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無謀! 瞬発力企画2 会場  作者: しいな ここみ
第二回目 『お金』
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秋桜星華さまのお金

たいとる未定です。


まえがき


※ちょっと残酷かも※

誰も救われない物語です。

あと、結構長いです。

それではどうぞ。





 彼と私はお金で結ばれた関係だった。婚約者ではあれど、そこに愛や情はなかった。

 政略の中でも金銭を第一に考えられた契約だったのだ。


「君を愛することはない」


 物語の中では溺愛のフラグとして語られるこの台詞も、ただの彼の本心でしかなかった。



 私が生まれた家は、国の中でも有数のお金持ちだった。そこそこの地位もあったが、抜きん出ていたのは、やはりお金だった。


 昔父が、顧客に小国の国家予算くらいのお金を気軽に渡しているのを見たことがある。


「どうぞご贔屓に」


 父が言ったその言葉に、私は耳を疑った。贔屓にしてもらうために、多額のお金を渡す。それはほんとうに意味があるのだろうか。

 私は、贔屓にそれだけの価値があるとは思えなかった。


 金稼ぎの才能はあったが、人柄は伴わなかった。それが周りからの父への評価だろう。



『金を使うのは世界のため』


 父が常日頃から言っていた言葉だ。その類稀(たぐいまれ)なる儲けへの才能をいかし続けた父は、有り余るお金を使うことに日々尽力していた。


 日中は働かず、さまざまな手数料で日々豪遊するお金を稼ぐ。そして、週末になると愛人の家に出向き、新築の豪邸で一日を過ごしていた。


 一度だけ、その豪邸に連れて行ってもらったことがある。私が父にとって何か嬉しいことを口にしたようで、なんだか鼻歌でも歌いそうな雰囲気の父に招いてもらったのだ。


 そこで目にしたのは、ただ幸福という名の堕落に沈む父の姿だった。


 真っ昼間から甘い言葉を(ささや)き、愛人がそれに応える。二人だけの甘美なひとときに、私は場違い感をひしひしと感じていた。


 しばらくして、父がネックレスの入った箱を差し出した。私が来る日だから何かパフォーマンス的に用意したのかと思ったのだが、どうやら毎日のようになにかしらのアクセサリーを贈っているらしい。


 父のたるんだ指先が、愛人の細い首にネックレスをかけた。首元でアイスブルーのダイヤモンドがその存在を主張するようにきらりと光った。


 私は冷たい目でそれを見ていた。一体何人の孤児が、そのネックレスで救えるだろうか。いつになく現実的なことに思考が引っ張られた。



 世界のため。その言葉は、働かず遊び呆ける自分に対して言い訳をしているようにしか見えなかった。



 一方母は母だった。毎日のようにブランド品を買い漁り、社交界に意気揚々と出かけていく。()()父の妻ということで、冷たい目で見られることが多かったようだが、母は気にしなかった。気づきもしなかったのだろう。




