秋桜星華さまのたこやき
たいとる( ´ ▽ ` )ノ
『魔王様は汚部屋住人』
禍々しい空気の漂う魔王城で、二人の男が対峙していた。
「ふははは、よく来たなぁ! 魔王城のトップフロア、ワシの部屋まで来たのは貴様が二人目だ!
ちなみに一人目は来た瞬間ワシの邪気に当てられて気絶したが、貴様はよく立っていられるなぁ!」
一人は魔王。頭から生えたピンク色の角がチャーミングである。
体中からパステルパープルの邪気を放っているのが特徴だ。
「いやぁ……たぶん邪気じゃないと思うけど」
マスクをくいっと上げながら呟いたのは、腰に剣を差した男。人間界で勇者と称えられ、魔王城に送り込まれたハズレくじの持ち主である。
「なぬっ、それならなぜだっ!?」
食い気味で勇者に聞く魔王。それに勇者は気だるげに、鼻を押さえながら答えた。
「めっちゃ臭いからだよ、ここ。風呂入ってんの?」
勇者の言葉にショックを受けた顔で、魔王がよろめく。顔色が赤から青へと綺麗に変化した。
(リトマス紙かよ)
勇者は心のなかでツッコみ、更に追い打ちをかけた。
「あー、本当にマスクつけてきてよかった。魔王城自体が結構臭ってたからヤバいかなと思ったんだよね」
「ま……魔王城が汚い、だと……」
静かに追撃をモロにうけ、魔王は沈黙した。掃除をした記憶は、一度もない。床なんてものは存在しない、立派な汚部屋の住人である。同居人は、一匹見つけると三十匹いるらしいあいつだ。
「ま、倒させてもらうよ。めんどくさいし」
そう言って剣を構える勇者。
「ま……待ってくれ。ワシは今、傷心でっ……なにっ!?」
魔王が話し終わる前に、剣を一振りする勇者。すると、剣の刃からなにかが飛び出した。
「タコヤキだ」
「待て」
放物線を描いて魔王に直撃した物体の正体を淡々と告げる勇者。そこに待ったをかけたのは、ショックから瞬時に立ち直った魔王である。
「たこやきはたこやきだ。ワシはひらがな表記しか許さんッッッ!」
きりっとした顔で、宣言する魔王。
「あーあーあー、めんどくさいやつだ」
「なにかいったか?」
「なにも」
小さく悪態をついた勇者を、魔王がギロリと睨んだ。
「てかなんでタコヤキがカタカナだってわかるんだよ。字幕でもついてんのかよ」
勇者がまともなツッコミをする。その言葉に、魔王は不思議そうな顔をした。
「ふははは、そんなこと、読めばわかるだろう。作者がツッコミのミを、名詞のときと動詞のときで使い分けているのと同じことじゃないか」
「やめろよメタいことは」
「ごほんっ……気を取り直して……
ふははは、よく来たなぁ!」
「そこからやり直すの!?」
勇者はツッコみながら、剣を振るう。剣から一気にたこやきがこぼれ出た。
「……っつ」
魔王は歯を食いしばり、できたて(でてきたて?)のアツアツたこやきの攻撃に耐える。
ポトリと床に落ちたたこやきを指さして、魔王が大声で言った。
「ふははは、いーけないんだ、いけないんだぁ〜! 食品ロスで炎上するぞ!」
「そんな現実的なこと言うなよ」
嫌そうな顔で勇者が言う。実は少し気にしていたのだ。
「いいだろう、ワシが食べてやる」
魔王は床に這いつくばって落ちたたこやきを食べ始めた。ちなみに前述の通り、床は結構汚い。
その後も魔王は何度か顔にたこやきを受け、そのたびに食べ尽くした。
「くっ……ここまでか……」
勇者は膝をつき、剣を鞘へと収めた。そして、魔王に向けて捨て台詞を吐く。
「風呂だけは入れよ!」
その言葉に魔王は大きく頷いた。
「ふははは、ワシ、魔王やめて風呂キャン系動画配信者になるわ」
「おい、それだけはやめとけ。炎上するぞ」
勇者の忠告に、魔王はにやりとした。
「安心しろ、この作品は1500字のショートショート。火が燃え広がる前に終わるぞ」
うわー!!!




