歌池 聡さまのお金
【創作落語(小噺)】 お金の貯め方
えー、昔っから『金は天下の回り物』なんてことを言いますが、せっかく回ってきたお金があっという間に駆け抜けてっちゃうような困った人も多いわけでして──。
「おお、熊さん、来たね。まあ、こっちへお上がり」
「へえ、ご隠居さん。ええと、あっしに話っていうのは──?」
「いやね、お前さんのおかみさんからちょっと相談を受けたものでな。
何でもお前さん、相も変わらず飲み歩いてばかりで、ちっとも銭が残らないそうじゃないか」
「あ、いやその、へへへ。男には付き合いってものがあるんですよ。
それに、『宵越しの銭は持たない』ってのが江戸っ子気質ってやつでして」
「そうは言うけどね、もし坊やに何かあったら医者にも見せなきゃならないし、そのうち手習いもさせてやらなきゃならない。何かと銭は入り用だ。
おかみさんが不安に思うのもわかってやらなきゃいけないよ」
「(熊さん、考え込む仕草)うーん、そう言われても、ですねぇ。あっしゃあ昔っからこんな風でして、金の貯め方なんてとんとわからねぇんですよ。
ご隠居さん、お金ってなぁどうやって貯めればいいんです?」
「そうだねぇ──。
熊さん、お前さん、一日に一文くらいなら辛抱して節約できるかい?」
「それくらいなら、まあ」
「それを毎日続けるんだ。一日に一文づつ甕にでも貯めていけば、そのうちまとまった額になるってものだ」
ご隠居さんがそう教えても、熊さん、まだ首をひねってます。
「ん? 何かまだわからないことでもあるのかい?」
「いえね、ご隠居さん。それってずいぶんみみっちくねぇですか?
そういう『地道にコツコツと』ってぇのが苦手だから、こういう性格なんでして。
もっとこう──『濡れ手で粟』みたいにがばっと大金が貯まるような方法ってのはねぇもんですか?」
何だかずいぶん虫のいいことを言ってますが。
ご隠居さん、困ってしまって頭をひねりますが、ふとあることを思いつきました。
「なら、熊さん、こういうのはどうだい。
最初は一文、次は二文、その次は四文という風に、貯める額を倍々に増やしていくんだ。
やがては八文、十六文、三十二文、六十四文、百二十八文と、どんどん金が増えていくぞ?」
「おおっ、そりゃいいですね!」
「だがな、無理は禁物だ。最初の一日は一文だが、次は二日で二文、四日で四文と、節約する日も倍々にしていくんだ。これなら無理なく出来ると思わないかね?」
「さすがはご隠居さんだ! よーし、さっそくやってみまさぁ!」
「ちゃんとできるね? 約束だよ?」
「あたぼうでさぁ! これでおいらも、いずれは大金持ちだ!」
そう言うと熊さん、お礼を言うのもそこそこに、だっと御隠居さんのところを飛び出していってしまいました。
えー、賢明な皆様にはおわかりのことと存じますが。
貯めるお金を倍々にするとはいっても、貯めるための日数も倍々にしていくってことは、けっきょく一日に一文ずつ貯めるってことと何ら変わりはないわけなんですな。
さあて、間抜けな熊さんは、いつこのカラクリに気づくことやら。
二日目は二文、50日後には一日に50文を貯金するんだって読み違えて『無理やん』って思ってました(*´ω`*)
ちなみに私、毎月二千円貯金を始めたところだったんですが、車の車検ですべてなくなりました٩( 'ω' )و