 そんな家に生まれた私は、当たり前に避けられてきた。


 並々ならぬ金持ちへの畏怖の視線。

 悪評の多い両親をもつ娘への疑いの視線。



 ──たくさんの人の目に晒され生きてきた私にとって、家にあるお金というのは苦痛の根源でしかなかった。


 貧乏でも、親からの愛を存分に受け取れる生活。それを何度夢見たことか。



 ***



 勿論想いを寄せることもなく、寄せられることもなく終わった青春。白紙のまま終わるはずだった私の恋愛関係に、かすかな影が落とされた。


「シュタール家のカールとの婚姻を命ずる」


 父からのその宣言に、私が抵抗するすべはなかった。



 かといって、悪い話ではない。シュタール家は最近名が売れ始めた見込みのある家で、さまざまな派閥から注目されている。

 シュタール家のカールといえば、有望な若手として評判だ。


『シュタール家が新しい事業を始めるための資金を、全てギトー家が出す。その代わり、カールがギトー家に婿入りする』


 ギトー家とは、私の生まれ育った家である。


 簡単に言うと、このような内容の取引が両家の間でなされたらしかった。




 私は、これまでの人生で自らに価値があると思ったことは一瞬たりともない。だから、資金と引き換えに私との婚姻をさせられたカールに、少しの同情を感じていた。



 婚約式は恙無(つつがな)く終わり、それからカールと私との凪いだ関係が始まった。


「君を愛することはない」


 雇われたメイドに連れられ、僅かな緊張とともに向かった集合場所。そこで言われたのが、この常套句だ。


 一切胸は踊らず、かといって失望もしない。そこにあったのは、淡々とした納得だった。


 ──そりゃそうだろう。金で結ばれた関係の相手に、愛を捧げる必要性はどこにもない。


 婚約者である義務を果たすため、何度か共に外出したが、なにも思わなかった。なにかを思う必要もなかった。




 そういえば一度、私の家で行われた悪事が暴かれそうになったことがある。


 二人の敏腕刑事がアポ無しで応接間へやってきて、父を問い詰めだした。私は応接間で礼儀作法の講義をしていたところだったので、そのまま壁際に寄って、テーブルでの話を聞いていた。


「貴方には賄賂を贈った疑いが持たれています。心当たりはありますか? 」


 そのとき、私は初めて父のあの行為が『贈賄罪』という犯罪で、いけないことだと知った。

 鋭い目つきで自分を見据える刑事二人に、父は明るく言った。


「それは心外ですね。ただ、私は感謝を伝えていただけなのです。あなたがたにも、日頃の感謝を込めてこちらに用意してありますよ」


 父は懐に手を入れ、二つの分厚い封筒を取り出した。そして、二人の目の前で札を数えてみせた。その様子を、刑事は固唾を呑んで凝視していた。


 やがて数え終わると、父は一つずつ封筒を手渡した。おそらく、彼らの一年間に稼ぐお金よりも大きな金額だったのだろう。彼らは驚いたような、喜ぶような、そんな純粋な言葉では表現できないような真っ黒い表情だった。


 彼らは自分でも枚数を数えて、特大の臨時収入を噛み締めた。


 ひとしきり堪能して満足すると、一人は下卑た醜い笑顔を浮かべて、もう一人は冷静な表情で口角を歪に上げながら帰っていった。


 幼心に思ったのだ。


 お金は全てを解決するのだと。


 そして、人間の誠実さとはそんなものなのか、と。


 思えばこのとき、私は最初で最後の『失望』をしたのかもしれない。その対象は、人間、いやこの世界の全てだった。



 ***



 今日も私は無心だ。いっそのこと気楽である。


 この世の全てがお金なのなら、私には価値がない。父にも価値がない。価値があるのは、父の持つ莫大なお金だけだ。



 ***



 その日は、朝からおかしかった。家の周りにはやけに人が多い。彼らはいつもよりよそよそしく、どこか好奇心を滲ませた視線を向けてくる。


 疑問に思いながらも、そんな日もあるかと外出する。まぁどうでもいいことだ。



「逃げろっ! 王命監察官だ!」


 帰宅し、家に入ろうとしたそのとき。家の中から雇いの使用人が大声で飛び出してきた。


 さまざまな罪を摘発する王命監察官。それが、とうとううちにもやってきたらしい。どこか他人事のような感覚で、その報せを聞いた。


 逃げなければ、と思ったときには遅かった。家の周りにはたくさんの野次馬が集まり、外にはでられまい。朝からそわそわしていたのはこのせいか、と納得する。おそらく知らなかったのは私達だけなのだ。


 野次馬から一人が歩み出てくる。王命監察官の制服を着た男性だ。彼が顔を上げたとき、私達は息を呑んだ。そのとき、悟った。──嵌められたのだと。


「カール……」


 カールは私の方を一瞥すると、野次馬を通り越して群衆と化した人々に向かって呼びかけた。


「このギトー家は、国を売った!」


 それから語られたのは、私の知らない父の計画だった。賄賂で成り上がった父は、さらなるお金持ちを目指していたそうだ。そのために、隣国と手を取り、この国を転覆させようとしていたらしい。


