コロンさまのたこやき
★椎名琴美ストーリーではありません★
「よし!次のたこやき器はおめぇ、やってみろ!」
「!!!はいっ!ありがとうございます!!!」
親方にそう声をかけられて、俺は喜びに震えた。
やっと…やっと俺も…たこやき器をやらせてもらえる。
俺はこの喜びをすぐに妻へ知らせた。
「俺の夢がかなったよ!」
妻は「!!…うん…うん…良かった…おめでとう……おめでとう…お祝いしなきゃね…」と、涙声で言ってくれた。
妻の声を聞いて、さっきまで我慢していた気持ちが溢れだし俺も泣いた。
代々たこやき器職人の俺の家。
俺は跡取りとして、幼い頃からたこやき器職人になる日を夢みてきた。
だが、俺が高校生になった春、無理が祟ったのか親父は倒れ、そのまま帰らぬ人となった。
最後に親父と交わした約束。
「俺は絶対にたこやき器職人になる!」
それを叶える為に今まで必死にやってきた。
「これで親父や爺ちゃんに…顔負けできる…やっと、親父や爺ちゃんと同じたこやき器職人の第一歩を…。こんな俺を今まで支えてくれてありがとう…」
「うん…うん…お義父さんやお義祖父さんに負けないように頑張らないとね…」
。。。
その日から今まで以上にトレーニングに勤しんだ。
腕立て200回
腹筋500回
逆立ち歩きは1000歩…
。。。
その日の朝。
気合いを込めてシャワーを浴びる。
断髪式を終えた頭にキリッと手拭いを巻いた。
「行ってくるよ」
「しっかりね!」
胸の前で小さくガッツポーズをする妻を抱きしめた。
「ありがとう!頑張ってくる!」
。。。
専用の服に着替え、クリーンルームの中のたこやき器工房に入る。
念入りにボディーチェックをされ、問題ないとなった俺は、逆さまに吊られた。
そして頭に油を塗られ、粘土に頭を押し付けられた。
むぎゅ。
すぽ。
俺の頭と同じ形に、まあるく粘土が凹む。
むぎゅ。
すぽ。
繰り返し俺の頭と同じ穴を粘土につけていく。
業務用たこやき器で56穴。
見事に並んだ丸い穴を、親方がチェックする。
皆固唾を飲んで親方を見守っていた。
親父が腕を組み、しばしの間沈黙した。
そして大きく息を吸い…
「合格だ!金型取るのに初めてで業務用の56穴をこなしたのはお前が初めてだ!良く頑張ったな…親父さんも喜んでるだろう!」
と言った。
湧き上がる歓声。
「やったな!」
「よく頑張った!!」
逆さ吊りされた俺を皆んなが囲む。
皆んなの笑顔を見ながら…俺はブラックアウトした。
。。。
「ママー!たこやき食べたい!」
「新しく出来たたこやき屋寄って行かない?」
新しく出来たたこやき屋に並ぶ人々。
…その金型、俺の頭が並んでいるんだぞ…
はふはふとたこやきを頬張る人々を、おれは誇らしい気持ちで眺めている。
《おわり》
あれは頭で型をとっていたのですね……。




