、それだと少し硬い。

 辞書に載っている一般的な読みは“あまおと”。」


風が二人の間を抜ける。


「雨は、歌うときほど繊細なの」


元子は最後にそう言った。


沈黙。


そして、アウレリアは目を閉じる。


もう一度、歌い出す。


「……聞こえるでしょう 硬貨の雨音あまおと……」


今度は、言葉が溶けるように自然だった。


元子は小さく息を吐く。


「うん。今のは、綺麗」


アウレリアは、ほんのわずかに笑う。


「言葉も、支配できると思っていたけれど」


金色の瞳が細くなる。


「……日本語は、なかなか手強いわね」


雨が、正しい名前で、静かに響いた。


その言葉に、空気が決まる。

 

アウレリアは微笑み、車へ戻る。


「常磐元子」

 

去り際に、彼女は言う。

 

「あなたの存在は、邪魔ね」

 

「営業妨害?」

 

金の瞳が細くなる。


「増えない幸福は、本当に扱いづらいの」

 

車は静かに去る。

 

駐車場に春の風だけが残る。

 

「ごちそうさまでした」


いつの間にか、女性は最後の一個を食べ終える。

  

「あ、あの……創作って…どんなことを…」


気になっていたことを元子が尋ねる。


「創作…ねぇ…じゃあ、私も作ってみようかな?」


女性が、何か考えるかのように首を傾ける。


ナッくんが元子を見上げる。


きゅ。


その鳴き声は、どこか満足げだった。


元子がもう一度尋ねようとする。

 

だが。

 

次の瞬間。


※「さあ!たこやき、と言えば……これでしょ!」※


挿絵(By みてみん)


『たこやき音頭(縦読み「た・こ・や・き」)』


>『た』のしくころころ まあるく焼けた

 『こ』ぼれる笑顔と ソースのかおり

 『や』ぐらの灯りに はずむ手拍子

 『き』らめく夜空へ あつあつひとくち


(さあ、みんな唄おう!)

 たこやき!たこやき!

 たこやきサンバ!


 たこやき!たこやき!

 たこやきサンバぁぁーー!! <


──その年の春は、どこかおかしかった。


まだ三月だというのに、風はぬるく、冬の名残を忘れたようにやわらかい。


公園の桜は、戸惑うこともなく、いっせいに咲いていた。


まるで誰かが、世界の温度を少しだけ上げたかのように。


ベンチに並ぶ三人。


アウレリアは、いつもの余裕を浮かべながら、紙舟を竹串でつつく。


その隣で、王の影を思わせる女性は、何も言わず、ただ湯気を見つめている。


そして常磐元子は、丸いたこやきを両手で包むように持ち、そっと息を吹きかけた。


「あついね」


その言葉に、桜が一枚、ひらりと落ちる。


ころん、と舟の中で転がるたこやき。


三人の竹串が、同時にそれを押さえる。


丸い。


ちゃんと、丸い。


けれどこの瞬間だけは、


世界はちょうどいい温度だった。


◇◇◇


気づけば、女性の姿は、ふわりと元子の前から消えていた。


「うはっ!? 今までのシリアスはどこに!?…あ!?、あの人もいない……」


《記録:瞬発力、加速中》


ぐぅー。


「……創作って、やっぱり、お腹すくよね」


《同意》


「……創作って、やっぱり、お金がいるよね」


《同意》


──元子は鉄板の前に戻る。

 

じゅわあああ。

 

また、生地が膨らむ。

 

春の陽気の下。

 

神も、魔女も、庶民も。

 

みんな、たこやきを食べる世界──になるかも知れない。


挿絵(By みてみん)


 (了?)

6,841文字!ฅ(º ロ º ฅ)


ありがとうございます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ

ナッくんがたこやき食べてる!Σ(゜Д゜)

かわいい……(*´艸`*)


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― 新着の感想 ―
しいなここみ、行き倒れ!? ヒドい! が、有り得そうでコワイな!? ああ、彼女にお腹いっぱいなたこやきを! イラストや曲が多い! が、今は出先だ。聴けん! 帰ってから聴こうっと。
>クレイジーエンジニア様へ 主催者様&フェレットちゃんがリアリティのありそうな感じで登場です!(笑)(*´艸`*)<あのエッセイのおかげでネタには困りません!←ひどい 曲は例のヤツですね!ちょっと…
>シロクマシロウ子様へ まさかの1話に三曲載せという暴挙に出ています!これまでに5曲、お題は@4つですから(都合が悪くなければ)、9曲ぐらいになるのでは!?(笑)(*´艸`*)<楽しんでいただけると…
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