 彼は最初から知っていたのだろう。そして、私との婚約を盾にして我が家を探った。


 国家転覆は重罪だ。それはもう────家ごと燃やしていいくらいに。


「ひっ!?」


 庭のあちこちに火の柱が立った。どうやら、私達を逃さずここで仕留める方向のようだ。


 すぐに家へ燃え移り、崩れ落ちる。炎の向こう側に父の姿が見えた。そこは、父がこれまで稼いできたお金を入れている金庫だった。


「金だけは……金だけは持ち出せ! 燃やすな! もえるなあああぁぁっ!」


 ()()()()()()使うお金。そう言っていた父は今、汚くお金に固執している。


 本当に世界のためなのなら、どれだけ愛国心が強かったのだろうか。


 その瞬間、家を支えていた柱が大きく崩れ落ちた。瓦礫が舞い、前が見えなくなる。


 小さな瓦礫に紛れて、光るものがある。いつぞやのネックレスだ。父が愛人に贈ったたくさんのアクセサリーの中の一つ。


 私の足元に落ちた、その歪な愛の形。それを、私は────


「こんなっ!」


 大きく蹴飛ばした。



 しばらく冷めた目で我が家を見ていたカールだったが、いよいよ家が全壊したのを見ると、私に目を向けた。


 そして、カールは堂々と宣言した。


「俺はずっと、お前のことが嫌いだった。醜い稼ぎ方をする親を見ながら、それを止めようともしない。金があればなんでもいいと思っている」


 脳裏に、くっきりと二人分の影が映った。


『ふはははは、稼げ稼げ稼げ! そして世界のために使うのだ!』


 品のない大声を上げ、札束をばら撒く父の姿。つじつまの合わない言動を繰り返しながら笑っていた。

 そして、何も言わず散らばったお札を拾い上げる私の姿。父に口を挟めず、粛々と従うだけの私。


 確かに、私は父を止めなかった。


「挙げ句の果てに、国を売ろうとするとは……。俺には理解できない了見なんだろうね」


 私は燃え盛る炎に囲まれ、皮肉げに口元を歪めた。


 そう、そうだ。そのとおりだ。なんとでも言え。


 どうせ私は、両親にも恵まれず、性根から腐りきった売国奴。愛さず愛されず誰にも不憫に思われることもなく、悪人として名を残すのだ。



 ──なんという皮肉だろうか。


 お金で結ばれた関係に愛は生まれず、憎しみだけが伴うのは──



 炎の中で、蹴飛ばしたアイスブルーが鈍く光っていた。






あとがき


設定ふわふわ&ぼろぼろでゴメンナサイ。1日でこれはつかれました。寝ます。

3,997文字Σ(º ロ º๑)


わかるー……。親が何をしてるかなんてわからずにポカーンと口を開けてるだけのアホの子お嬢様だったんだよね? わかるー……。私もそうだから!٩( 'ω' )و


お疲れ様でした(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ


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― 新着の感想 ―
はて? お金持ちの館を何故燃やしちゃうの? 紙幣は燃えるし、火に巻かれてダメになっちゃう高価なモノも多いだろう。 全部押収しようよ( ̄∇ ̄) カールくん、後でめちゃくちゃ怒られそう(-ω-;) 「燃や…
う〜〜ん。 まあ、処刑されずに生きてるんなら、主人公はどうにかなるんじゃないですか。 いちばんマトモな感覚持ってるようですし。。。
親の所業を内部告発するのも実際問題難しいから、娘さんにとってはひどい話? いっそ開き直ったら活路開けるかも? どないせいちゅんじゃーとか。 続きはあるのだろうか。
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